RPAロボット開発事例~業務プロセス毎にロボットをパーツ化する~

2019年07月18日

 

数年の間にRPAという言葉は広く浸透し、IT企業や情報システム部門以外の人でも一度は耳にしたことのある存在となっています。
既にRPAを導入している企業では、「AI」や「OCR」との連携の検討を進めていたり、またそのようなサービスを提供しているベンダーも現れています。
逆に、まだRPAを導入していない企業や中小企業にとっては、このような社会の流れがRPA導入への足枷にもなっているのではないでしょうか。
2018年時点でのRPA市場は約90億円でしたが、2022年度には約400億円規模のマーケットになるとの予想もされています。
ほんの少し前はスマートフォンが画期的なツールとして世に発表されましたが、今となっては当然の存在となり、使用することに誰も躊躇いを持っていないでしょう。
それと同じように数年後にはRPAも企業にとって当たり前の存在になるのではないでしょうか。
今回はRPAロボットの開発に際して、これまでとは少し異なった視点での開発方法をご紹介します。

 


一般的なRPAロボットの開発手法

RPA導入の決定から実際に稼働するまでは、大きく以下のプロセスに沿って進めていくことが多いです。
ロボット化対象業務の特定⇒要件定義⇒ロボットの開発⇒導入⇒テスト⇒運用体制の構築⇒運用ルールの策定
どのフェーズも重要であり、どこか1つのトラブルや遅延の発生で、プロジェクトの破綻や導入の失敗に直結する可能性があります。
仮に上述のようなプロセスで導入を進めた場合、RPAツール本体の登場は「ロボットの開発」からとなります。
ベンダー選定のフェーズや要件定義のフェーズで、RPAの特徴や性能などを把握し、最適なRPA製品を選んでいても、ロボットを開発することができなければプロジェクトは失敗に終わります。
その点から考えても「ロボットの開発」はとても重要なフェーズと言えるでしょう。
この「ロボットの開発」は一般的にはどのような方法があるのでしょうか。
「ロボットの開発」には主に「コーティングベース開発」「GUIベース開発」の2種類があると言われています。
「コーティングベース開発」とは、簡単に言うとプログラムを使った開発手法となります。
JavaやC言語等の開発言語を利用し、自動化するためのプログラムを組んでいく必要があり、ソフトウェア開発経験がないと難易度は高いとされています。
一方で「GUIベース開発」は画面の操作を記憶させながら開発する方法となります。
「GUI」とは「グラフィカル ユーザーインターフェイス」のことで、画面上でのマウス操作等をオブジェクトへの操作と置き換えます。
オブジェクトの配置を覚え、RPAツール内で既に定義されている処理を組合わせて、ロボットを開発していく方法となります。
「GUIベース開発」は基本的にはマウスとクリック操作のみで開発できますので、前者のようなソフトウェアの開発経験等は不要であることが特徴として挙げられます。

 

RPAロボットの開発において懸念され始めていること

最近、RPAロボットの開発は「プログラミングスキル不要」、「短期間での開発が可能」といったキャッチフレーズを聞くことが増えてきたと思います。
これには前項で述べた「GUIベース開発」のRPA製品の人気が高まっている背景があります。
GUIベース開発のRPA製品では、開発言語のプログラミング経験は不要です。
つまり、システム開発の経験者や情報システム部門に所属する者以外でも、容易に開発できるかもしれません。
これは最近のRPA製品の大きな長所とも言える一方で、短所とも捉えることができます。
本来であれば、社内システムを管理するべき情報システム部門の知らないところで、いつの間にか現場部門によってRPAロボットが開発され、業務に使用されてしまう可能性があります。
これは「野良ロボット」と呼ばれ、多くの導入企業で懸念され始めています。いわゆる管理者が存在しない、管理ができていないロボットのことを指します。保守管理が行き届いていないロボットということです。
情報システム部からすれば、同じようなロボットが様々な場所で開発されていることで、RPA拡大時の障害ともなり得ます。
また同様の処理をするロボットが2体存在していたら、無駄な開発工数がかかっていることにもなります。
更には低品質ロボットによる業務代行が行われ、金額が異なる、抽出データが異なる等の実業務上でのトラブルを招く可能性もあります。
本来であれば人間に代わり業務を行うことで、効率化や生産性の向上に繋がるはずのRPAロボットが、生産性を低下させるロボットに変わりかねない危険性があるということです。

 

RPAにおけるロボットのパーツ化とは何か

前項で記載した、不要な開発工数や低品質ロボットの発生を防ぐ方法として、RPAロボットのパーツ化があります。
パーツ化とは業務の工程ごとに、その工程を専門に実行するロボットを開発することを指します。
RPAでは一連の業務を一体のロボットで実行するのが通例となってきているため、馴染みのないフレーズだと思います。
例えば「ある会計システムにログインし、検索条件にあった請求書を印刷する」というロボットを開発するとします。
その場合、工程としては以下に分けられます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1.会計システムにログインする
2.トップメニューを選択する
3.サブメニューを選択する
4.検索条件を入力する
5.請求書を印刷する
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
通例であればこの1から5までの操作は1台のロボットで実行させますが、
パーツ化では工程ごとのロボットを開発し、計5台のロボットを使い一連の業務を実行させます。
一見、違和感があるかもしれませんが、製造業などで行われている分業システムと同じ考え方となります。
例えばお弁当製造工場をイメージしてください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1.空のお弁当箱を並べる人
2.お弁当箱に白米を詰める人
3.おかずを詰める人
4.蓋をしていく人
5.包装する人
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
工場内では中心にベルトコンベヤーのようなものがあり、工程ごとに担当する人が分かれ、お弁当が流れ作業で製造されていきます。
そして工程ごとに技術を極めている熟練の担当者が存在しているはずです。
RPAのツール化も同じ様な仕組みとなります。各ロボットを連結させ一つの業務を完結させます。
ここで言う技術を極めるということを、RPAのツール化においては「ロボット品質の向上」と置き換えることができます。

 

RPAロボットをパーツ化するメリット

ロボットのパーツ化によって、多くのメリットが享受できます。

 

・保守効率の向上
パーツごとにロボットがあるため、社内全体でのロボット数が可視化されます。
それにより無駄なロボット管理が無くなり、保守効率の向上に繋がります。

 

・RPAロボットの開発工数削減
パーツごと開発していることで、ロボットのコピー(再利用)が容易にできます。
新たに別の業務工程に対しロボット開発を行う場合に、ゼロから開発を行う必要がないため、開発工数、導入工数の削減が見込めます。

 

・ロボット自体の品質向上
先ほど食品製造業の例を示したように、多くの工程の中の一部のパーツとしてロボットが利用される回数が増えていくと、ロボットの品質の向上に繋がります。
改修を重ねることでロボットのレベルがあがっていきます。

 

・RPAの拡大/展開の効率化
品質が高まったロボットを他部門やグループ会社へ提供することで効率の良い拡大/展開が可能となります。
難易度から導入を躊躇っている部門や会社がある場合には、そのハードルを下げることができるかもしれません。
導入期間の短縮により、導入コストの削減にも繋がります。

 

以上のようにパーツ化によって多くのメリットを享受することができます。
GUIを特徴としているRPA製品が普及し始めているため、ロボット開発自体は容易にはなっています。
しかし開発の容易さが、将来のRPA拡大を阻害したり、自動化した業務でのトラブルを招いたりする可能性もあります。
RPAの導入を本当の意味での成功とするためにも、「パーツ化」を検討・実践してみてはいかがでしょうか。

 

 

まとめ

・一般的なRPAロボットの開発手法
☑「コーティングベース開発」と「GUIベース開発」の大きく2種類ある。
・RPAロボットの開発において懸念され始めていること
☑GUIベースの開発手法で、開発難易度が下がっている製品が普及している。
☑開発が容易になり、管理がされていない「野良ロボット」の発生が危惧されている。
・野良ロボットがもたらすリスク
☑いたるところで類似ロボットが存在し、連携や追加開発、拡大にコストがかかる。
☑低品質ロボットによる業務の自動化で不正データ(金額/日付の不一致等)の発生に繋がる可能性がある。
・RPAにおけるロボットのパーツ化とは何か
☑一連の業務を一体のロボットのみで実行させないこと。
☑工程ごとにロボットを開発し、連携させること。
・RPAロボットをパーツ化するメリット
1.保守効率の向上
2.RPAロボットの開発工数削減
3.ロボット自体の品質向上
4.RPAの拡大/展開の効率化

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