決算早期化のコツ!早期化の阻害要因と対策

2018年11月29日

 

決算早期化という言葉が広まったのは、今から20年ほど前になりますが、ここ最近では改めて「決算早期化」が注目を集めています。当初は、東京証券取引所が決算日後30日以内に発表した企業を「早期発表会社」と定義し、決算早期化を促したことがきっかけでした。しかし、近年では「タイムリーな経営判断・分析」を目的として取り組む企業が増えています。

 

今回は、決算早期化を実現するうえで、どのような要因が足かせとなっているのか、事例と一緒にRPAなどのIT活用による解決策をご紹介します。

 

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決算早期化の背景と目的

『決算早期化』という言葉が普及したのは今から20年ほど前のことで、2000年前後に東京証券取引所が決算日後30日以内に発表している会社を『早期発表会社』と定義して早期開示を勧めたことがきっかけでした。このような背景を受けて、多くの上場企業は決算早期化プロジェクトを立ち上げ、30日以内の発表を目指して決算の早期化を試み、当初は1%に満たなかった早期発表会社も2005年前後では約20%となりました。

 

そのような状況から10年以上経った今、各企業は自発的に「決算早期化」に取り組むようになりました。決算早期化に取り組む最大の目的は、「タイムリーな経営判断・分析」です。企業を取り巻く環境は、過去と比べて目まぐるしく変化しています。例えば、
・経済的な変化(原材料や為替の乱高下など)
・テクノロジーの変化(IoT、AI、RPAなど)
・人材・雇用の変化(少子高齢化による雇用状況の悪化、働き方改革など)
といった環境の変化が挙げられますが、企業はこれらの変化に対して即座に対応ができないと、競争力は弱くなるばかりです。

 

経営環境の変化に柔軟に対応するには、決算を早く締め、財務状況を分析し、即座に対策を打つことが求められます。このようなことから、決算早期化は制度対応的な側面から、月次決算や日次決算といった経営管理的な側面へと変化しています。『決算早期化』は、今の時代を生き抜くためには必要不可欠な対策となっているのです。

 

決算早期化の阻害要因とは?

決算早期化を実現するうえで、どのような障害があるのでしょうか?決算は個別決算と連結決算で分類できますので、それぞれの決算の代表的な阻害要因を見ていきましょう。

 

【個別決算早期化の阻害要因】
1.勘定科目の残高確定に時間がかかる
2.手入力が多く、入力作業に時間がかかる
3.月末月初に作業が集中し、決算作業が滞る

 

【連結決算早期化の阻害要因】
1.子会社によって会計方針が異なり、調整に時間がかかる
2.子会社によって勘定科目体系が異なり、マッピングに時間がかかる
3.連結パッケージへの入力精度が悪く、手戻りが発生する

 

このように、個別決算と連結決算では、早期化の阻害要因が異なります。これらの阻害要因を即座に解決する『特効薬』は実のところありません。1つ1つの要因を着実に潰しこむことが、早期化の一番の近道であるのです。

 

 

個別決算の早期化対策

個別決算の早期化阻害要因は先ほど紹介しましたので、ここでは対策についてみていきたいと思います。個別決算の早期化については、RPAなどのITツールを利用することで劇的に改善されることが多くありますので、どのようなITツールが利用できるかご紹介します。

 

1.勘定科目の残高確定に時間がかかる
決算早期化の阻害要因としてよく挙げられるのは、「売上や原価などの勘定科目確定に時間がかかる」といった問題です。時間がかかる一番の理由は、勘定科目の金額を確定するための情報(納品書や請求書など)が期日までに集まらないということです。
このような場合、締め日を前倒しする(例えば末締めを25日締めにする)といった解決案もありますが、書類を紙媒体ではなく、電子化するという方法も早期化に役立ちます。紙の書類では送受信にタイムロスが発生しますので、これを無くすために電子化を推進するのも1つの手です。

 

2.手入力が多く、入力作業に時間がかかる
個別決算では、決算日までの納品書や請求書の入力だけでなく、決算修正仕訳や決算整理仕訳の入力など多くの手入力作業が発生します。この手入力作業の効率化で注目を集めているのが、RPAやAI-OCRです。紙媒体の請求書であれば、AI-OCRを使って「電子データ化」し、それをRPAが自動入力するという仕組みで、手入力作業を自動化させることが可能です。
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3.月末月初に作業が集中し、決算作業が滞る
決算は末日に締めますので、どうしても月末月初は忙しくなりがちです。仕事が多くて忙しいがために作業が遅れてしまうというような状態は、『標準化』や『平準化』がうまく作用していないと言えます。標準化や平準化を難しく考える方もいらっしゃいますが、簡易的な措置であればさほど難しくはありません。

 

【業務標準化】
業務標準化の目的は「誰でも同じ品質の業務を遂行できる」ということです。代表的な施策として、「マニュアルの整備」があります。マニュアルを整備することにより、担当者でなくても業務を実施することが可能になり、繁忙期に他の社員を担当させるといった措置が可能になります。
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【業務平準化】
業務平準化の目的は、業務負荷を一定に保つことです。「決算業務」と一括りで表現すると決算期に実施しなければならない業務と思われますが、実はこの決算業務の中にも前倒しして進められるものも存在します。1つ1つ決算業務のたな卸しを行い、実施時期を見直すことで決算期の負荷を下げることができます。

 

このように、個別決算業務の早期化対策は、比較的に簡単に始められるものが多いです。上記3つの課題を基に自社の状況を分析し、対策を検討されてはいかがでしょうか。

 

 

連結決算の早期化対策

次に、連結決算の早期化対策について、阻害要因毎にご紹介します。

 

1.子会社によって会計方針が異なり、調整に時間がかかる
グループ会社の中で会計方針が統一されていないと、親会社が子会社の会計処理を修正しなければなりません。連結決算を始める前に、このような調整が必要となりますので、決算の大きな遅延要因となります。
会計方針の変更には、取締役会の承認など手続きが非常に面倒ではありますが、グループ内の会計方針を統一しておくことで、決算処理は格段に早くなります。

 

2.子会社によって勘定科目体系が異なり、マッピングに時間がかかる
勘定科目の体系は、企業が営む事業(例えば、製造会社と販売会社)によって大きく異なります。全ての科目をグループ内で統一することが望ましいですが、会社によって利用しているシステムが違う、所在している国の法律が異なるというように、統一できないケースが多いのが現状です。子会社の勘定科目と連結の勘定科目をマッピングする作業は、非常に手間がかかりますが、連結決算システムを利用することにより、マッピング作業は解消されます。
最近では安価な連結決算システムも販売されていますので、子会社が少ない場合でも検討する価値はあります。

 

3.連結パッケージへの入力精度が悪く、手戻りが発生する
グループ会社の経理担当者は、必ずしも経理のスペシャリストという訳ではありません。中小規模の企業では、総務や人事を兼任していたりすることが多く、会計知識の乏しい社員が経理を担当していることも珍しくはありません。したがって、連結情報の入力フォーム(連結パッケージ)は、可能な限りシンプルにし、担当者向けの教育や研修体制を整備することで、入力精度を向上させることが可能になります。

 

このように、連結決算における早期化対策は、比較的対応に時間がかかりますので、個別決算の早期化を優先的に取り組み、連結決算の課題は中長期的に取り組む計画を立てると効果的です。

 

 

決算早期化のポイント

『決算』は、個別決算と連結決算によって成り立っていますので、早期化を実現するには個別、連結それぞれで対策を検討する必要があります。個別決算は、ITツールなどを活用し、短期的に改善できる対策が多い一方、連結決算ではルールや体制の見直しと言った比較的中長期にわたった対策が必要です。

 

先ずは自社の決算で何がボトルネックになっているのかを明確にし、1つ1つ計画立てた対策を実行することが、決算早期化の実現につながります。目まぐるしく変化する経営環境に対応するためには、決算を早期化し、「タイムリーな経営判断・分析」を実現させなければなりません。

 

 

まとめ

決算早期化の背景と目的
・決算早期化は、制度的な対応から管理的な対応へ移行している。
・決算早期化の目的は「タイムリーな経営判断・分析」
・経営環境の変化に対応するには、決算を早く締め財務状況を分析し対策を即座に決定する。
個別決算における早期化対策
勘定科目の残高確定処理は、締め日の前倒しと証憑の電子化で対応する。
・手入力作業には、AI-OCRとRPAで処理を自動化する。
・繁忙期の平準化には、マニュアル作成と、業務たな卸しによる実施時期の見直しで対応する。
連結決算における早期化対策
グループ内の会計方針を統一し、仮決算等の作業を削減する。
・グループ内で上位の勘定科目体系を統一し、マッピング作業を効率化する。
・連結パッケージの単純化と経理担当者への研修で入力精度を向上させる。

 

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