決算早期化とコーポレートガバナンスコード~株主総会の開催が早くなる?

2016年10月13日

man-475557__340

 

今回は、決算早期化とコーポレートガバナンスコードについて考えてみたいと思います。
”ガバナンス”という言葉が紹介されて久しいですが、企業の不祥事や会計不正は後を絶たず、もっとガバナンスを効かせて、企業自ら適切に統治できるような試み・仕組みが推奨・推進されています。


コーポレートガバナンスコードとは?

コーポレートガバナンスコードとは、「上場企業が実効的なコーポレートガバナンスを実現するための主な原則を取りまとめたもの」であり、上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の指針です。金融庁と東京証券取引所が草案を取りまとめ、2015年6月から適用されています。
その内容は、コーポレートガバナンス(企業統治)の観点から株主の権利や株主総会の活性化、取締役会機能の向上、監査役や社外役員の責任などを取りまとめた諸原則になります。
その構成は、基本原則と補充原則からなり、対象となる上場企業は、これらの諸原則について、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」を選択して対応しなければなりません。つまり、原則を適用するか、適用しない理由を説明する必要があります。

 

start-1063441__340

コーポレートガバナンスコードへの対応状況

2016年におけるコーポレートガバナンスの対応状況(東証集計より)は、下記の通りとなっています。
・全ての原則をComply(適用)している会社:24.3%
・一部の原則をExplain(説明)している会社:75.7%
コーポレートガバナンスコードの実施ないし適用率は上昇しているようです。
また、株主総会の活性化を目的とした諸施策も推奨されており、
株主総会の開催日の分散化
招集通知による開示内容の充実 など
株主総会によるガバナンスの充実に向けた取り組みも進展しています。

株主総会の活性化~総会の開催は早まっている?

今回は、株主総会のガバナンス機能向上、活性化を目的とした諸施策についていくつか比較検討してみたいと思います。
従来は、株主総会というと、特定の日に集中する傾向でしたが、最近では、その開催日は分散化する傾向にあるようです。
3月決算企業における6月総会開催日の状況を比較すると、
2015年6月総会:
・6月26日(金)開催:44.2%(796社)
・6月25日(木)開催:18.0%(325社)
・6月24日(水)開催:13.7%(246社)
2016年6月総会:
・6月29日(水)開催:32.4%(589社)
・6月28日(火)開催:19.9%(362社)
・6月24日(金)開催:17.8%(324社)
となっています。一極集中が崩れ、10%以上も同一日開催が減少しており、総会開催日の分散化傾向が進んでいることがわかります。
また、総会の開催日自体も早まって来ており、特に早く開催している会社をランキングすると、
第1位 株主総会日:5/27 (総会招集通知発送日:5/12)
 第2位 株主総会日:6/8 (総会招集通知発送日:5/24)
 第3位 株主総会日:6/9 (総会招集通知発送日:5/20)
との調査結果も出ており、開催日の分散化だけでなく、早期に総会の準備を済ませ、迅速な開催運営を行う企業が増加しています。

statistic-1564428__340

総会招集通知における早期発送の現状

”迅速性”といった観点で、コーポレートガバナンス報告書による、「招集通知の発送日から株主総会開催日までの期間」を比較すると、
2014年3月期:
・15日~17日:35.3%(748社)
・18日~20日:23.0%(488社)
・14日:22.6%(480社)
2016年3月期:
・18日~20日:31.8%(644社)
・15日~17日:29.3%(593社)
・21日~27日:23.8%(481社)
となっており、2年前と比べると、招集通知の発送が早くなっているのがわかります。
その中でも特に早く招集通知を発送している会社をランキングすると、
 第1位 株主総会日:6/28→招集通知発送日:5/27(31日前)
 第2位 株主総会日:6/26→招集通知発送日:5/27(29日前)
 第3位 株主総会日:6/28→招集通知発送日:5/30(28日前)
との調査結果も出ており、30日近くも前に招集通知を発送している会社もあります。
これは早期に情報を開示して、株主に情報を分析・熟慮してもらう時間を確保し、株主総会を活性化させ、総会によるガバナンス機能を向上させようとの意識の現れだと思われます。

 

silhouettes-816486__340

コーポレートガバナンスから見た決算早期化

このようにコーポレートガバナンスの観点からも「迅速な情報開示」は求められ、株主に時間的な余裕を持って意思決定をしてもらおうという傾向が高くなってきています。
早期に情報を開示して、株主総会を開催するためには、当然ながら、早期に決算を確定し、法定監査を完了させ、総会に必要な準備を滞りなく完遂させなければなりません。
決算早期化については、”経営層への迅速な情報提供”や”社員の負担軽減”といった目的が指摘されますが、「コーポレートガバナンスという観点」で、もう一度早期化の必要性や適時性を見直してみるのも良いかもしれません。

 

 

まとめ

コーポレートガバナンスコード
・上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の指針
・「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」
⇒原則を適用するか、適用しない理由を説明する。
株主総会のガバナンス機能向上、活性化を目的とした施策
・株主総会の開催日の分散化
・招集通知による開示内容の充実など
コーポレートガバナンスから見た決算早期化
コーポレートガバナンスによる迅速な情報開示
早期の決算確定および迅速な法定監査の完了
総会招集通知における早期発送・発送前開示

CONTACT

経理、監査、情報システムに関するお悩みなど
お気軽にご相談ください

お電話でのお問い合わせ
受付時間:平日10:00~19:00
お気軽にお電話ください
03-6230-9526
フォームからのお問い合わせ メルマガ登録

認証フォーム

※お名前・メールアドレスを入力するとすぐに資料がご覧いただけます。

氏名必須
メールアドレス必須