IPOで求められる内部監査部門の設置~立ち上げの流れとポイント

2019年09月26日

 

直近の5年程は、年に90社前後の会社が上場を果たしております。
そして、このブログをご覧の方にも数年後上場したいという会社様もあると思います。
上場のためにはいくつかの壁がありますが、その中に「内部監査部門」の設置があります。
非上場企業においては内部監査部門がない会社もあり「内部監査部門を立ち上げるように指示が出ているが何から手を付けていいかわからない」という方がほとんどではないでしょうか?
そこで今回は「これからIPOを目指す会社のIPOご担当者向け」に内部監査部門の立ち上げの流れとポイントについて解説いたします。

 


IPOにおける内部監査部門の役割

上場審査上「内部監査機能の設置」が求められています。
上場企業では内部監査部門が設置されていることは常識になってきていますが、10年前より確実に重点が置かれています。それではなぜIPOをすることに対して内部監査部門の設置が求められるのでしょうか?
それは、コーポレートガバナンスの強化が求められているからですが、強化が求められている理由は以下の2つです。

 

①一般的に上場企業になると投資家や個人株主が増えるため、外部から内部の適切な管理体制について上場企業として求められるという点
②近年の特に上場企業の不祥事が増加している為

 

ニュースを見ると東証一部上場企業で誰もが知っている会社でも不祥事が発生しており、社会的にも上場企業への信頼性が低下していると見る方も増えてきています。
そこで、コーポレートガバナンスの強化の一翼を担う内部監査部門の設置が義務付けられているのです。
内部監査部門は「十分な管理組織が整備、運用されているかどうか、事故、不正、誤謬をある程度未然に防止し、不測の損失を防ぐなど適切な対応ができる状況にあるかどうかをチェックする」のが役割です。
もちろん、内部監査部門を設置し運用すればすべての不祥事や事故が防げるわけではありませんが、未然に発見したり、発生を抑える抑止力として効果があるため設置が上場審査上、義務化されているのです。

 

内部監査部門の立ち上げスケジュール

では初めに内部監査部門の立ち上げスケジュールを見てみましょう。

 

①3期前~2期前…内部監査部門の設置(規程の制定・部門新設・人員配置)
・「内部監査規程」の制定
まず内部監査の設置根拠である「内部監査規程」を作成し、取締役会で承認を受け正式な規程にします。
規程についてはインターネットで検索すればサンプルが出てきますが、できれば内部監査の国際基準である「専門職的実施の国際フレームワーク」(IPPF)を参考に作ることが望ましいです。
しかしながら、はじめのうちは現実的な内容とし、上場までに何度か見直してください。
・部門の設置
新規部門の設置となりますので、会社によりますが、組織規程や業務分掌規程等の変更が必要です。
そして、どこに属すかも重要になってきます。
ある調査によると内部監査部門の8割は社長直下に配置しているようです。それ以外は監査役会や取締役会の配下に配置されるようです。社長直下にすると当然社長の不祥事等に対しては指摘することはできないため、監査役会等の独立した監視組織の配下が望ましいですが、IPOを目指している時期は難しいのでまずは社長直下で配置し今後の検討事項にしましょう。
・人員配置
恐らくまず1つ目の高いハードルとなります。
社内に内部監査を経験したことのある人がいればいいですが、経験者はいないことがほとんどです。
そこで、中途採用やアウトソーシング等の検討が必要となることが多いです。
※次で詳しく解説いたします。

 

②直前期~申請期…年間を通じて監査を実施する(計画→監査→改善指示→フォローアップ)
いよいよ内部監査を実施することとなります。
遅くとも申請期の1年以上前から運用され、全ての部署を対象に行なわれていなければなりません。
上場審査では内部監査の状況およびその結果を『登録申請のための報告書(Ⅱの部)』に記載することが必要となります。
監査の計画から監査の結果、フォローアップの結果まですべて記載する必要があります。
設置だけではなく運用まで確認されますので早めに①の準備をすることが求められます。

 

内部監査人の社内の異動か採用またはアウトソーシング等の検討

次に人員配置の方法を説明します。方法としては主に4つあります。4つの方法を説明いたします。
①社内の異動
一番初めに検討することだと思いますが一番難しい方法です。
経験者はまず社内にいることは可能性として低く、IPOの準備中の会社は基本的に人員に余裕もありません。
そして、監査としては独立性の観点から、それまで従事していた業務は2年は監査できないルールになっています。
また、内部監査を行うためには会社のことを理解し、一定以上の水準の業務への理解度が求められ、幅広い豊富な知識が必要です。IPOを目指している会社だとそのような人材は少ないと思います。
よって、社内の人事異動による人員配置は困難です。

 

②中途採用
内部監査を経験したことのある方は日本に何人いるかはわかりませんが、内部監査部門は基本上場企業に設置されております。日本の上場企業は約3,700社しかありません。
また近年、上場していなくても内部監査部門を設置している会社も増えてきていますが、規模の大きな企業がほとんどと思われます。
そのため、転職市場には内部監査部門経験者の絶対数が少ないのが現状です。
もちろん、募集年収が高ければ経験者が集まりますが、IPOを目指す会社であるとそこまで年収は出せないのが現実です。このように中途採用で内部監査の経験者を採用するのも難しいのが現実です。

 

③アウトソーシング
「内部監査をアウトソーシング??」と思われる方もいると思いますが、監査という意味ではより客観的な監査となり社内のメンバーが実施するより社外から指摘するほうが有効であるといえます。もっと言うと社内の人間ではないため何もしがらみがないため指摘しやすいと言えます。そして中途の経験者を採用してもミスマッチで退職する可能性もありますし採用人数が一人であることも多く、採用人数が少ないと採用された方の経験に依存してしまいます。
監査品質が高ければいいですが、低い場合も考えられます。そこで内部監査のアウトソーシング会社を利用することにより一定以上の監査品質で監査を行うことが可能となります。
このような理由から①②が難しいようであれば検討すべきです。

 

④コソーシング
最後の方法としてコソーシングという考えもあります。
コソーシングとは簡単に言うと外部業者と社内の内部監査担当者が共同で作業を行うことです。
会社側に人員の用意は必要ですが、経験が少ない内部監査担当者との共同作業を通じて、内部監査手法や監査技術を学ぶことができ時間・コストの節約や、社内の人材育成などを目的として利用でき会社にノウハウを残すことが可能です。
①との併用にはなりますが、有効的な方法のひとつです。

 

 

上場審査で内部監査部門に求められること

①内部監査部門の設置と内部監査の実施
上場審査で求められることは、上記通り規程の作成、組織とは独立したメンバーが内部監査部門に配置されており、兼務状態ではないということです。
たとえば、経理や総務で業務をしているメンバーが内部監査を兼任していると経理や総務を監査できないということになります。
そして、監査計画書、監査調書、監査報告書、改善指示書等の文書が作成され承認されている状態、つまり会社として正式文書にしておく必要があります。
また、拠点が複数ある場合はすべての拠点について監査が必要です。このすべての拠点を監査するということについては強く求められますので、拠点が多い会社については内部監査人の人員数の確保、アウトソーシングの検討、スケジュールの作成等を早めに行い内部監査を実施する必要があります。

 

②内部統制評価の実施→経営管理体制の整備・運用の確認
内部監査に加え、内部統制評価の対応を内部監査部門が行うことが多くあります。
内部統制評価の詳細は割愛しますが、人と時間を割く必要があります。
内部統制評価については現在、新興企業の新規上場を促すことを目的として、一部を除き、新規上場会社は上場後の3年間内部統制報告書の提出は引き続き求められますが、公認会計士による監査の免除を選択することが可能です。
ただし、誤解されている方も多いのですが、(経営者が行う)内部統制評価自体の免除ではありません。
上場後の決算までに内部統制評価を実施し「内部統制報告書」を「有価証券報告書」と一緒に内閣総理大臣あてに提出しなければなりません。
例えば3月決算の会社で3月に上場したとしたら、6月には「内部統制報告書」の提出が必要となります。
上記の通り、内部統制監査は免除されるため、監査対応は少ないですが、上場時期を見越して内部統制構築・評価について実施していかなければなりません。
内部統制評価の対応は評価チームを立ち上げるか、独立部門である内部監査部門が対応することが多いので
内部統制評価のスケジュールについても考慮しなければなりません。

 

内部統制評価について記載しましたが、上場審査時は「経営管理体制の整備・運用状況」の説明が求められます。
マザーズの新規上場ガイドブックには「主要な製・商品及びサービスについて、仕入から販売に至るまでの
主な事務の流れについて説明してください。」とあります。この説明の際はフローチャート等の作成が求められますが、内部統制評価の資料を流用してもよいことになっています。すべてカバーできるわけではありませんが、内部統制評価と上場審査対応が同時にでき作業の軽減になります。

 

社内管理体制の構築

ここまで、内部監査部門についての設置や人員配置について見てきましたが、内部監査部門の立ち上げより前に「社内管理体制」の構築をする必要があります。
そもそも、内部監査を実施することが目的ではなく、内部監査を実施して「社内管理体制」を確認するために内部監査部門が必要ですので、監査する前に社内管理体制に色々問題があり、内部監査での指摘がたくさんあると当然審査は通りません。
管理レベルは会社によって違いますが、非上場の会社は管理レベルが十分ではない会社が少なくないのではないかと思います。それを上場企業の管理レベルにすることは大変時間がかかることです。
よって、さきほど内部監査部門の立ち上げのスケジュールを記載しましたが、内部監査部門の立ち上げスケジュールも含めて、社内管理体制の構築と運用のスケジュールも考慮しながら対応していかなければ、内部監査部門を運用しても、社内管理体制の指摘が多く上場審査が通らないということにもなりかねません。

 

以下は上場までに目指すべき社内管理体制です。
この体制を構築し、内部監査部門が監査することになります。

 

①日常業務に内部牽制機能を持たせることにより、不正やミスが生じない体制を構築する。
②上場企業として必要な情報開示を適時(タイムリー)に適切(正確)に行える体制を構築する。
③継続企業として、特定の役員等に依存することなく、継続して存続できる組織体制を構築する。

 

具体的には

・社内規程の整備・運用 ・関連当事者取引の有無
・取締役会の適切な運営 ・組織体制の整備状況
・予算実績管理体制 ・関係会社の管理状況
・経理部門と財務部門の分離 等

 

見ていただいてわかると思いますが、一朝一夕でできない内容も多いため「内部監査部門の立ち上げ」と一緒に「社内管理体制」の構築についても考慮してスケジュールを組むことをお勧めします。

 

 

まとめ

①IPOにおける内部監査部門の役割
内部監査部門は「十分な管理組織が整備、運用されているかどうか、事故、不正、誤謬をある程度未然に防止し、不測の損失を防ぐなど適切な対応ができる状況にあるかどうかをチェックする」のが役割である。
内部監査はコーポレートガバナンスの強化の一翼を担っている。

 

②内部監査部門の立ち上げスケジュール
・3期前~2期前…内部監査部門の設置(規程の制定・部門新設・人員配置)
・直前期~申請期…年間を通じて監査を実施する(計画→監査→改善指示→フォローアップ)

 

③内部監査人の社内の異動か採用またはアウトソーシング等の検討
社内の異動は難しく、中途採用も監査品質がその人に依存してしまう可能性があるためアウトソーシングやコソーシングも検討したほうが良い場合がある。

 

④上場審査で内部監査部門に求められる事
・全拠点への内部監査を実施し、監査報告書の作成やフォローアップ監査まで実施する。
・上場すると内部統制評価が必要になるため、内部監査部門が評価を実施することが多く時間が割かれるが内部統制評価の資料が、上場審査で流用できる。

 

⑤社内管理体制の構築
・上場するためには、「社内管理体制」の構築が必要であり、内部監査して「社内管理体制」の指摘が少ない状態にしなければならない。
「社内管理体制」の構築は時間がかかるため「内部監査部門の立ち上げ」と一緒に計画的に進めなければならない。

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