最低限おさえておきたい~連結キャッシュ・フロー計算書の基礎知識

2020年01月16日

 

連結キャッシュ・フロー計算書は、1会計期間におけるキャッシュ・フロー(資金の増減)の状況を利害関係者に報告するために作成される財務諸表です。連結キャッシュ・フロー計算書は、連結財務諸表の1つではありますが、連結貸借対照表や連結損益計算書といった他の連結財務諸表とは作成方法が異なります。
連結キャッシュ・フロー計算書は、他の連結財務諸表のように連結仕訳を積み上げて作成するわけではないからです。
そんな特殊性もあり、上場企業の経理担当者の中でも作成できる方は非常に少ないのが実情ではないでしょうか。
今回は細かい論点の説明を省略し、連結キャッシュ・フロー計算書に関する基本的な内容をお伝えします。


 

連結キャッシュ・フロー計算書の作成目的

まずは、なぜ連結キャッシュ・フロー計算書が必要となったのか、その作成目的についてお話しします。
連結キャッシュ・フロー計算書は、2000年3月期から金融商品取引法で開示が義務付けられるようになりましたが、第1四半期及び第3四半期においては、作成を省略することが認められています。ただし、第2四半期においては、第2四半期連結累計期間に係る連結キャッシュ・フロー計算書を開示しなければなりません。
同計算書の作成が必要となった理由は、損益計算書がキャッシュ・フローから離れてしまったためです。
損益計算書は、1会計期間の経営成績を測定するために発生主義に基づいて作成されますが、期間損益を適正に計算することを重視しているうちに、キャッシュ・フローからどんどん離れていき、キャッシュ・フロー情報を読み取ることが難しくなってしまいました。利益の計上は必ずしもキャッシュの増加につながるわけではないので、損益計算書上は利益が出ているのに手元の資金がなくなり黒字倒産する会社も多数あります。
このような背景から、キャッシュ・フロー情報に特化した財務諸表である連結キャッシュ・フロー計算書が必要となったのです。

 

連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法

次に連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法についてお伝えします。
連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には、「原則法」と「簡便法」の2つの方法があり、会社はどちらの方法を採用してもよいことになっています。
「原則法」とは、親会社及び子会社の個別キャッシュ・フロー計算書を単純合算し、連結会社相互間におけるキャッシュ・フローに係る内部取引を相殺して連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法です。
これに対して「簡便法」とは、個別キャッシュ・フロー計算書は作成せず、連結貸借対照表の前期末残高と当期末残高の差額、当期の連結損益計算書や当期の連結ベースでの各勘定科目の増減明細などをもとに連結キャッシュ・フロー計算書を作成する方法です。
「原則法」は、親会社及び子会社がそれぞれ個別キャッシュ・フロー計算書を作成しなければならず、連結会社相互間のキャッシュ・フロー取引の相殺が煩雑になることから、実務上は「簡便法」を採用する会社が多いのではないかと思われます。

 

連結キャッシュ・フロー計算書の表示方法

次は連結キャッシュ・フロー計算書の表示方法についてお話しします。
上の図のとおり、連結キャッシュ・フロー計算書の表示方法としては、「直接法」と「間接法」という2つの方法があります。
両者の違いは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法であり、いずれの方法を採用しても「投資活動によるキャッシュ・フロー」と「財務活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法に違いはありません。
「直接法」は、営業収入、原材料または商品の仕入支出、人件費支出並びにその他の営業支出と主要な取引ごとに連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを総額で表示する方法です。
一方の「間接法」は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益をスタートとして、減価償却費などのキャッシュの増減を伴わない非資金損益項目、営業活動に直接関係する資産(売掛金やたな卸資産など)・負債(買掛金など)の増減額などを調整して、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを表示する方法です。
「直接法」は主要な取引ごとに資金の出入りを表示するため、キャッシュ・フローの状況を読み取りやすいという長所がある反面、作成するのに大変手間がかかるという短所があります。
「間接法」は連結損益計算書の税金等調整前当期純利益を起点として、非資金損益項目や営業活動に直結する資産・負債の増減額などを加減算してキャッシュ・フローの状況を間接的に表示することから、資金の出入りに関する情報が分かりにくいという欠点がありますが、連結貸借対照表や連結損益計算書などに基づいて比較的容易に作成できるという利点があります。
そのため、ほとんどの会社は「間接法」を用いて連結キャッシュ・フロー計算書における「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示を行っています。

 

連結キャッシュ・フロー計算書の仕組み

続いて連結キャッシュ・フロー計算書の仕組みについてお伝えします。
連結キャッシュ・フロー計算書は、企業の活動を「営業活動」・「投資活動」・「財務活動」の3つに分けて作成します。
これらの活動から得られるキャッシュ・フローのことを、それぞれ「営業活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」、「財務活動によるキャッシュ・フロー」といいます。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分では、商品の販売による収入や商品の仕入れによる支出といった本業から生じる資金の増減額を表示します。この区分では、法人税等の支払額といった投資活動と財務活動のいずれにも分類できない項目も記載されます。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分では、固定資産・株式などの取得による支出や売却による収入などから生じる資金の増減額を表示します。この区分からは会社が将来のためにどのくらいお金を使ったかを読み取ることができます。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分では、借入れによる収入や借入金の返済による支出といった資金の調達や返済による資金の増減額を表示します。
ここで、連結キャッシュ・フロー計算書に記載されている情報を読み取るうえでの注意点があります。
同計算書に記載されているすべての活動でキャッシュがプラスになっていれば優良企業だというわけでもありません。
一般的には、成熟期に入った企業は営業活動によるキャッシュ・フローが黒字、投資活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローが赤字というパターンが多いと言われています。本業が好調でキャッシュが増え、将来の利益につながる設備投資などが積極的に行われ、余剰資金が借入金の返済や株主への配当金の支払いなどに充てられるからです。
連結キャッシュ・フロー計算書における営業活動・投資活動・財務活動のキャッシュ・フローの赤字と黒字のパターンについては、表面的に眺めるだけでなく、前年からの変化や中身などについて総合的な視点から分析する必要があるかと思います。

 

 

 

連結会計の中でも連結キャッシュ・フロー計算書の作成業務においては、固有の知識やスキルが必要となり、担当者への引継ぎがしづらく作業が属人化しやすいといった特徴があります。
しかし、経理担当者が連結キャッシュ・フロー計算書の基本を学習するとともに、業務を細分化し作業の難易度に応じて、経理部内にて役割を分担するといった工夫によって、属人化を防ぐことができると考えます。
本ブログを連結キャッシュ・フロー計算書に関する基本の理解に役立てていただきたいと思います。

 

 

まとめ

■連結キャッシュ・フロー計算書の作成目的
損益計算書がキャッシュ・フローから離れてしまったことで、キャッシュ・フロー情報を読み取るのが難しくなり、黒字倒産する会社が多数発生したため、キャッシュ・フロー情報に特化した財務諸表が必要となった。
■連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法
連結キャッシュ・フロー計算書の作成方法には、「原則法」と「簡便法」の2つの方法があり、会社はどちらの方法を採用してもよいことになっている。
■連結キャッシュ・フロー計算書の表示方法
連結キャッシュ・フロー計算書における「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に係る表示方法としては、「直接法」と「間接法」の2通りあり、ほとんどの会社は「間接法」を採用している。
■連結キャッシュ・フロー計算書の仕組み
連結キャッシュ・フロー計算書は、企業の活動を「営業活動」・「投資活動」・「財務活動」の3つに分けて作成する。

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