資金管理システムの概要とシステム導入に向けて

2017年08月03日

 

今回は資金管理システムについて考えてみたいと思います。
資金管理システムは、財務・経理業務の中でもシステム化が進んでいない領域と言えますが、上手く資金管理システムを活用して大きな成果を出している企業様も多くいらっしゃいます。
そもそも、資金管理は手間がかかる業務であり、「自動化できれば単純作業を減らせるのに」という思いを抱いているご担当者様も少なくないかと思います。
今後、資金管理システムをご検討される企業様に向けて、資金管理システムの概要や機能、導入による期待効果について整理していきたいと思います。

 


資金管理システムの目的

資金管理システムは資金の調達・運用を管理するためのシステムです。
資金調達とは、文字通り外部からの資金の調達を意味しており、借入や社債などが該当します。
また、資金運用とは、資金を貸し付けたり有価証券を購入したりして運用する取引が対象となります。
日本の企業のうち、約70%はこれらの資金管理業務をExcelで行っていると言われています。Excelでの資金管理は、柔軟性や操作性の面ではメリットもあるものの、資金計画や資金繰りの作成に手間がかかっているケースも少なくなく、また、関連する情報も多岐にわたりミスが起きやすい作業とも言えます。

 

資金管理システムを上手く活用することができれば、資金管理業務の負担軽減や精度向上を図ることができます。

 

 

資金管理システムの一般的な機能

一般的な資金管理システムでは、資金契約や資金繰りに加えて借入金、貸付金管理などにも対応しています。
ここからは、その機能の概要について記載します。

 

◆借入金管理
資金の借入に関する情報を管理する機能です。
借入時に契約情報を入力することで、借入金の残高推移や返済計画表などを照会・出力することができます。
予定されている支払日が休日に該当する場合は、自動的に支払日や日割計算による金利を調整するなど、細かい条件も含めて自動的に計算できるものも多いです。
また、借入金を返済する際の振込データについても自動的に作成できます。
追加借入を行った場合の返済シミュレーション計算や、金利デリバティブ取引(金利スワップ、通貨スワップなど)に対応したシステムもあります。

 

◆貸付金管理
資金の貸付に関する情報を管理する機能です。
資金貸し付けに関する契約情報を入力することで、借入金管理と同様に、残高推移や回収予定表などを自動的に作成することができます。
また、回収シミュレーション計算に対応しているシステムもあります。
インターカンパニーローン(グループ会社間の資金の貸付・借入)などに対応したCMS(キャッシュマネジメントシステム)の機能を併せ持つシステムも多くあります。

 

◆有価証券管理
保有している有価証券の情報を入力することにより、残高推移や利回り情報などを照会・出力することができます。
売買目的有価証券、満期保有目的有価証券、関連会社・子会社株式、その他有価証券の取引情報(取得、譲渡、保有目的)など、保有目的別に管理することができます。

 

◆運用預金管理
定期預金、外貨定期預金、譲渡性預金などを管理する機能です。
契約情報を登録することで、定期預金および譲渡性預金における利息収入の見通しを照会することができます。
また、預けている期間や利率、途中解約条項などを含めて、運用預金に関する情報を一元管理できます。

 

◆資金管理
会社の資金繰りを管理することができる機能です。
収支実績データを集計し、資金繰り実績表を作成することができます。
また、将来発生する収支予測データを登録・収集することにより、資金繰り予測表も作成します。
資金繰りの実績データと予測データを使うことで、資金・予算・実績管理にも対応できます。
その他に資金管理では口座別に任意の期間(年間、半期、四半期、月次)における収支情報や残高を閲覧することが可能です。
資金の調達・運用に関する一連の取引を管理することにより、資金繰り(資金計画および実績)を自動的に算出できる、というのが資金管理システムのメイン機能と言えます。

 

このように、資金管理システムでは、資金の運用・調達に関する事務業務の大半をカバーできるようになっています。

 

 

資金管理システム導入による期待効果

ここからは、資金管理システムの導入により期待できる効果について述べてみたいと思います。

 

1.精度の高い資金計画の作成
資金管理システムでは資金の調達、運用、移動に関する情報を持ち、それらを反映した資金繰り表を作成することができます。
システムが無ければ、Excelなどを使い、一つ一つ情報を拾って作成していくことになりますが、資金繰りに関わる情報は多岐にわたるため、記載漏れや時期や金額の誤りが生じやすい作業です。
システムを導入することにより、計算が自動化できるのはもちろんのこと、必要な情報を自動連係できますので、人為的な誤りを大幅に削減し、より精度の高い資金計画を作成することが可能です。

 

2.仕訳や振込データの自動作成
資金管理システムがあれば、金融取引に関する仕訳を自動で作成することができます。
借入金の返済や貸付金の回収、金融商品の期末評価に伴う長短振替仕訳、翌期首の再振替仕訳などを自動的に起票します。
また、インターカンパニーローンやプーリング、支払集中に関する仕訳も作成できます。
仕訳の作成に加えて、借入金の返済や資金移動のための振込データもシステムから自動的に作成できます。

 

3.資金調達・運用情報の一元化
資金管理システムを入れることにより、資金調達・運用に関する情報を一元管理できるようになります。
システムが無い場合、有価証券を購入する際には、購入申請書を作成し、紙又はワークフローシステムで承認します。
購入した有価証券の情報や時価評価の履歴はExcelで管理し、仕訳情報は会計システムに登録、といった具合に、情報が散在することになります。
資金管理システムを入れれば、これらの情報を全て格納・照会することができます。過去の履歴情報も容易に確認できるようになります。

 

以上のように、資金管理業務をシステム化することにより、資金管理業務を質・量の両面から向上できる可能性があります。

 

 

資金管理システムによりメリットが得やすい企業とは

資金管理システムの導入により得られる効果は、企業によっても差が生じます。
システム導入による費用対効果が高くなる企業の条件としては、次のような点が挙げられます。

 

1.金融取引のボリュームや頻度が高い

当たり前とも言えますが、金融取引が多い企業であれば、資金管理システム導入によるメリットは大きくなります。
例を挙げると、証券業やレンタル・リース業、商社などの企業が該当します。
この業界の企業は、借り入れたり運用したりする資金の量や取引件数が、一般的な事業会社よりも多いのが普通です。
取引量に加えて取引の種類が多いことも多く、資金管理システムによる管理で、煩雑な管理業務の負担を低減できる可能性があります。

 

2.グループ会社の数が多い

グループ会社の数が多い企業であれば、各会社において資金需要や余剰資金が頻繁に発生します。
また、グループ会社間の取引件数も数多く発生しているのではないかと思います。
インターカンパニーローンやネッティングに対応したCMS(キャッシュマネジメントシステム)機能があれば、グループ内で資金融通や債権債務の相殺を自動的に行うことができます。
その結果、銀行に支払う振込手数料や金利を最小限に抑えることが可能です。
ある大手企業グループでは、資金管理システムの導入により、数千万円の費用を削減することができた、という事例もあります。

 

3.取引の種類や取引先の数が多く決済条件が多岐にわたる

資金繰りの計算は多くの企業において、煩雑な作業の一つだと思います。
取引の種類や取引先数が多い企業では、その作業はかなり複雑なものとなり、属人化してしまいがちです。
資金管理システムを導入し、債権債務管理システムなどの周辺システムとも連携することにより、資金繰りに関する作業の大半を自動化することができます。
そうすることにより、資金管理担当者の方は、単純作業から解放され、より高度な業務へ時間を割くことができるようになります。

 

資金管理システムによっては、カバーしている業務範囲が限定される代わりに、比較的廉価に導入できるものもあります。
上記のようなケースに該当する企業様において、資金調達・運用業務にご負担を感じているようであれば、一度、システム化をご検討されてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

まとめ

・資金管理システムの機能
借入金管理
貸付金管理
有価証券管理
運用預金管理
資金管理
・資金管理システム導入による期待効果
精度の高い資金計画の作成
仕訳や振込データの自動作成
資金調達・運用情報の一元化
・資金管理システムによりメリットが得やすい企業とは
金融取引のボリュームや頻度が高い
グループ会社の数が多い
取引の種類や取引先の数が多く決済条件が多岐にわたる

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