間接コスト削減のポイント~ABCを用いたコストの見える化

2016年11月03日

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今回は、『間接コストの削減』について考えてみたいと思います。
経理や人事、総務などの間接部門が担う業務(いわゆるホワイトカラーの業務)は、直接部門の業務と違って費用対効果がわかりづらいという現状があります。
工場で発生するコスト(直接コスト)は、材料費・労務費・製造経費といった形で特定の製品に集計され、原価を計算することによってコスト管理が徹底されています。しかし、間接部門のコストについては、直接部門のようにコスト管理が徹底されていない企業が多いのが現状です。
この回では、間接コストの管理手法として、ABCの概要とそのメリットをご紹介します。


そもそも間接コストとは何か?

まず初めに、間接コストとはどのようなものか考えてみましょう。
コスト(費用)は、直接コストと間接コストにそれぞれ分けることができます。

 

【直接コスト】
製品(又はサービス)に直接的に負担させられるコスト
※直接業務から発生するコスト
例)製品の材料費、工場作業員の給与、工場の光熱費など

 

【間接コスト】
製品(又はサービス)に対して直接的に負担させられないコスト
※間接業務から発生するコスト
例)経理・人事・総務などの担当者に対する給与など

 

このように比較すると、直接コストは製品やサービスといったアウトプットが明確なため、そこにコストを集約しますが、間接コストはアウトプットが不明確といった特徴があります。なぜなら、間接コストに関連する業務(間接業務)の多くは、社内に対する『サービス』を提供しているからです。

 

このサービスをコストの集約先としての『活動』ととらえ、間接コストを正確に計算するために生まれた手法が、ABC(Activity Based Costing)なのです。

 

ABC(Activity Based Costing)とは?

ABC(Activity Based Costing)は、1980年代に米ハーバード大学のロバート・キャプラン教授が提唱した管理会計手法で、日本語では活動基準原価計算と訳されています。
通常の原価計算では、特定の製品やサービスを基準として原価を計算しますが、このABCでは『活動』を基準とする点が異なります。

 

業務を活動(アクティビティ)単位に細かく分類し、活動ごとのコストを算出します。
例えば、『会議』という業務を活動ごとに分類すると、
1.開催目的、議題を検討する(開催者)
2.参加者、開催場所、開催日時を調整する(開催者)
3.会議資料を作成し印刷する(開催者)
4.会議を実施するまたは参加する(開催者・参加者)
5.議事録を作成し、配付する(開催者)
と分類することができます。

 

これらの活動に対して、『実施者の単価(時間単価)』、『実施時間』、『実施回数』を掛けることによって、個々の活動の原価を算出する手法が、ABCです。

 

ところで、ABC分析(重要度に応じた分析)といった似たような名前の分析手法がありますが、ここで言うABCは原価を求める手法となり、ABC分析とは異なりますので、注意してください。

 

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ABCのメリット・デメリット

ABCにより、間接業務の活動ごとの原価を算出することができます。
では、活動と原価を見える化することで、どのようなメリットがあるのか考えてみましょう。

 

 ・ 間接業務の実態が明らかになる
 ・ リソース(人的資源)がどのように使われているか明らかになる
 ・ 生産性の低い業務が明らかになる
 ・ 活動と原価の関係性が明らかになる

 

このようなメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。

 

・ 活動の洗い出し・分析に労力がかかる
 ・ 導入に時間がかかる
 ・ 正確性を求めると計算が複雑になる

 

全ての間接業務にABCを導入すると、膨大な時間がかかってしまいますので、一部の業務を対象として導入し、徐々に広げていくような方法(スモールスタート)が良いでしょう。

 

ABCで業務改善!

ABCによって『活動』と『原価』を明らかにすることで、現状の業務(活動)の問題点や課題が明確になります。
例えば、「請求処理の原価が高すぎる」という問題がわかった際、実施者の単価なのか、作業時間なのか、あるいは実施回数なのかという原因が特定しやすくなります。

 

【実施者の単価が原価増高の要因となっている場合】
業務の内容にもよりますが、単純に単価の安い実施者に担当を変更することで、原価を下げることができます。
業務自体を簡素化し、単価の安い実施者でも対応できるようにすることで、原価を下げることもできます。

 

【作業時間や実施回数が原価増高の要因となっている場合】
業務改善を通じて作業時間や実施回数の削減を行ないます。改善方法を見つけるには、ECRSの原則を参考とするとよいでしょう。

 

 <ECRSの原則>
E(Eliminate)=  非付加価値活動の排除
C(Combine)=   2つのステップを結合する
R(Rearrange)= ステップの順序を変更する
S(Simplify)=   作業を単純化する

 

ABCを使うことにより、改善すべきポイントが明確になるだけでなく、効果も数値で測定できるようになるのです。「業務改善を行なっても効果が分からない」という声もよく聞きますが、数値で管理ができると改善のモチベーションが上がり、結果的に間接コストも改善されます。
間接コストが気になる場合は、是非ABCを検討してみてください。

 

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まとめ

・ ABC(活動基準原価計算)の概要
₋ 業務を活動(アクティビティ)単位に細かく分類し、活動ごとのコストを算出する手法
₋ 活動に対して実施者の単価(時間単価)、実施時間、実施回数を掛けてコストを算出

・ ABCのメリット・デメリット
【メリット】
₋ 間接業務の実態、リソース配分、低生産性業務、活動と原価の関係性が明らかになる
【デメリット】
₋ 活動の洗い出し・分析に労力がかかる、正確性を求めると計算が複雑になる

・ ABCを使った業務改善
₋ 原価増高の要因が実施者の単価であれば、単価の安い担当者に変更する
₋ 改善方法を見つけるには、ECRSの原則を参考にする

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