Excel業務システム化を阻む要因と解決の方向性

2017年11月16日

 

お客様先を訪問すると、Excelを使った業務が多く、属人化していてデータ集計が捗らないので、システム化したいというお話をよく聞きます。しかし、長年の業務の中に根付いたExcelをシステムに置き換えることは、一朝一夕には叶いません。また、システム化ばかりが解決方法とも言えません。
今回はExcelに依存している業務のシステム化を進める際に障害となるポイントをまとめ、解決の方向性を考えてみたいと思います。

 


Excel業務のシステム化を阻む要因

まずExcel業務をシステム化しようと考えた際には、それを阻む要因は大きく3つあると考えています。

 

要因①:豊富な機能
業務で利用しているExcelをシステムに置き換えようとしたときの壁の一つに、Excelが持つ機能の豊富さがあります。
Excelは表形式にデータを入力して加工することを重視して、進化を遂げてきたソフトウェアです。作った表を思い通りに絞り込めるフィルター機能や、他のExcelファイルやシートを参照できるハイパーリンクなど、便利な機能は挙げれば切りがありません。
例えば、Excelで集めた営業データを分析するとき、ある条件の数値セルは黄色くして、その中で特定の商品に絞り込んで結果を合計して、別のシートに転記する、という作業はありがちですが、その機能群を代替できる業務システムはほとんどありません。そのためシステム化の検討を進めて、色々なシステムを調べても、結局はExcelの方が便利だなという結論に落ち着いてしまいがちです。

 

要因②:自由度の高い入力・編集
もう一つの壁は、ユーザがデータを入力や編集するときの自由さです。
Excelの表に項目を追加したり、列や行を挿入しようとしたときは思い通りに作ることができます。しかも複雑な設定は必要なく、わずか3ステップほどで完了します。
数値や文字も任意の場所へ入力ができますし、コピーや貼り付けも自由自在です。
これがシステムではそうもいかない場面が多くなります。管理用として入力項目を増やしたいのにマスタや画面の設定を変えなければならない、入力されているデータをコピーしたいだけなのにイメージ通りに操作ができないなど、使い勝手は大きく変わるはずです。
Excelは自分の好きなタイミングで思ったように表を作成でき、編集や修正も楽なソフトウェアですので、表を作ろうとする度に設定画面を開かなければいけないシステムへ乗り換えるとなると、そのモチベーションは維持しづらくなっていきます。

 

要因③:慣れ親しんだソフトウェア
社会人として企業に勤めていて、Excelに触れる機会がないという方は少数だと思います。
数多くの集計表などを作らないまでも、決まったフォーマットに何かのデータを入力する場面はあるのではないでしょうか。
日頃から慣れ親しんだ業務やソフトウェアを別のシステムに変えることには、相当な覚悟が必要となります。今までに覚えた操作感覚を捨てて、新しいやり方を覚えるには苦労もしますし、ある程度の時間が必要です。
今のまま変えたくないと思うのが人の心情ですので、誰かがシステム化を唱えたとしても、なかなか進められないという結果になりがちです。

 

 

 

その業務課題はシステム化で解決するのか

Excelからシステムへ乗り換えるには、上記のように越えるべきハードルがいくつも存在します。
それでもなお、ハードルを越えたときにはシステムによる理想的な業務の姿を得られるかもしれません。
しかし、そもそも乗り換えを検討する出発点は、「高機能で自由度の高いExcelだけど、現場の担当者に管理をさせるとファイルがバラバラに保存されてしまい、表の形式もデータも担当者に任されるので、属人化してしまう。その結果、データ集計がやりにくい」であることが多いはずと思います。
果たしてこのような業務課題は、Excelをシステム化するだけで解決するのでしょうか。

 

例えば、Excel業務が多くある中で、経営者から実績のレポートを求められたとします。
様々な部門の担当者がバラバラに作成したExcelのフォーマットを集め、それらを基に作成するのは非効率ですし、まとめる担当者の力量によってはレポートの精度が下がる場合もあります。
このようなケースは一見しますと、Excelを使っているがために、大切な情報の保有が属人化していて、活用が進められていないと考えられ、入力から出力までシステム化することが良しとされがちです。
しかし問題点は、バラバラのフォーマットにある情報が集計しずらく、レポートを正確に作れないことであった場合には、Excelの入力機能は残しながら、集計だけをシステム化すれば解決できる可能性も出てくることになります。
もちろん、それでもシステム化をする方が得られる効果は高く、コスト低減にもなる場合があるとも思います。

 

システム化を検討する業務の状況や目的を確認して、Excel併用と完全システム化の両方を比べながら、最適な方法を選択することがよいと考えますが、選択のポイントは次節に記載していきたいと思います。

 

解決の方向性~Excelを捨てないという選択肢~

Excel業務のシステム化で検討すべき選択肢を2つ挙げ、ポイントと方向性を考えていきます。

 

①Excelを完全にシステムへ乗せ換える。
②Excelとシステムを共存させる。

 

①は非効率と考えられているExcel業務について、システム化する上で必要な要件を洗い出し、実現できるシステムを探す、または作り込む方法です。
Excelで済ませている業務を全てシステムにするため、首尾よく出来上がった場合には、入力から出力まで一貫性を持ち、経営判断に利用するデータをリアルタイムに近く集計することも不可能ではありません。
ただ、システム構築時に入力項目や集計方法のほとんどを決めてしまうため、項目変更が必要な際などは、柔軟性に欠ける部分があります。また、社員個人や部門でデータを分析したい場合は、システムからデータを出力するしかなく、システムに定められたレポートだけでは用をなさないこともあります。その度にシステムの改修が必要になり、先々では本当に効率化できたのか、効果の測定が難しくなるケースも発生します。

 

②はExcelとシステムで役割分担をする方法です。
高機能で自由度が高く、慣れ親しんだExcelを手放さず、システムも利用するという選択肢で、正確には、Excelの良いところを残しながら、苦手なところはシステム化する方向性です。

 

Excelの良いところは、入力・編集の自由さと誰でも扱える容易さです。
仕事を進める中でExcelを使ったことの無い方はほぼおらず、操作を覚える手間がなく、すぐに扱えるというのは大きな強みです。また、データの保存はファイル形式であるため、社内外の他者に情報を共有しやすい点もポイントです。
一方、部門や人ごとに異なっている自由なフォーマットは、Excel間のデータ集計に支障をきたします。同じフォーマット間であれば、集計や参照で困ることはあまりないのですが、全く異なるフォーマット同士からデータを集めようとすると、途端に作業のハードルが上がり、誤りも起こりやすくなります。
システムによってはデータの入力フォーマットが複数あっても、簡易な設定で取り込めるものがありますので、Excelが苦手とするバラバラなフォーマット集計の部分をシステム化することによって、業務効率を大幅に上げることができるケースもあります。

 

Excel業務を全てシステム化すれば、社内のデータ活用はスピーディーに行われるかもしれませんが、これまでに得られていたExcelの柔軟性や利便性は損なわれることがほとんどです。
Excelとシステム、お互いに得意な面と不得意な面を見極め、適材適所に使い分けることも視野に入れてシステム化を検討することが、Excel業務の効率化につながるのではないかと思います。

 

 

まとめ

・Excel業務のシステム化を阻む要因
☑Excelにはデータ整理や加工を便利に行える豊富な機能がある。
☑Excelには入力・編集に関する自由度の高さがある。
☑Excelの操作はわかりやすく、使う側が操作に慣れ親しんでいる。

・その業務課題はシステム化で解決するのか
☑Excel業務のシステム化を検討する際には、目的をよく確認する。
☑その目的を達成するため、業務の全面的なシステム化は必須であるかを考える余地はある。

・解決の方向性~Excelを捨てないという選択肢~
☑Excelの入力・編集の自由度は活かすべき。
☑Excelが苦手とする異種フォーマットの集計をシステム化する。
☑Excelとシステムを適材適所で使い分けることを考えながら、方向性を検討していく。

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