内部監査部門における関心事と悩み事~内部監査部門の地位向上の必要性

2017年05月25日

 

内部監査部門の仕事は増加しています。
最近の不正事例や企業不祥事の発生を受けて、内部監査の重要性は高まるとともに、内部監査部門の仕事は年々増加しています。
今回は、そんな日ごとに大変さを増す内部監査部門の方々がどういった事に関心を持ち、どういった悩みを抱えているのかを考えてみたいと思います。

 


内部監査部門の関心事

内部監査部門の仕事は、内部監査と内部統制評価(整備)の二つに分けることができます。
内部監査部門の担当者の方々の関心事について、内部監査と内部統制評価の二つに分けて調査を行ったところ、以下のような調査結果を得ることができました。
*100社のアンケート調査に基づく、弊社の調査結果(複数回答あり)となります。

 

■内部監査の関心テーマ

 監査調書と監査報告 37社
 不正対策と事例研究 32社
 監査フォローアップ事例 32社
 予備調査と監査計画 31社
 往査の方法と監査手続 29社
 不正発覚後の調査の進め方 25社
 内部監査におけるCAAT利用 25社
 グループ監査の進め方 20社
 海外の不正事例とその対策 19社

 

内部監査については、最近の不正事例を受けて、「不正対策と事例研究」に関心が高く、また「海外の不正事例とその対策」にも関心を寄せている企業があることがわかります。
意外なところで言うと「監査調書と監査報告」に関心が高いという点です。これは、監査をしているものの、どうやって結果を整理すべきか、どうやって報告すべきか”他社がどう報告しているのか知りたい”との現場の思いが現れていると考えられます。

 

■内部統制評価の関心テーマ

 業務プロセス統制 39社
 内部統制評価の効率化 34社
 内部統制構築の進め方 32社
 内部統制評価の進め方 32社
 IT全般統制とIT業務処理統制 31社
 全社統制と決算統制 24社
 3点セットの作成方法 24社
 内部統制報告制度について 18社
 海外拠点の内部統制対応事例 18社

 

一方、内部監査については「業務プロセス統制」に関心が高いのが特徴的です。業務プロセス統制は、内部統制評価でも作業ボリュームが多く、評価担当者の関心が高い結果となっているようです。
また、「内部統制評価の効率化」も関心が高く、業務プロセス統制を中心とした評価作業をいかに負担なく実施するかが大きな関心事のようです。

 

内部監査、内部統制評価に共通して言えるのが、「海外対応」という点です。企業の海外進出に伴い、海外での内部監査やJ-SOX対応が求められるケースが多くなっていることが最近の傾向として見られるようです。

 

内部監査部門アンケート1

 

 

内部監査部門の悩み事

一方、内部監査部門が抱える悩み事とは何でしょうか?

 

■内部監査における悩み事

 内部監査の教育・育成を進めたい 43社
 監査を実施する作業スタッフが足りない 21社
 海外子会社の監査を強化したい 15社
 不正対策を強化したい 14社
 CAATを利用した監査手法を導入したい 13社
 経営層や現場部門の理解が得られない 9社
 内部監査の品質レベルをチェックしてほしい 6社
 監査対象が増えて困っている 3社

 

この調査結果からは、ヒトの問題に関する悩みが見て取れます。
多くの会社で「教育を進めたい」との思いがあり「作業するスタッフが足りない」との悩みもあります。
また、海外対応や不正対策を推進したいとの声も多く見られますが、その一方で「経営層の理解が得られない」との声もあり、内部監査部門の仕事が増える中、教育や人材確保といった人事面での協力がまだ得られ難い環境にあることがわかります。

 

■内部統制評価における悩み事

 評価スタッフの教育・育成を進めたい 35社
 評価作業の効率化を図りたい 30社
 内部統制やガバナンスの社内研修を行いたい 17社
 MAや新規事業により評価範囲が増えてしまった 11社
 異動・退職に伴う評価スタッフの補充 9社
 海外子会社の評価が必要となり困っている 9社
 IT統制評価に課題を抱えている 7社
 3点セットが複雑になっており、作り直したい 3社

 

この調査結果からは「教育を推進したい」との声が多くあるのがわかります。
また「効率化を図りたい」との声も多く聞かれ、法制度施行後10年近くが経過し、評価スタッフの退職や異動とともに、評価作業がルーチン化してきたことが背景にあるようです。

 

内部監査、内部統制評価とも、教育や育成といったテーマが見て取れ、内部監査部門の仕事が増える中、ヒトの問題が追い付いていない・解決できていないといった悩みが多くの会社に共通してあるようです。

 

内部監査部門アンケート2

 

広範な内部監査の範囲

内部監査の対象範囲は、広範囲に及びます。
内部監査は、J-SOX対応とは異なり、範囲が財務報告に限定されている訳ではありません。
内部監査の対象範囲は、例えば、
営業、購買、製造、物流
といった業務から、
研究開発、総務・人事、経理、情報システム
といった業務まで及びます。
加えて、
外注管理や関係会社、全社管理・組織・制度
といったマネジメント全般まで含まれます。
これらすべてを内部監査部門だけで監査するのは至難の業です。

 

さらに、内部監査の目的ないし監査テーマが多岐にわたります。
日本内部監査協会が内部監査実施状況(監査テーマ・要点)を調査したところ、例えば、営業業務であれば、
営業業務規程、販売計画、受注方針、決裁権限、職権分離、労務管理、コンプライアンス教育訓練、顧客情報管理、接待交際費、反社会的勢力取引排除、BCP(事業継続計画)等
監査テーマが100を超えるとの調査結果が公表されました。
一つの業務で見ても監査テーマが100を超えるのですから、全ての業務を考えたときに、内部監査の範囲の膨大さが伺い知れるかと思います。全ての監査対象を一気にやることなど到底できるはずがありません。

 

このような状況を踏まえ、自社にあった監査計画(監査対象やテーマ、時期等)を考え、監査体制(人材と必要スキル)を配備して、監査を実施しなければなりません。

 

 

内部監査部門の地位向上

内部監査部門は、膨大な業務をこなしていかなければなりません。
そのためには、内部監査を担当する人材を発掘して育成していく必要があります。

 

多くの企業では、内部監査部門の人材難に頭を悩ませています。新卒や若手を採用して配属するなど、とても難しい状況にあるからです。
それは内部監査の認知度が低いことが原因にあると考えられます。
内部監査の認知度が低いため、学校で監査を勉強したとしても、内部監査部門を志望して入社するといった例は、あまり聞くことはありません。経理や人事を勉強して、経理や人事を志望する人はいますが、監査では聞きません。

 

また、監査に携わる人間のスキルを必要以上に挙げているのも原因です。
確かに、監査には広範囲な業務知識(業務全般の理解)は必要です。経理や情報システム、コンプライアンスといった専門知識を求められる局面もあるのかもしれません。
しかしながら、全ての業務に精通し、深い専門知識を持った人間がどれだけ存在するのでしょうか?監査のプロである公認会計士ですら、対象は経理業務(財務報告)に限定されるのです。
人材・スキルのハードルを上げることが、人材不足を招く原因になっていると思います。

 

監査に必要なのは、業務全般の理解と監査の専門知識・技術です。
ここで言う監査の専門知識・技術とは、業務の中に内部統制の仕組み(承認等)があるかを”査閲”できる知識と、その仕組みが正しく運用されているかを”質問”できる技術です。
このように監査に必要な人材・スキルを明確にすることで、より監査環境を向上させ、内部監査部門の地位向上につながるのではないかと考えています。

 

多くの内部監査部門では、ヒトの問題で大変苦労しています。
・監査対象が増加しているのに、人手が足りない
・要員が高齢化しているが、若手を採用できない
この、ヒトの問題を解決することで、内部監査部門の悩み事の多くは解決できるはずです。

 

 

まとめ

内部監査部門の関心事
■内部監査で関心が高いテーマ…監査調書と監査報告、不正対策と事例研究
■内部統制評価で関心が高いテーマ…業務プロセス統制、内部統制評価の効率化
海外での内部監査やJ-SOX対応が求められるケースが多くなっている傾向が見られる

 

内部監査部門の悩み事
■内部監査における悩み事…教育・育成を進めたい、作業スタッフが足りない
■内部統制評価における悩み事…教育・育成を進めたい、評価作業の効率化を図りたい
内部監査部門の仕事が増える一方、教育・育成や人材の問題に悩みを抱えている

 

内部監査部門の地位向上
☑人材採用のためには、内部監査部門の認知度を上げていく必要がある
☑監査の担い手に必要なのは、業務の理解と監査への知識・技術である
★内部監査部門の地位向上により、内部監査部門の悩み事の多くは解決できる!

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