2018.7.26

監査に必要な知識・スキル・経験とは?~内部監査人に求められる知識とスキル

 

内部監査人に必要な知識やスキル、経験とは何なのでしょうか?
海外進出や新規上場により、内部監査へのニーズは増える一方、人材確保に苦労している企業が多いです。
社内のベテラン社員を配置転換する例を多く見かけますが、そもそも内部監査に必要な知識やスキル、経験がわからないため、人材を調達することで苦労しているケースが多いです。
今回は、監査の主体条件、つまり内部監査部門の人材にどのような知識やスキルが必要なのか考察します。

 


目次

目次1  内部監査部門の仕事~内部統制評価と内部監査
目次2  監査の主体条件
目次3  J-SOX評価の主体条件~必要な知識とスキルとは?
目次4  内部監査の主体条件~必要な知識とスキルとは?


 

内部監査部門の仕事~内部統制評価と内部監査

内部監査部門の仕事は、上場会社においては、大きく2つの仕事からなります。
1つは、上場会社で強制される「内部統制対応(J-SOX制度対応)」、もう1つは任意での対応となる「内部監査対応(業務監査)」です。
■内部統制(J-SOX制度対応)
内部統制対応の仕事は大きく2つからなり、内部統制の整備(構築)と内部統制の評価(運用)が主な仕事です。
☑内部統制の整備(構築)
規程類や業務マニュアル等の整備を行い、リスク・コントロール・マトリックス等の3点セットや各種評価シートの作成を行うのがメインの作業です。新規に上場する会社においては、この整備作業が不可欠となります。
☑内部統制の評価(運用)
財務報告に関する内部統制について、毎年、評価範囲の選定から整備・運用状況の評価、評価調書の更新、内部統制報告書の作成まで行う作業です。この評価作業は、すべての上場会社が永続的に行う必要があります。
■内部監査(業務監査対応)
内部監査対応についても、その仕事は大きく2つからなり、アシュアランス(監査による保証)とコンサルティング(監査による指導)が主な仕事です。
☑アシュアランス(監査による保証)
社内の業務ルールが明文化されており、ルール通りに運用できているかを評価し、業務の有効性や法令遵守等の保証・評価を行う作業になります。業務監査、部門監査、定期監査等と呼ばれる監視活動のことをいいます。
☑コンサルティング(監査による指導)
業務監査(アシュアランス)で発覚した問題事項について、規程類等のルール不足やその運用上の不備がある場合に改善施策の提案等を行う作業です。管理・統制の面から部門や子会社を指導する活動です。

 

内部統制対応も内部監査対応も、ルールに従って業務を遂行しているか、つまり仕組みの整備・運用状況をチェックするという意味では同じ仕事です。また不備等があれば、改善指導するという点でも両者は共通しています。

 

 

監査の主体条件

それでは、内部監査部門の仕事をするために必要な知識やスキルは何なのでしょうか?
内部監査人の資格要件については、特に法律で規定されたものはありません。
そこで参考になるのが法定監査における主体条件です。つまり公認会計士に求められる監査の主体条件です。
法定監査における監査の主体条件については明確にされています。
監査人の要件は、「適格性要件」と「職業的義務」の2つからなります。
■適格性要件
☑ 能力条件
専門知識と実務経験のことです。監査人は、専門能力の向上と実務経験から得られる知識の蓄積に努めなければなりません。
☑ 外観的独立性
経済的・身分的独立性を保持することを言います。監査人には、独立の立場を損なう利害やその立場に疑いを招く概観を有さないことが求められています。
■職業的義務
☑ 精神的独立性
監査人は独立した第三者でなければなりません。圧力や誘惑に屈せず、自己の信念や良心に基づいて公正不偏の態度を保持することが求められます。
☑ 正当な注意
職業専門家として通常払うべき注意義務、社会から期待される注意義務を払うことを“正当な注意”と言います。
監査人は、正当な注意を行使することが期待されています。

 

監査の主体要件を定めているのは、監査自体が社会的に信頼される必要があるからにほかなりません。
ここで注目したいのが、「独立性」という言葉です。監査は一定の能力に加え、独立性が強く要求されるのです。

 

J-SOX評価の主体条件~必要な知識とスキルとは?

まず、内部統制評価を行うために必要な知識とスキルについて考えてみます。内部統制の仕組みを評価するためには、J-SOXという法制度の知識がないといけません。また、評価作業に対する知識と理解も必要となってきます。
以下の3つが必要な知識・スキルです。
☑ J-SOX知識
日本の内部統制報告制度の仕組みについて、その背景や目的、内容を理解していなければなりません。
内部統制の目的や基本的要素、統制の種類・内容を学習・理解したうえで、内部統制の評価範囲、構築から評価、報告までの各作業を熟知・経験する必要があります。
☑ 評価のスキル
内部統制の評価作業は、整備状況評価と運用状況評価の2つに分けることができます。3点セット方式とチェックリスト方式の2つの評価方式があり、その評価方式を熟知するとともに、証憑のサンプリングから評価、3点セットないし評価シート等の評価調書を作成するスキルが求められます。
☑ 職業的独立性
内部統制の評価者は、評価対象部門と利害関係がなく、独立した第三者の立場である必要があります。各部門がセルフチェックした結果をそのまま利用するだけでは、評価結果の信ぴょう性を保持することができません。
“独立した第三者”が評価することによって、内部統制評価の信頼性が確保できることになるのです。

 

内部統制の評価者は、内部統制・業務・経理・ITシステム等の幅広い知識が求められることになります。
一方で独自の専門スキルとして、評価のスキルに習熟するとともに、独立性を確保することが求められます。

 

 

内部監査の主体条件~必要な知識とスキルとは?

次に、内部監査を遂行する者の条件を考えます。内部監査は、その対象範囲が広範囲にわたるため、必要な知識やスキルも広範囲に及びそうです。しかしながら、ここでは、内部監査を遂行するために不可欠となる知識とスキルといった点から考えてみます。内部監査に必要な知識とスキルは3つです。
☑ 内部統制知識
内部監査では、業務の中に統制の仕組みがあるか、統制の仕組みが決められた通りに運用されているかをチェックします。
そのため、内部統制の仕組み(統制環境や権限分離、承認等)に対する深い知識が要求されます。
J-SOX制度を通じて、内部統制の整備・運用に関する知識が必要となります。
☑ 監査のスキル
監査は、一定の基準やルールが存在・整備され、その通りに業務が運用されているかを保証するものです。
監査担当者は、まず監査の定義や役割を正しく理解し、予備調査から監査報告までの一連のプロセスを習得し、監査手続(確認、観察、質問等)の取得・習熟に努める必要があります。
☑ 職業的独立性
監査の信頼性を確保するためには、監査対象からの独立性を堅持しなければなりません。子会社や部門との馴れ合いを禁じ、利害関係がなく、独立した第三者の立場で監査を実施しなければなりません。例えば、元工場長が工場を監査するのは、独立性の観点から疑念が残ることになります。

 

内部監査には、承認等の統制の仕組みに対する知識が必要です。そのうえで質問等の監査スキルについて習熟する必要があります。そして監査の信頼性を確保するために、内部監査でも独立性が強く求められます。

 

 

内部統制評価と内部監査は、業務(営業、購買、製造等の業務全般)を熟知し、経理やITシステム、法務、労務等の深い専門知識がないと対応できないと言われます。
しかしながら、本当に必要なのは、正しい監査知識(J-SOX知識等)と技術(監査と評価スキル)です。
より多くの人が監査に携われるようにするためにも、正しい監査知識と技術スキルを習得・教育する機会を設け、企業は、内部監査人を積極的に育成すべきです。
内部統制評価と内部監査は、求められる知識とスキルは共通しています。また評価と監査は共通する作業も多いです。
企業担当者は、この点を踏まえて自社の監査組織を整備・構築してみてはいかがでしょうか。

 

 

まとめ

内部監査部門の仕事~内部統制評価と内部監査
内部統制(J-SOX制度対応)…内部統制の整備(構築)と評価(運用)
内部監査(業務監査対応)…アシュアランス(保証)とコンサルティング(指導)
★整備状況と運用状況をチェックし、改善指導する点で2つは共通する。
監査の主体条件
適格性要件…能力条件および外観的独立性
職業的義務…精神的独立性と正当な注意
★監査自体が社会的に信頼されるためには、専門能力と独立性が必要である。
J-SOX評価の主体条件~必要な知識とスキルとは?
☑ J-SOX知識  ☑ 評価のスキル ☑ 職業的独立性 
★評価のスキルに習熟するとともに、独立性を確保することが求められる。
内部監査の主体条件~必要な知識とスキルとは?
☑ 内部統制知識  ☑ 監査のスキル  ☑ 職業的独立性
★監査のスキルに習熟するとともに、独立性を確保することが求められる。
★★内部統制評価と内部監査は、求められる知識とスキルは共通している。