RPAの効果的な導入方法~RPAにあわせて業務を調整する~

2018年09月06日

 

働き方改革の対策として、業務効率化に取り組まれる企業が日に日に増えてきています。このような中、業務効率化の特効薬として、自動化が実現できるRPAを導入する企業が増えていますが、「簡単だと思ったが、なかなか一筋縄では進まない」といった声も耳にします。
この問題をひも解いていくと、「現状の業務プロセスをそのままRPA化しようとしている」という事実が浮かび上がります。現状の業務プロセスをそのままRPA化しようとすると、開発の難易度が上がるだけでなく、様々な問題が発生し、結果的にRPAの効果は半減します。
今回は、RPAで業務を自動化するうえでの課題と、効果的な導入手法をご紹介します。

 


現状の業務をそのままRPA化することの問題点

RPAを使って業務を自動化するうえで、「現行の業務プロセスをそのままRPAに代行させれば早い」と考えるかもしれませんが、実は余計な時間がかかってしまったりと、さまざまな問題が発生します。このような問題は、「RPAの特性」を理解していないことが原因で発生します。

 

【RPAの特性】
・単純作業(判断を要しない作業)の自動化に優れている
・様々なシステムやツールを横断して実行することができる
・RPAに計算させることも可能だが、開発の難易度が上がる
・条件分岐をRPAに含ませることも可能だが、開発の難易度が上がる

 

これらの特性を踏まえたうえで、RPA化する業務をもう一度見直してみてください。「簡単そうな業務」をそのままRPA化しようと試みても、以下のような弊害が必ずと言っていいほど発生します。

 

・担当者の判断が意外と多く含まれており、自動化できる範囲が少なかった
・計算式のパターンが意外と多く、想定以上の開発工数がかかってしまった
・条件分岐が思った以上に複雑で、予定を大きく上回る工数を費やしてしまった

 

簡単そうな業務でも、1つ1つのプロセスを紐解いていくと、意外と人の判断や条件分岐、計算パターンが多かったという事例が多く存在します。このような事態に陥らないためにも、作業プロセスを見える化し、人の判断、条件分岐、計算パターンを簡素化する(=業務をRPAに合わせて調整する)といった対応が必要になるのです。多少面倒な対応ではありますが、これを疎かにするとRPAの効果は半減してしまいますので、注意が必要です。

 

 

人の判断が多く含まれている場合の対処法

RPAを開発する際、最初に業務担当者から作業の詳細なプロセスをヒアリングし、その内容を基にRPAを開発していきますが、「予想以上に人の判断が多い」場合、どのような対応が必要となるのでしょうか。対象業務を変更するという選択肢もありますが、その前に作業プロセスの組み替えを検討したほうが良いです。例えば、以下のような入力作業のプロセスがあるとします。

 

1.取引先からメールで注文書を受領
2.注文書からシステム入力に必要な情報を抽出
3.システムに入力
4.足りない情報を取引先に確認
5.システムに追加情報を入力

 

上記では、2と4に人の判断が入っています。このままの状態でRPA化を行うと、1でRPAを実行、2で担当者が判断、3でRPAを実行、4で担当者が判断、5でRPAを実行と、自動化できる範囲が細切れになってしまいます。これでは、業務担当者は多少楽になるかもしれませんが、RPAの効果は半減です。このような場合、人の判断が必要なプロセス(2と4)をできる限り纏めてあげることで、細切れの状態は解消されます。また、判断が必要なプロセスを、業務の一番初めか最後のいずれかに調整すると、判断→自動処理(完了)、または自動処理→判断(完了)と2ステップで済みます。
このように、作業手順を少し見直すだけで、RPAで自動化できる範囲が広がり、担当者の判断が必要な業務を集約することができますので、RPAの効果をより得やすくなります。

 

 

条件分岐が複雑な場合の対処方法

通常のシステム開発と同様に、条件分岐が複雑な場合、RPAの開発も相応に時間がかかります。条件分岐をいかに単純にできるかによって開発時間は大きく変わります。条件分岐は、業務のバラつきに比例して多くなります。したがって、業務のバラつきを無くす(=標準化する)ことが、条件分岐を少なくするコツになります。
それでは、事例をもとに対応方法を見ていきましょう。

 

①件名や差出人などをもとに業務に関係するメールを探す
メールに添付されているファイルを使ってシステムに入力するといった、メールが業務の起点となるケースが多く存在します。対象となるメールを探す際、担当者は過去の経験から簡単に見つけることができますが、RPAに代行させようとすると、「過去の経験」を全て条件分岐として設定しなければなりません。この「過去の経験」ですが、条件分岐で整理してみると意外と多かったりします。これをそのままRPAで開発するのは、得策ではありません。なぜなら、簡単な対策で条件分岐を少なくすることができるからです。
「メールを探す」という行為自体を無くしてしまえばよいのです。RPAの作業用に新しいメールアドレスを作ったり、件名に必ず特定のキーワードを入れるなどすれば、条件分岐は1-2個で済みます。

 

②作業に必要なファイルをファイル名やフォルダ名から探す
保存した場所を覚えていれば、作業に必要なファイルを探すことは簡単ですが、RPAはそのような記憶を持っている訳ではありません。ファイルを特定するための条件を正確に設定しなければ、RPAは作業ができません。このような場合、先ほどのメールと同様に、条件分岐を無くしてしまえば簡単に解決します。
例えば、ファイルサーバーに業務専用のフォルダを作成し、業務に関係するファイルのみを格納するといったやり方にすれば、条件分岐は限りなく少なく済みます。

 

③他の担当者から受領するデータを加工し、所定のフォーマットに合わせる
他の担当者から送付されてくるデータ(例えばExcelファイル)は、人によってバラつきがでます。例えば、人によってフォーマット(形式)や項目の順番、表示形式(3桁区切りのカンマを入れる、入れない)が異なったりと、例を挙げたらきりがありません。このような場合、「入力用のフォーマット」を作成し、各担当者に所定のフォーマットで入力してもらうという対策が効果的です。RPAを開発する際、最初に「フォーマットのチェック」を入れ、フォーマットが正しくない場合は、担当者にメールを返信する、正しい場合は作業を始めるとすると、限りなく人の手は少なくなります。

 

①~③までの対応策は、さほど時間のかかるものではありません。RPAを開発する際は、是非これらの点に注意してください。

 

 

計算式のパターンが多いまたは複雑な場合の対処方法

計算式のパターンが多かったり、計算式が複雑な場合、RPAで開発しようとすると多くの時間がかかります。このような場合、無理にRPAで対応する必要はありません。最初にRPAの特徴としてお話ししましたが、RPAは様々なシステムやツールを横断して実行することができます。したがって、『計算』ということであれば、RPAではなく『計算に特化したツール』であるExcelを使えばよいのです。また、Excelは計算だけでなく、条件判定も関数を使えば簡単に設定することができます。AとBの数字が一致しているかをチェックするような作業であれば、IF文を使えばExcelですぐに作成することができます。
このように、RPAで無理に全ての作業を自動化するよりは、その作業に適したツールを使った方が、開発は劇的に簡単になります。また、このようなツールは、他の業務でも使いまわしができますので、まずはどのようなツールがあるのかをチェックし、RPAの開発に取り組む方が良いでしょう。

 

 

RPAの開発工数を少なくし、効果を最大限に享受するには・・・

RPAの開発工数は、ちょっとした工夫で劇的に削減することができます。先ほどお伝えした通り、人の判断を一か所に寄せる、条件分岐をできる限りシンプルにする、特定の作業に特化したツールを組み込むといった対応を行うだけで、開発工数が減るばかりでなく、自動化できる作業範囲も広がります。
RPAの開発に時間がかかると、その分RPAの効果を受けるまでの時間が延びてしまいます。したがって、業務をシンプルにして、いかに少ない時間で開発するかという点が、RPAの効果を最大限に享受する最大のポイントになるのです。

 

 

まとめ

現状の業務をそのままRPA化することの問題点
簡単そうな業務でも、1つ1つのプロセスを紐解いていくと、意外と人の判断や条件分岐、計算パターンが多く、開発工数の増加、自動化範囲の縮小といった弊害をもたらす。
人の判断が多く含まれている場合の対処法
業務プロセス中に発生する「人の判断」はできる限り集約させるように業務プロセスを変更する。人の判断は、業務プロセスの最初または最後に配置すると自動化の効果が高まる。
条件分岐が複雑な場合の対処方法
RPA専用のメールアドレスを作成する、業務専用のフォルダをファイルサーバー内に配置するといった条件分岐の必要がないプロセスに変更する。フォーマットなどもできる限り統一すると効果的である。
計算式のパターンが多いまたは複雑な場合の対処方法
RPAはシステムやツールを横断して実行することができるため、計算に特化したツール(例:Excel)を組み込み、開発時間を短縮する。

 

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