2018.10.11

業務プロセス統制評価の効率化~プロセスの統合・3点セット簡素化~

 

業務プロセス統制の評価作業は、内部統制対応の中でも、多くのウェイトを占めています。
売上計上や債権管理等、個々の業務内容を確認するため、評価作業の負荷が高いと感じているご担当者様も多いようです。
一方、3点セットの記載が細かくなっていたり、コントロールが過多になっている傾向が見受けられます。言い換えれば、3点セットやコントロールを見直すことにより、業務プロセス統制の評価を効率化できる余地があると考えられます。
しかし、「どのように効率化を進めてよいか分からない」という声を聞くことが多くあります。
今回は、業務プロセス統制評価における効率化の進め方とともに、プロセスの統合や3点セットの簡素化といった業務プロセス統制評価の効率化手法について、解説していきます。

 


目次

目次1  評価効率化の効果を上げるための進め方
目次2  業務プロセス統制評価の効率化~プロセスの統合~
目次3  業務プロセス統制評価の効率化~業務記述・コントロールの短文化~
目次4  業務プロセス統制評価の効率化~作業ステップ・リスクの統廃合~


 

評価効率化の効果を上げるための進め方

評価効率化の効果を上げるためには、コントロールの削減等、ある部分のみ効率化するのではなく、全体から部分に効率化を進めていくことが重要です。業務プロセス統制で言えば、評価対象とするプロセス自体の削減を進め、その後、3点セットの改善に着手し、最後にコントロールを削減していくという進め方が良いでしょう。
効率化としては、評価対象プロセスを削減することが一番効果的です。
評価効率化の進め方については、以下の記事も参照してください。
内部監査部門の負荷軽減~全体から部分へと進める内部統制評価の効率化

 

今回は、業務プロセス統制の評価効率化として、最初に着手する「プロセスの統合」「3点セットの簡素化」について説明します。

 

 

 

業務プロセス統制評価の効率化~プロセスの統合~

業務プロセス統制評価手法として、まずは「プロセスの統合」による評価の効率化について解説します。

 

「プロセスの統合」とは、類似しているプロセスを整理・統合し、評価工数の低減を図るものになります。商品別、仕入資材別等でプロセスを分けて評価を行っている場合、プロセスの統合ができると考えられます。
商品別、仕入資材別で業務内容は異なるのかもしれませんが、契約手続や仕訳計上等、類似している業務に着目し、プロセスを統合していきます。
商品別、仕入資材別等でプロセスを分けている場合、プロセス毎に契約手続や仕訳計上の評価が必要になりますが、契約手続・仕訳計上を共通プロセスとすることで一つの母集団としてまとめて評価することができます。プロセスを統合し、母集団を一つにすることにより、コントロールが減り、評価作業の工数を減らすことにつながります。

 

契約等の業務機能単位でプロセスを整理し、承認等のコントロール単位で統合することで、評価の効率化を実現することができます。

 

 

業務プロセス統制評価の効率化~業務記述・コントロールの短文化~

次に、評価対象プロセスを削減した後に行う「3点セットの簡素化」を解説します。
「3点セットの簡素化」の中でも、まずは「業務記述・コントロールの短文化」という手法を説明します。

 

3点セットを業務マニュアルのように、作業詳細を細かく記載していることが見受けられます。
そもそも、3点セットの目的は、『財務報告に係るリスクを把握すること』になります。
目的を考えれば、財務リスクを把握できれば良いので、詳細な作業内容の記載は不要だと言えます。3点セットの内容が細かすぎると、コントロール内容が分かりづらい、3点セットの更新が必要になった場合修正に負荷がかかる、といったデメリットがあります。
では、「業務記述・コントロールの短文化」の事例を見ていきましょう。

 

・業務記述の短文化(例)
◆業務記述の短文化前
業務担当者は、営業担当者よりFAX受信した「出荷依頼書」に基づき、営業システムの出荷メニューから、出荷指示入力を行う。この際、製品コード、代理店コード、送り先コードを入力後、出庫部門・数量を入力する。入力内容を再度「出荷依頼書」と照合し、確定登録する。出荷が完了したら、「出荷報告書」を出力し、内容に問題がないか確認後押印して、課長に回付する。

 

◆業務記述の短文化後
【受領】担当者は営業部門から「出荷依頼書」を受領する。
【出力】担当者は、営業システムにて出庫依頼入力を行い、「出荷報告書」を出力する。
基資料:「出荷依頼書」

 

・コントロールの短文化(例)
◆コントロールの短文化前
課長は、業務担当者から回付された「出荷報告書」と「出荷依頼書」を確認し、
製品名、送付先、出荷数量等が一致していること、「出荷依頼書」に営業課長の捺印があることを確認し、問題がなければ押印する。

 

◆コントロールの短文化後
【承認】部長は「出荷報告書」を確認・承認し、押印する。
確認①:営業課長の捺印
確認②:「出荷依頼書」の製品名、送付先、出荷数量との一致

 

上記事例のように、業務記述を短文化するため、詳細な作業手順等、財務リスクに関係のない内容は記述を削除します。
「誰が、何をするか」を明確に記載することがポイントです。
コントロール内容については、実施している統制方法を箇条書きにすると、視認性が高まり、評価工数の削減につながります。

 

 

 

業務プロセス統制評価の効率化~作業ステップ・リスクの統廃合~

次に、3点セットの簡素化の中でも、「作業ステップ・リスクの統廃合」を見ていきます。業務フローは、業務の流れに沿い、時系列に細かく記載しているケースが多くなっています。
3点セットの目的を考えれば、作業ステップは、必ずしも業務の流れを時系列で正確に表現する必要はなく、要約して3点セットを作成しても良いと考えられます。
では、「作業ステップ・リスクの統廃合」の事例を見ていきましょう。

 

・作業ステップの統廃合(例)
◆作業ステップの統廃合前
【1.作成】(担当者)「計算書」の作成→【2.承認】(課長)「計算書」を承認
→【3.作成】(担当者)「総括書」の作成→【4.確認】(係長)「総括書」を確認
→【5.承認】(課長)「総括書」を承認

 

◆作業ステップの統廃合後
【1.作成】(担当者)「計算書」「総括表」の作成
→【2.承認】(課長)「計算書」「総括表」を承認

 

時系列にこだわらずに考えれば、担当者が資料を作成し、課長が承認するというプロセスになります。統合前では、【2.承認】と【5.承認】がコントロールになりますが、統合後は【2.承認】のみになり、コントロールを一つにまとめることができます。

 

・リスクの統廃合(例)
◆リスクの統廃合前
リスク1:入力間違いにより、正しく計算されない
リスク2:認識誤りで会計期間にズレが生じる
リスク3:計算書が総括書に正しく反映されない

 

◆リスクの統廃合後
リスク1:書類作成に誤りがあるリスク

 

統廃合前ではリスク1~3に分けられていますが、要約すれば、書類に誤りがあるリスクと言えます。リスクが削減されることにより、リスクに対応するコントロールも削減できます。

 

作業の手順や内容を詳細に記載するのではなく、リスクとコントロールを要約して記述することがポイントになります。

 

業務プロセス統制の効率化としては、「プロセスの統合」⇒「3点セットの簡素化」⇒「コントロールの削減」という順番で進めることがポイントになります。コントロールの削減に着手する前に、プロセスや3点セットの改善を行う方が効果的です。

 

また、内部統制報告制度の目的・本質を理解し、効率化を進めることが重要です。
財務報告の信頼性の確保といった目的を踏まえ、自社の3点セットやコントロールを改めて見直し、評価の効率化を進めてはいかがでしょうか。

 

 

 

まとめ

・評価効率化の効果を上げるための進め方
☑評価効率化の効果を上げるためには、全体から部分へ効率化を進めていく
☑評価対象プロセスの削減を進めた後、3点セットの改善・コントロールの削減を進める

 

・業務プロセス統制評価の効率化~プロセスの統合~
☑契約等の業務機能単位でプロセスを整理し、承認等のコントロール単位で統合する
☑商品別、仕入資材別等でプロセスを分けている場合、共通部分がないかに着目する

 

・業務プロセス統制評価の効率化~業務記述・コントロールの短文化~
☑財務リスクに関係のないことを削除し、「誰が、何をするか」を明確にする
☑コントロール内容については、実施している統制方法を箇条書きにする

 

・業務プロセス統制評価の効率化~作業ステップ・リスクの統廃合~
☑作業ステップは、必ずしも業務の流れを時系列で正確に表現する必要はない
☑作業手順を詳細に記載するのではなく、リスクとコントロールを要約して記述する