BCP構築と策定サイクル~復旧手順書等の作成とテスト訓練の実施

2017年06月22日

 

世界的なテロ多発や政情不安から、再びBCPに注目が集まっています。
BCPは、会社を守り、従業員を守る重要なものであり、その意味でBCPの策定は、企業の社会的責務であるとも言えます。
今回は、BCPの手順書作成とテスト訓練の実施にフォーカスして、BCP構築の基礎について解説します。

 


BCPの策定サイクル

BCPとは、Business Continuity Planの略称であり、一般に「事業継続計画」と呼ばれるものです。BCPは下記のサイクルに従い策定します。
①非常時体制の構築
有事の際に自発的に動ける基準が必要になります。これが基本方針です。
基本方針の下、速やかに対策本部が立ち上がるように予め非常時の体制を決めておきます。
そのためには、予め被害を想定し、安否確認等が速やかに対応できるように仕組みを定めておきます。
②重要業務の選定
BCPが発動されて暫定対応になると、まずは重要業務を復旧させることが大命題になります。発動されて速やかに重要業務を復旧させるためにも、重要業務を予め定めておく必要があります。
重要業務は、様々な影響度等を踏まえて、ビジネスへのインパクト分析により決定します。
③手順書の作成
復旧の手順書を作成しておきます。
初動対応手順書や暫定対応手順書といった個別マニュアルを作成し、緊急連絡先や重要取引先、被害状況一覧といったチェックリストを予め用意しておきます。
④テスト訓練の実施
最後にBCPが有効に機能するかどうかテストしておく必要があります。
テスト計画を策定して、実際にテストを実行し、そこで出た気付き事項や不明点等を取り纏め、課題を洗い出します。

 

BCPの策定3

 

手順書の作成~BCP手順書とツール類

ここでいう手順書とは、事業を復旧・継続させるための行動マニュアルになります。
有事が発生し、BCPが発令されると
①初動対応、②暫定対応、③本格復旧
の順で対応していくことになります。
このため、発災後の初動対応と暫定対応の手順等を文書化しておく必要があります。
①初動対応手順書の作成
災害が発生した後、直ちに行われるのが「初動対応」です。
人命保護を最大の目的に、発災後数時間から数日間の対応の手順を明文化します。
具体的には、震災直後の従業員の行動、安否確認、2次災害の防止、被害状況の確認、BCP体制への移行等について手順を記載し、「初動対応手順書」としてまとめておきます。
②暫定対応手順書の作成
有事が発生した後、目標レベルまで業務を回復させることが「暫定対応」です。
BCP策定サイクルでは、予め重要業務を選定しておきます。
予め選定したおいた重要業務に対して、必要な経営リソース(人、設備、IT等)を洗い出し、経営リソースが不足する可能性に備えて代替手段を決定します。
代替手段による重要業務継続の手順等を記載しておくのが、「暫定対応手順書」になります。
③下位文書の作成(各種ツール類の作成)
非常時に人命救助や事業継続を効率的に進めるため、初動対応手順書及び暫定復旧手順書の下位文書(ツール類)を作成しておくことがあります。
”下位文書”の例としては、「緊急連絡リスト」、「重要取引先リスト」、「被害状況チェックリスト」等があります。

 

BCPの策定4

 

テスト訓練の実施~BCPの有効性検証

BCP策定サイクルの最後は、BCPの有効性を検証するという作業になります。
せっかく非常時の体制や重要業務を選定し、行動手順書を作成しても、有事の際に機能しなければ大問題です。また不備や欠陥があっても意味がありません。BCPに従って行動すれば、必ず人命が保護され、必ず事業が復旧・継続できるレベルの精度の高いものでなければ、BCPとは呼べません。
この意味でも、BCPは一度作って終わりではなく、何度も見直しをしなくてはならないことが理解できるかと思います。
BCPの有効性を検証することが、テスト訓練の目的です。策定したBCPの実効性をテストすることにより、課題を洗い出し改善します。
テスト訓練は、PDCAサイクルに従い実施するのが一般的です。
①テスト計画策定(Plan)
テストの目的、ゴール、対象者、手法を検討し、テスト計画書に取り纏めます。
例えば、大地震が発生した場合に備え、社員の行動計画をテストします。
②テスト実施(Do)
テスト計画書に基づき、テストを行います。気付き事項や不明点を記録しておきます。
例えば、実際にBCPで指定している避難場所まで避難してみます。
③課題洗い出し(Check)
テスト実施時の気付き事項や不明点等を取り纏め、課題を洗い出します。
例えば、避難訓練から、避難経路に問題が無かったかどうかを検証します。
④対策の検討、実施(Action)
課題に対する対策を検討し、期限を設けて実行します。同時にBCPも更新します。
例えば、新たな避難経路を設けて周知する等の対策を行います。

 

テスト訓練で非常に重要なことは、必ずBCPを更新することです。
繰り返しになりますが、BCPの有効性を検証するのがテスト訓練のゴールであり、テスト訓練まで行うことでBCPが完成します。BCPは、平時に何度でもテストを繰り返し、最新かつ有効な状態に維持しておかなければなりません。
一度作成して満足している企業を見かけることがありますが、常に最新にしておく努力が必要です。

 

BCPの策定5

 

BCPのメリット

最後に、改めてBCPのメリットをお話します。BCPには、主に3つのメリットがあります。
①事業継続
BCPは有事の際の行動計画や体制を予め決めておくものです。
例えば、大震災が起きた場合でも、速やかに事業を復旧・継続させられるものがBCPです。
②従業員満足度
震災等が発生した場合でも、社員は自発的に行動することができます。
BCPに従い行動することで社員の安全を守り、BCPの存在が社員の満足度を向上させます。
③対外アピール
BCPを策定することは、自社の商品やサービスの安定供給を宣言することにもなります。
有事の際でも、BCPに従って行動することで、関係先に迷惑を掛けるリスクを減らします。

 

 

最近では、会社が上場する際に、BCPの存在がチェックされることも多いようです。上場会社には、社会への大きな影響力があり、社会的な責任があるからです。
BCPは、上場会社はもちろん、社会的な責任を果たす必要のある会社や団体であれば、必ず作成しておくべきものです。
近時の災害や政情不安を踏まえ、BCPを作成あるいはテスト訓練を行って、BCPが有効に機能するかどうかを検証してみては如何でしょうか?

 

 

まとめ

BCPの策定サイクル
 ①組織体制の構築…被災シナリオ検討、本部組織構築、基本方針策定
 ②重要業務の選定…業務の棚卸、ビジネスインパクト分析、重要業務の決定
 ③手順書の作成…復旧手順書作成、各チェックリスト作成、個別マニュアル作成
 ④テスト訓練の実施…テスト計画策定、テスト実施、対策の検討と実施
手順書の作成~BCP手順書とツール類
 ①初動対応手順書の作成…発災後数時間から数日間の対応の手順を明文化しておく
 ②暫定対応手順書の作成…経営リソースが不足する可能性に備えて代替手段を決定
 ③下位文書の作成…「緊急連絡リスト」「重要取引先リスト」「被害状況チェックリスト」等
 ★発災後の初動対応と暫定対応の手順と手順書運用時のツール類を文書化する!
テスト訓練の実施~BCPの有効性検証
 ①テスト計画策定(Plan)…テストの目的・ゴール・対象者・手法等の策定
 ②テスト実施(Do)…テストを行い、気付き事項や不明点等を記録する
 ③課題洗い出し(Check) …気付き事項や不明点等より、課題を抽出する
 ④対策の実施(Action)…課題に対する対策を検討・実行し、BCPを更新する
 ★策定したBCPの実効性をテストすることにより、課題を洗い出し改善する!

 

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