2017.2.16

内部監査部門必見!今さら聞けない~全社統制構築

 

内部統制は大きく分けて全社統制、決算統制、IT全般統制、業務プロセス統制と4種類の統制に区分されますが、今回はそのうち、全社統制について考えてみたいと思います。
全社統制は、企業全体に広く影響を及ぼす統制であるため、各事業拠点や関係部署などとの連携が重要となります。
全社統制における構築ポイントや悩み、そして解決方法などを紹介します。

 


目次

目次1    全社統制とは
目次2    全社統制の構築ポイント
目次3    全社統制構築の悩みどころ
目次4    全社統制構築の悩みを解決する方法


 

全社統制とは

全社統制とは、企業グループ全体に関わり、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす統制を言い、具体的には経営者の方針、リスク管理体制、内部監査、IT管理方針などがあります。
全社統制は、内部統制の基盤として構築し、全社統制が有効である前提の下で、決算統制、IT全般統制、業務プロセス統制の信頼性が担保されます。よって全社統制が有効に機能しないと、他の統制の有効性にも影響を及ぼす可能性があり、このことからも全社統制の構築が内部統制全体の中でいかに重要か理解できると思います。

 

 

全社統制の構築ポイント

次に全社統制を構築する際のポイントについて説明します。
全社統制の構築ポイントは、大きく分けて2つあります。

 

①内部統制の基本的要素が全て満たされるよう構築
全社統制が有効であると判断するには、内部統制の基本的要素が全て満たされていることが必要になります。
内部統制の基本的要素と、その説明は以下の通りです。

 

内部統制の基本的要素 説明 仕組み例
  1. 統制環境  他の基本的要素の基礎となる要素  経営者の方針、取締役会などによる監視機能
  2. リスクの評価と対応  組織目標を阻害するリスクへの対応の仕組み  リスク管理体制
  3. 統制活動  “経営者の命令が確実に実行されるための活動”  指揮命令系統、業務管理方針
  4. 情報と伝達  “必要な情報が組織内外に正しく伝わる体制作り”  管理者への報告や内部通報制
  5. モニタリング  内部統制を機能させるためのプロセス  内部監査や内部統制評価
  6. ITへの対応  “適切なIT利用のためのルール”  IT戦略、IT管理体制など

 

全社統制は内部統制の基本的要素と関連付けられて評価することになり、実施基準では42の評価項目が例示されています。
全社統制構築の参考にしてみてください。

 

②企業グループ全体で構築
親会社で企業グループ全体の内部統制を構築します。
親会社では、自社の管理体制に加え、グループ全体の管理体制を整備することになります。子会社の全社統制は、親会社の統制に依拠し、それに従って運用されているか評価します。
親会社で企業グループ全体の統制を構築するかしないかによって、文書化や評価工数に影響を及ぼすため、可能な限り企業グループ全体で統制を構築することをお勧めします。但し、子会社に親会社とは異なる組織構造がある場合、子会社独自の全社統制を構築し、整備状況も含めて評価します。

 

 

全社統制構築の悩みどころ

全社統制構築に際し、以下のような悩みを抱えている会社様が多いようです。

 

課題1:実施基準42項目の例示の表現が抽象的であるため、具体的に何を構築したら良いかわからない。
全社統制の構築は、実施基準の評価項目の例示を基に行いますが、例示は比較的規模の小さい会社から大規模企業まで多くの企業形態で利用できるようなものとなっていることから、抽象的な表現にとどまっています。
よって具体的に何をしたら良いか判断に迷う会社様が多いのが現状です。

 

課題2:買収した子会社の全社統制の構築に苦労する。
最近では、事業形態や企業風土が異なる子会社を買収するケースがあります。買収された子会社は、既に独自で全社統制を構築しているケースが多く、新しい親会社の全社統制の枠組みに入れるべきか、判断に苦労されています。

 

 

全社統制構築の悩みを解決する方法

それでは、全社統制構築における悩みを解決する方法を説明します。

 

課題1:実施基準42項目の例示の表現が抽象的であるため、具体的に何を構築したら良いかわからない。
課題1の解決策:評価項目の意義を具体的に定め、企業の実態に合った全社統制を構築する。
42項目について評価項目の意義を具体的に定めます。
そして42項目はあくまで例示であるため、企業実態・規模に合わせて全社統制を構築し、評価します。
評価項目「経営者は、従業員などに職務の遂行に必要となる手段や訓練などを提供し、従業員などの能力を引き出すことを支援しているか。」について、以下が事例となります。

 

 ○評価項目の意義:教育研修や訓練などにより職員の能力を引き出すことを支援する
                              会社の仕組み(体制)
 ○構築内容:   専門書の回覧、部内勉強会の開催
 ○評価内容:   会計基準変更に関する情報の回覧記録を閲覧、部内勉強資料を閲覧

 

ここで教育・研修制度を構築するほどの企業規模ではない会社は、このような企業実態にあった全社統制を構築し、評価します。

 

課題2:買収した子会社の全社統制の構築に苦労する。
課題2の解決策:企業グループ一体で行う統制のメリットを子会社へ伝え、全社統制を構築する。
親会社により企業グループ一体で統制を構築する以下のようなメリットを子会社へ伝えます。
1. 全社統制は、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす統制であり、企業グループ全体で可能な限り統制を統一した方がより有効性のある全社統制を構築することができる。
2. 内部統制の文書化工数や整備・運用状況評価工数の削減につながる。

 

全社統制は、事業拠点や関係部署と連携することが重要です。
企業グループ全体で、一人一人に当事者意識を持ってもらい全社統制を浸透させるためには、企業の文化や意志を尊重しながら、そして親会社のみではなく企業グループ全体で協議しながら全社統制を構築していく必要があります。

 

 

 

まとめ

全社統制とは
企業グループ全体に関わり、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす統制のこと
(例:経営者の方針、リスク管理体制など)

 

おさえておくべき全社統制の構築ポイント
①内部統制の基本的要素が全て満たされるよう構築
・内部統制の基本的要素とは、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応のこと

②企業グループ全体で構築
・親会社で企業グループ全体の内部統制を構築し、そして自社の管理体制に加え、グループ全体の管理体制を整備
・子会社の全社統制は、親会社の統制に依拠し、それに従って運用されているかを評価

 

全社統制構築の実践ポイント
①42の評価項目の意義を具体的に定め、企業の実態に合った全社統制を構築

②企業グループ一体で行う統制のメリットを子会社へ伝え、全社統制を構築
メリット1:全社統制は、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす統制であり、企業グループ全体で可能な限り統制を統一した方がより有効性のある全社統制を構築することができる。
メリット2:  内部統制の文書化工数や整備・運用状況評価工数の削減につながる。