海外監査における予備調査と監査計画~予備調査により海外監査が分かる~

2017年11月30日

 

企業の海外進出が加速する中、米国・欧州・ASEAN・中国等の海外支社や海外子会社への監査対応・管理強化が急務となっています。
企業の不正・不祥事に関連したニュースを見ると、海外子会社が関係していることが多く見受けられます。
そこで、内部監査を強化し、海外子会社の管理状況を確認し、改善を促していくことが求められます。
しかし、内部監査部門様においては、人員が不足していることもあり、なかなか海外監査を進められていないのが現状ではないでしょうか。

 

また、どのようにして海外子会社の監査を進めるのが良いのか、不安を感じているご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

今回は、海外監査について触れていきます。
その中でも、予備調査から監査計画の策定について見ていきたいと思います。

 


海外監査対応における実状

海外子会社の監査において、このような実状となっている企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

・海外子会社の監査は、3~5年のローテーションでの実施となっている

 

物理的に距離が離れているということもあり、毎年監査を行うのが難しく、かつ、内部監査部門のリソースが限られているため、海外子会社の監査は数年に1回という頻度となっている企業様も少なくないようです。

 

しかし、3~5年の期間が空いてしまうと、その期間で、担当者の異動や新規事業の創出等、社内外の環境に変化が生じる可能性は高くなります。
そうなると、以前に行った監査から状況が変わり、再度、管理状況の確認を行う必要性があります。
往査は難しくとも、チェックリストを送付する等、定期的に監査を行う必要があります。

 

・リスクアプローチに基づき監査計画を策定しており、規模の小さい海外拠点は対象外としている

 

財務諸表監査の対象とならない重要性の低い事業や拠点から不正等が発生する事例が多いとの調査報告もあります。
管理の目が届きにくいといこともあり、規模の小さい子会社での不正事例は多くあります。
内部監査(業務監査)においては、むしろ重要性の低い事業や拠点の方が要注意であると考えます。

 

海外監査の進め方としては、基本的には、国内拠点の監査と同様、監査計画を策定した上で、監査を実施し、フォローアップを行うといった流れになります。
しかし、海外特有の事情やリスクを踏まえ、対応していく必要はあります。

 

では、どのように海外監査を進めていくのか、その留意点について、見ていきたいと思います。

 

 

 

海外監査における予備調査のポイント

予備調査において、外部環境(商習慣や法制度、政治情勢、海外特有のリスク等)および内部環境(海外子会社の経営方針、体制、規程類等)を調査・分析することになります。
国内の内部監査を行う場合と比べ、国や地域による言語、地理(物理的距離)、政治、文化、宗教、商習慣等の違いに注意する必要があります。

 

国内の内部監査であれば、政治情勢・文化・宗教等を考慮する必要性は低いかと思います。
しかし、海外監査においては、内部監査に関係の無さそうな事項でも、影響が出てくる可能性があります。

 

例えば、政治情勢について、ASEAN等、地域によってはクーデターや国境紛争が起きている状況です。
その場合、往査の実施は難しくなり、チェックリストやweb会議の活用等、監査方法が変わってきます。

 

また、宗教等、一見すると、影響を及ぼさないような事項ですが、イスラム教のラマダン等によって、監査対応ができなくなる時期が出てきます。
監査日程を検討する上で、影響が出てくるため、そういった点も加味する必要があります。

 

予備調査においては、海外子会社の内部・外部に関わる情報を網羅的に調査・分析する必要があります。

 

 

海外監査における予備調査で押さえるべき内容

では、海外監査における予備調査で、どのような点を押さえるべきなのでしょうか。
以下に例を挙げてみたいと思います。

 

・経営環境
政治情勢、治安、商習慣、法制度、宗教、経済情勢、カントリーリスク(自然災害、紛争、テロ等)等
・経営方針
海外子会社の戦略的重要度、現地経営者の方針・経歴・人柄、親会社との関係 等
・組織体制
日本人駐在員の有無、現地監査法人等の利用、契約形態(合弁等)、内部監査部門の有無 等
・規程類
規程や手順書等の有無、チェック・承認方法(海外ではメールで承認するケースもある)等
・過去事例
同業他社の事例、現地海外拠点の事例分析、訴訟問題(米国:雇用差別、PL製造物責任)等
・財務状況
滞留債権の有無、会計基準(IFRS・米国・中国基準)、事業計画(売上の成長度、業績推移)等

 

では、上記事項がどのように監査計画に影響してくるのでしょうか。

 

 

 

海外監査における監査計画のポイント

予備調査の結果を踏まえ、海外監査における重点監査項目・監査対象・監査日程等の監査計画を策定していきます。
監査計画については、5W1Hに基づき、決めていきます。

 

例えば、監査対象について、金額的重要性を分析する中で対象外となるような拠点でも、不正等、国特有のリスクがある拠点があれば、監査対象としての重要性は高くなります。
そうなった場合、不正リスクのある海外子会社を監査対象(What)に含めるべきという判断になります。

 

また、海外子会社においては、成熟度(管理レベル)が低く、規程や業務マニュアルが整備されていないケースもあり、その場合、業務ルールの整備がテーマとなり、かつ、アシュアランス(保証)ではなく、コンサルティング(指導)から対応しなければなりません。

 

監査対象が決まることにより、監査方法(How)も決まってくるはずです。
監査方法は、往査が基本にはありますが、海外子会社の場合、物理的に距離が離れているため、時間や費用を考慮し、CSA(Control Self Assessment)の活用やweb会議の利用も検討する必要があります。

 

監査実施者(Who)について、国内の内部監査部門が主にはなりますが、現地の日本人駐在員の協力や監査役との連携、現地監査法人の活用も考えられます。

 

また、監査対象に合わせて、スケジュールを調整することになり、監査の実施時期(When)もおのずと決まっていきます。
監査対象となる海外子会社の繁閑や国特有の休日(中国の旧正月等)を踏まえ、監査日程を決めていきます。

 

このように、予備調査の結果により、監査計画(重点監査項目・監査対象・監査日程等)が決まっていくことになります。

 

時間や費用の関係もあり、海外監査の対応は効率性が求められます。
一方で、海外子会社の重要性が高まっていることを受け、監査の実効性も問われます。
そこで、関係者へのヒアリング等も含め、十分な時間を取って予備調査を行い、より具体的な監査計画を立案することがポイントになります。

 

 

 

まとめ

海外監査対応における実状
☑海外子会社の監査は、3~5年のローテーションでの実施となっている
→往査は難しくとも、チェックリストを送付する等、定期的に監査を行う必要がある
☑リスクアプローチに基づき監査計画を策定しており、規模の小さい海外拠点は対象外としている
→内部監査(業務監査)においては、むしろ重要性の低い事業や拠点の方が要注意である

 

海外監査における予備調査のポイント
☑国や地域による言語、地理(物理的距離)、政治、文化、宗教、商習慣等の違いにも注意する
☑海外子会社の内部・外部に関わる情報を網羅的に調査・分析する

 

海外監査における監査計画のポイント
☑成熟度(管理レベル)が低く、アシュアランス(保証)ではなく、コンサルティング(指導)から対応する
☑予備調査の結果を踏まえ、監査計画(重点監査項目・監査対象・監査日程等)を決めていく
☑監査方法について、往査以外の方法(チェックリストやCSA、web会議等)も視野に入れる

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