2017.8.10

業務プロセス統制の評価方法~ウォークスルーとサンプリングテスト~

 

 

業務プロセス統制の評価は、作業のボリュームも多く、内部統制評価対応のメインとなる業務です。
業務内容の詳細を確認する必要があるため、評価作業に時間がかかります。
今回は、業務プロセス統制の評価について、解説したいと思います。

 

業務プロセス統制は、現場部門の方々も携わることが多いかと思います。
また、今まで携わってきた方においても、用語や評価作業の内容・目的を改めて見直し、今後の評価作業に活かして頂ければと思います。

 


目次

目次1  業務プロセス統制評価の概要
目次2  評価対象プロセスの特定
目次3  整備状況評価(ウォークスルー)
目次4  運用状況評価(サンプリングテスト)
目次5  キーコントロールとは


 

業務プロセス統制評価の概要

業務プロセス統制の評価は、評価対象となった事業拠点・勘定科目より、対象とする業務プロセスを選定し、選定された業務プロセスに対し、ウォークスルーによる整備状況評価、サンプリングテストによる運用状況評価を行うものになります。

 

評価対象となった業務プロセスの内容を把握するために、作業内容や作業手順、担当部署、リスクやコントロール等、業務プロセスの内容を文書化したものが3点セットになります。
業務プロセス統制の評価では、3点セットを基にし、設定されているコントロールが適切に機能しているかを確認します。

 

3点セットに関しては、以下の記事を確認してみてください。

[これから始める3点セット作成~効率的な作成方法と記載のポイント~]

 

 

評価対象プロセスの特定

業務プロセス統制評価の手順として、始めに、評価対象とする業務プロセスを特定します。
評価対象とする業務プロセスについては、重要と判定された勘定科目より選定します。
業務プロセスのリスクやコントロールを細かく把握するため、業務プロセスを活動レベルのサブプロセスに分解していきます。

 

重要と判定した勘定科目(例:売上・売掛金・棚卸資産)に対し、業務プロセス(例:販売・仕入・在庫プロセス)を特定していきます。
その後、業務プロセスを活動レベルのサブプロセス(例:受注・出荷・売上計上・請求・債権管理・消込プロセス)に分解していき、業務プロセス統制の対象プロセスを選定します。

 

分解した業務プロセスの単位で、評価を行っていきます。

 

 

整備状況評価(ウォークスルー)

業務プロセス統制の整備状況評価は、『ウォークスルー』という手法で行うことが一般的です。
ウォークスルーとは、「1つの取引を対象とし、①取引開始から②取引処理③仕訳計上に至るまでの一連の流れを追跡する整備状況評価の手続」を言います。

 

整備状況評価=ウォークスルーというふうに捉えられていることがありますが、「1つの取引を対象とし、取引開始から仕訳計上に至るまでの一連の流れを確認する」というのが、『ウォークスルー』の定義です。
整備状況評価の定義は、「リスクを低減する仕組みが整っているか確認する」ことです。
整備状況評価の手法としては、再実施・ヒアリング等もあります。
正確に言うと、『ウォークスルー』は整備状況の評価を行う上での手法の一つになります。

 

例えば、販売プロセスを対象に考えると、
販売契約→受注処理→在庫確認→出荷→請求書作成→売上計上
という流れを確認するため、取引開始の基となる「契約書」や当該案件に関する「出荷指示書」「請求書」「仕訳伝票」等の証憑を突合しながら、コントロール内容と実施している業務内容が合致しているか、評価を行います。

 

ウォークスルーを通じ、対象プロセスにおけるリスクが低減される仕組みが整備されているかを確認します。

 

 

運用状況評価(サンプリングテスト)

業務プロセス統制の運用状況評価は、『サンプリングテスト』という手法で行うことが一般的です。
サンプリングテストとは、「一定期間における関連証憑を複数件サンプリングし、統制の実施状況を確認する評価手続」です。
サンプリングテストはキーコントロールを対象に実施し、業務プロセスの運用状況を評価するものです。
一定期間における関連証憑を確認し、コントロールが継続的に実施されているかを評価します。

 

対象案件の全件を評価するのではなく、一部の証憑を評価することにより、全体の有効性を確認します。評価の客観性を保つため、対象案件(取引)は乱数表等を利用し、無作為に抽出する必要があります。

 

例えば、「部長が会計伝票を承認する」というキーコントロールを評価する場合、まず、評価対象期間内における会計伝票の総件数(母集団)を把握します。
母集団の中から評価対象とする案件を特定し、サンプリングを行います。(母集団200件の中から25件をサンプリングする等)
複数件の証憑をサンプリングし、継続的にコントロール実施されているか、評価を行います。

 

サンプリングする件数については、一般的には、以下のような基準となっています。
統計学の考えに基づき、以下の件数の証憑を評価することにより、全体の有効性を確認しています。
ただ、監査法人によっては若干基準が異なるケースがあります 。
そのため、実務対応としては、監査法人と事前に統制頻度に対するサンプリング件数の認識合わせを行う必要があります。

 

作業の手戻りを防ぐため、母集団・サンプリング件数については、事前に監査法人の合意を得ておくことが必要です。

 

 

キーコントロールとは

キーコントロールを対象に運用状況評価を行いますが、では、キーコントロールとはどういったものなのでしょうか。
キーコントロールとは、業務プロセスの中でリスクを低減するために中心的な役割を担うコントロールのことを指します。
識別したリスクに対して、最低1つのキーコントロールを設定する必要があります。
一般的には、以下のような基準で、キーコントロールの識別を行います。

 

・発見的コントロール(処理結果のモニタリング等)より、
予防的コントロール(アクセス権限の制御)の方がキーコントロールに該当しやすい。
→事後的に確認するコントロールより、予め設定されているコントロールの方が効果が高い

 

・手作業のコントロール(目視での計算確認)より、
自動コントロール(システム上の自動計算)の方がキーコントロールに該当しやすい。
→システムによるコントロールであれば、計算の誤りは無いはずである

 

・担当者によるコントロール(金額のチェック等)より、
知識や経験が豊富な者によるコントロールの方がキーコントロールに該当しやすい。
→権限・責任を持った上長の承認により、会社として認めた正式な資料となる

 

・間接的コントロール(異常値の発見)より、
直接的コントロール(証憑との照合確認)の方がキーコントロールに該当しやすい。
→異常値等、一部分を確認するより、全体を確認する方が効果が高い

 

保守的に考えてしまい、必要以上にキーコントロールを設定しているケースが見受けられます。

 

業務プロセス統制評価の内容や目的を理解した上で、サンプリング件数やキーコントロールの選定等、現行の評価方法の見直しを行ってはいかがでしょうか。
必要以上に作業を行っている部分が見えてくるのではないかと思います。

 

 

 

まとめ

業務プロセス統制評価の概要
ウォークスルーにより整備状況評価を行い、サンプリングテストにより運用状況評価を行う。

 

評価対象プロセスの選定
重要と判定された勘定科目より選定し、活動レベルのサブプロセスまで細分化する。

 

整備状況評価(ウォークスルー)の定義
整備状況評価(ウォークスルー)は、1つの取引を対象とし、
①取引開始から②取引処理③仕訳計上に至るまでの一連の流れを評価する。

 

運用状況評価(サンプリングテスト)の定義
運用状況評価(サンプリングテスト)は、キーコントロールを対象に、
一定期間における関連証憑を複数件サンプリングし、統制の実施状況を評価する。

 

キーコントロールの選定
発見的コントロールより、予防的コントロールの方がキーコントロールに該当しやすい。
手作業のコントロールより、自動コントロールの方がキーコントロールに該当しやすい。
知識や経験が豊富な者によるコントロールの方がキーコントロールに該当しやすい。
間接的コントロールより、直接的コントロールの方がキーコントロールに該当しやすい。