2018.8.09

どの会社でも使える!個別の視点で評価する決算統制の評価手続き

 

2018年6月28日のエントリーでは、決算・財務報告プロセスに係る統制のうち、全社的な観点で評価する評価手続きについてお伝えしましたが、今回は個別の観点で評価する評価手続きについてのお話です。
決算・財務報告プロセスに係る統制の評価は、全社的な観点で評価するもの以外は、個別の観点で、固有の業務プロセスとして評価する事になります。
個別の観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る統制(以下決算統制(個別))については、一般的にどの会社も業務プロセスにおける会計処理は類似しているのが特徴です。
そしてどの会社も評価対象となりやすい決算統制(個別)の評価手続きについて説明します。

 


目次

目次1  決算統制(個別)の評価範囲
目次2  貸倒引当金プロセスの評価手続きについて
目次3  固定資産減損プロセスの評価手続きについて
目次4  繰延税金資産プロセスの評価手続きについて


 

決算統制(個別)の評価範囲

決算統制(個別)の評価では、個別の観点で、固有の業務プロセスとして評価します。
決算・財務報告プロセスに係る統制の中で、財務報告に係るリスクが高い業務プロセスについては、個別の視点をもち3点セットを用いて業務の流れを可視化して評価するのが一般的です。

 

評価対象となる決算統制(個別)の評価範囲は以下の通りとなります。
①リスクが大きい取引に係る業務プロセス
(例)デリバティブ取引、金融取引
②見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセス
(例)引当金、固定資産の減損損失、繰延税金資産(負債)
③非定型・不規則な取引等虚偽記載が発生するリスクが高い業務プロセス
(例)通常の契約条件や決済方法と異なる取引、期末に集中する取引

 

今回は、この評価範囲の中で「②見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセス」の代表的な業務プロセスをピックアップして、評価手続きを説明します。

 

 

 

貸倒引当金プロセスの評価手続きについて

はじめに貸倒引当金プロセスの評価手続きについて解説します。
貸倒引当金とは、貸倒(かしだおれ)、つまり、取引先の倒産などによって売掛金などの金銭債権が回収できない時のために、その取立不能見込額をあらかじめ見積もり、計上しておく引当金のことです。

 

貸倒引当金プロセスにおけるリスクと評価手続きは以下の通りとなります。
(リスク)
貸倒滞留債権を適切に把握することができない。
(評価手続き)
「年齢調べ表」を閲覧し、一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権の区分ごとに滞留債権が洗い出しされ、経理課長が承認(押印)していることを確認する。

 

(リスク)
一般債権の貸倒引当率の計算を誤る。
(評価手続き)
「貸倒引当金計算シート」を閲覧し、過去の債権に基づき貸倒実績率が計算され、作成者とは別の担当者がチェックし、押印していることを確認する。

 

(リスク)
貸倒引当金の会計伝票の仕訳が適切ではない。
(評価手続き)
「会計伝票」「貸倒引当金計算シート」を閲覧し、「貸倒引当金計算シート」で計上された貸倒引当金額と「会計伝票」の金額が一致し、経理課長が承認(押印)していることを確認する。

 

 

固定資産減損プロセスの評価手続きについて

続いて、固定資産の減損プロセスの評価手続きを見ていきます。
減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態です。
固定資産の減損とは、回収が見込めないことを会計に反映させ、帳簿価額を減額する会計処理のことをいいます。
このプロセスは、経営者の判断と見積りによるところがとても大きくなっているため、経営者の判断や見積りが客観的根拠に基づき妥当であるかを評価するのがポイントとなります。

 

固定資産の減損プロセスにおけるリスクと評価手続きは以下の通りです。
(リスク)
資産のグルーピングを誤る。
(評価手続き)
「減損の兆候判定シート」を閲覧し、「減損会計に関する基本方針」、「固定資産台帳」、「拠点別損益計算書」に基づき資産のグルーピング結果が入力されていることを確認する。

 

(リスク)
減損の兆候判定に恣意性が入る。
(評価手続き)
「減損の兆候判定シート」を閲覧し、将来キャッシュフローが客観的根拠(事業別PL等)に基づき算出されていること、固定資産の帳簿価額との比較がされ、判定結果を経理課長が承認(押印)していることを確認する。

 

(リスク)
減損損失の結果が決裁されない。
(評価手続き)
「経営会議議事録」を閲覧し、「職務権限一覧」に基づき、経理部より付議された固定資産の減損の結果が決裁者によって承認されていることを確認する。

 

 

繰延税金資産プロセスの評価手続きについて

最後に、繰延税金資産プロセスの評価手続きについての解説を行います。
繰延税金資産とは、税効果会計を適用している場合において、将来減算一時差異が生じたことにより発生した法人税の前払いをその差異が解消する会計期間まで繰延処理するために貸借対照表に計上された資産です。
繰延税金資産については、資産性(回収可能性)があるもののみ計上が認められるため、その資産性の検討が必要になり、見積もりの要素が入っています。

 

繰延税金資産つまり税効果会計プロセスにおけるリスクと評価手続きは以下の通りです。
(リスク)
経理の決算資料との申告書各別表の金額が一致しない。
(評価手続き)
「経理決算資料」「申告書各別表」を閲覧し、経理部長は過去の対象項目と比較し、加算項目と減算項目に漏れがないこと、また金額が一致すべき部分は一致しているか、承認(押印)していることを確認する。

 
(リスク)
回収可能性を検討する資料が適切に作成されない。
(評価手続き)
「回収見込みスケジュール表」を閲覧し、将来解消見込み一時差異のスケジューリングが必要な場合、スケジューリングがされていることを確認する。

 

(リスク)
回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を誤る。
(評価手続き)
「決算業務チェックリスト」を閲覧し、経理部長は将来見積額課税所得および一時差異のスケジューリングに応じて回収が見込まれる繰延税金資産の計上額が正確であると承認(押印)していることを確認する。

 

税効果会計プロセスにおいても、固定資産の減損プロセスと同様に経営者の判断や見積りが大きく関わる部分です。
そしてこのプロセスは、計算処理が難しく業務が属人的になりやすいのが特徴となります。
税効果会計における判断や見積りが変われば、企業の財務諸表に直接的に影響を与えるため、経理部がチェックする仕組みを構築し、それを第三者が評価しやすい評価手続きを作成することがポイントです。

 

 

まとめ

決算統制(個別)の評価について
個別の観点で評価する決算・財務報告プロセスに係る統制は、個別の観点で、固有の業務プロセスとして評価

 

評価対象となる決算統制(個別)の評価範囲は以下の通り
①リスクが大きい取引(デリバティブ取引等)に係る業務プロセス
②引当金等見積りや経営者による予測を伴う勘定科目に係る業務プロセス
③非定型・不規則な取引等に係る業務プロセス

 

貸倒引当金プロセスの評価手続き
「年齢調べ表」にて滞留債権が洗い出しされ、経理課長が承認(押印)していることを確認

 

「貸倒引当金計算シート」にて貸倒実績率が計算され、作成者とは別の担当者が押印していることを確認

 

「貸倒引当金計算シート」と「会計伝票」の貸倒引当金金額が一致し、経理課長が承認(押印)していることを確認

 

固定資産減損プロセスの評価手続き
「固定資産台帳」「拠点別損益計算書」に基づき資産のグルーピング結果が「減損の兆候判定シート」に入力されていることを確認

 

将来キャッシュフローが客観的根拠に基づき算出され、固定資産の帳簿価額と比較し、判定結果が承認されていることを確認

 

経理部より付議された固定資産の減損の結果が決裁者によって承認されていることを「議事録」にて確認

 

繰延税金資産プロセスの評価手続き
経理部長は過去の対象項目と比較し、加算、減算項目に漏れがないことを「申告書別表」により確認

 
「回収見込みスケジュール表」を閲覧し、将来解消見込み一時差異のスケジューリングがされていることを確認

 

回収見込みの繰延税金資産の計上額が正しく、「決算業務チェックリスト」を承認(押印)していることを確認