2018.3.15

海外監査における監査報告のポイント~海外拠点担当者の反発を防ぐには~

 

日本拠点における監査と同様、海外監査においても、往査を行った後、その結果を監査調書や監査報告書に取り纏めることになります。
取り纏めた監査結果については、被監査部門である海外拠点側にも説明することになりますが、海外拠点側の監査に対する理解が不足していることもあり、監査結果に対し、反発を受けるケースがあります。
そういった海外拠点担当者からの反発を防ぐためには、どのようにすれば良いのでしょうか。

 

今回は、海外拠点における監査調書の記載方法や監査報告のポイントについて触れていきます。

 


目次

目次1  海外監査における監査調書のポイント
目次2  海外監査における監査報告書のポイント
目次3  海外拠点担当者の反発を防ぐための留意事項~コミュニケーション~
目次4  海外拠点担当者の反発を防ぐための留意事項~情報収集~


 

海外監査における監査調書のポイント

まず、監査結果を取り纏める際には指摘事項だけでなく、その理由・目的・影響・リスク等を含め、詳細に監査調書に記載し、監査報告を行うことがポイントになります。
海外拠点における監査は情報が不足しがちですが、できるだけ多くの情報を収集し、監査結果に対する根拠を明確にすることが求められます。
以下に、監査調書の記載ポイントを挙げていきたいと思います。

 

・監査担当者
海外拠点の監査の場合、内部監査部門の担当者だけでなく、日本人駐在員等が往査を行う場合もあります。その場合、理由と合わせて対応した日本人駐在員等も監査担当者に記載します。

 

・監査対象先
海外拠点の現状や体制、課題等を把握するため、海外拠点の担当者だけでなく、日本の海外拠点担当部門(本社海外事業部)にもヒアリング等を行うケースがあります。
その場合、日本の海外拠点担当部門も監査対象先として記載します。

 

・監査方法
往査だけでなく、チェックリストの利用、Web会議を活用して監査を行うケースもあります。経緯を説明するため、往査ができなかった理由も含め、記載しておく必要があります。

 

・監査意見の理由
監査結果に対する反発が出るのを防ぐため、監査意見の根拠・理由を明確にする必要があります。ヒアリングした情報や収集した証憑等について具体的に記載し、監査意見の正当性・客観性を持たせることが必要です。

 

・監査記録
書類確認、ヒアリングした情報だけでなく、国特有の事情、現地オフィスの状況(労働環境等)も記載します。海外拠点特有の事情等は、監査意見を提示する際の前提条件になります。

 

・その他補足説明
現地の法制度、文化、商習慣、特有のリスク等を基礎的考慮事項として、記録を残しておくことをお勧めします。

 

往査した内容だけでなく、その結果を踏まえた内部監査人としての意見やその根拠・理由を明確にし、海外拠点側に理解してもらえるように監査調書を作成する必要があります。

 

 

海外監査における監査報告書のポイント

監査調書を元に、問題点・改善事項を含め、監査報告書に取り纏めます。
親会社の経営者、監査役等に報告を行うとともに、海外子会社の経営者等にも報告・共有する必要があります。
監査報告書を海外拠点へ通知する場合、現地担当者にも共有するため、翻訳が必要になる場合もあります。

海外拠点への監査報告の手順としては、以下になります。

 

①監査報告書の作成
監査調書を元に、まずは日本語版の監査報告書を作成します。
その後、海外子会社の責任者や現地担当者にも情報共有を行うため、監査報告書の翻訳を行います。

 

②親会社側への監査報告
親会社の経営者および、海外子会社の担当取締役や日本の海外拠点担当部門(本社海外事業部)に対して、監査結果の報告を行います。

 

③海外拠点側への監査結果の共有
翻訳版監査報告書を提出するとともに、監査結果について、海外子会社の経営者および担当者と共有します。
監査の実施方法、検出された事項、改善指摘事項等について、詳細を説明します。
その中で、監査内容に対し、認識の齟齬がないかの確認も行います。

 

監査報告を行う中で、改善活動を促す必要がある場合、改善の指示だけでなく、改善方法まで具体的に説明し、細かく改善の進捗状況をモニタリングするところまで必要になります。

 

監査報告では、事前・事後の説明・共有を欠かさず行い、海外子会社とのコミュニケーションを密にするべきであると考えます。
また、親会社都合の方針・対応を依頼するだけでなく、依頼する内容の意義や必要性、メリット等を詳細に説明すべきです。

 

 

海外拠点担当者の反発を防ぐための留意事項~コミュニケーション~

国によっては、“監査”という概念がない場合もあり、監査に対する理解が不足している傾向があります。
また、現地の監査法人の監査を受けており、問題点は何も無いという反発を受けることもあるようです。

 

こういった反発を防ぐためのポイントは、海外拠点とのコミュニケーションと考えます。
物理的に距離が離れていることもあり、親会社側からは現地拠点の状況が見え難いと感じられることも多いかと思いますが、海外拠点側から見ても、親会社側の方針・指示等が見え難いと感じていることも多いようです。

 

訪問による対話だけでなく、メールや電話、web会議等をうまく活用することにより、コミュニケーションを取ることはできます。
そういったコミュニケーションがあるのとないのでは、相手の反応は全く違います。

 

監査の方針や目的、進め方等を事前に共有するとともに、監査実施後においても、監査報告書の共有や改善事項のモニタリング等を通じてコミュニケーションを取ることが重要です。

 

 

海外拠点担当者の反発を防ぐための留意事項~情報収集~

海外拠点の監査を進める上で障害となってくるのは、情報量が不足する点です。情報が不足している中で監査意見を提示した場合、海外拠点担当者の理解を得づらくなります。
とはいえ、限られたリソースの中で、どのように進めれば良いのでしょうか。

 

往査の中で、証憑の収集やヒアリング等により情報を収集することも重要ですが、事前に把握できる情報は、積極的に収集することをお勧めします。

 

例えば、海外子会社の実績報告や打ち合わせ議事録の閲覧、海外拠点との営業会議への参加を通じ、情報を収集するという方法があります。
営業会議といった、内部監査部門の担当者には直接関係の無い会議体であっても、積極的に参加することにより、業務状況・問題点・トラブル等を把握することができます。

 

内部監査部門側から海外拠点に関連する部署や担当者に対し、積極的に働きかける必要があります。

 

海外拠点とのコミュニケーションや情報の収集を通じ、海外拠点の状況を把握できるとともに、海外拠点側の監査に対する理解が進んでいきます。監査に対する理解が進むことにより、監査に対する反発は消えていきます。
「コミュニケーション」・「情報収集」を積極的に行い、海外監査を進めてはいかがでしょうか。

 

 

 

まとめ

海外監査における監査調書のポイント
☑5W1Hを意識し、監査結果に対する根拠を明確にする。
☑往査した内容だけでなく、その結果を踏まえた内部監査人としての意見を記載する。

 

海外監査における監査報告書のポイント
☑事前・事後の説明・共有を欠かさず行い、海外子会社とのコミュニケーションを密にする。
☑親会社都合の方針・対応を依頼するだけでなく、依頼する内容の意義や必要性、メリット等を説明する。

 

海外拠点担当者の反発を防ぐための留意事項~コミュニケーション~
☑訪問による対話でけでなく、メールや電話、web会議等をうまく活用する。
☑監査の方針や目的、進め方等を事前に共有するとともに、監査実施後もコミュニケーションを取る。

 

海外拠点担当者の反発を防ぐための留意事項~情報収集~
☑海外子会社の実績報告や打ち合わせ議事録の閲覧、海外拠点との営業会議への参加を通じ、情報を収集する。
☑内部監査部門側から、海外拠点に関連する部署や担当者に対し、積極的に働きかける。

 

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