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J-SOX海外対応!~海外拠点における全社統制の構築・評価のポイント~

2019年02月07日

 

会社法上一般的な会社にはすでに内部統制の大半はあるので、金融商品取引法の内部統制(以下J-SOX)の中で会社全体の統制を包括的に見る全社統制は、他のIT全般統制等と比較してハードルが低いといわれています。しかし海外拠点となると話は別で全社統制には海外の気風や事情等を考慮した特有の構築、評価が必要となり、国内と比較とすると難易度が上がります。そのような中、今回は海外拠点のJ-SOXのうち、全社統制にフォーカスして構築や評価のポイントをお伝えします。

 


全社統制の構築および評価とは

海外拠点の全社統制の話に入る前に、まずは全社統制の構築や評価とは何か?について説明します。
全社統制とは、会社全体を包括するルールや仕組みのことで、例えば、行動規範、職務分掌、教育研修制度の整備、IT方針等が該当します。
全社統制のルールは、会社全体を傘をさして防ぐようなものとイメージすると良いと思います。
全社統制の構築とは、これらのルールや仕組みを作ることです。
そしてJ-SOXではルールや仕組みを構築するだけではなく、評価を行うのが特徴です。
評価とは、ルールや仕組みを第三者がチェックすることで、以下2種類あります。
①整備状況評価
ルールや仕組みが存在するか規程等で確認すること
②運用状況評価
ルールや仕組みに沿って業務を行っているか証拠(証憑)を取って確認すること

 

この概念は海外J-SOXでも変わらず、押さえておきたい基本的な内容となります。
概念の話の補足として、全社統制は、統制環境、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応と大きく5つの切り口があります。今回は特に海外特有のポイントがある情報と伝達、統制活動、情報と伝達に絞ってお話しします。

海外拠点における全社統制(統制環境)の構築ポイント

初めは、海外拠点における全社統制(統制環境)の構築ポイントをお伝えします。
統制環境は、社風等、会社の全従業員に対する意識に影響を与え、全社統制の切り口の中では基盤のような役割を果たします。
土台がしっかりしていないと家が崩れやすくなるように、統制環境の構築は特に重要と言えるでしょう。

 

海外拠点の統制環境では、以下のポイントを押さえて構築することをお勧めしたいです。
[①] 倫理観を明確に記載した文書を作成する。
行動規範(Code of Conduct)を明確に定める必要があります。海外拠点では同一の会社内に宗教等も異なる多人種の人が働いており価値観も様々です。
よって日本以上に規律を明確に定め、一般的には従業員ハンドブック(Employees Handbook)というものを作成し、行動規範を含めた会社のルールを盛り込んでいます。

 

[②]  倫理観に対する周知や教育を行う。
倫理観を定めた文書を作成するだけではなく、従業員に理解させることも大切です。
周知という点では、新入社員は入社時従業員ハンドブックを読み、理解したという証跡としてサインした資料を会社へ提出します。国内では倫理観を定めた規程を社内イントラネットに掲載して周知とみなすことが良くありますが、海外では従業員へサインを求める等徹底しているところが特徴です。
教育という点では、既存社員に対して年に1回サインを求める会社やe-ラーニングを導入し倫理観の研修をさせる会社もあり、色々な仕組みを導入しています。
このように周知や教育の実効的な取り組みをするのは、それだけ倫理観に対して認識を合せておかないと海外では問題が発生するからだと思います。

海外拠点における全社統制(統制活動)の構築ポイント

続いて海外拠点における全社統制(統制活動)の構築ポイントについてです。
統制活動とは、経営者の指示が適切に実行されることを確保するための方針や手続きを指し、いわゆる従業員が守る全社的なルールになります。
統制環境は、全体の基盤なので統制活動と重複する部分も出てきます。
海外拠点のルール作りの際、グループ共通か個別で作るのかという話がよく挙がります。
事例では、コンプライアンスやJ-SOXの方針は、全世界共通のグループ方針を作成して会社の理念を共有し、海外拠点の個々の統制活動におけるルールは、海外の商習慣等の問題もあり共通化が難しく拠点ごとに整備しているようです。

 

統制活動においては、以下のポイントを押さえて整備するとよいでしょう。
[①] 職務権限規程や業務マニュアルを作成する。
各業務における責任と義務を明確にするために職務権限規程や業務マニュアルを作成します。責任と権限という点においては海外の方が明確であり、責任や権限外の仕事を従業員が行うことは国内に比べて少ないです。このような全社的なルールを作成すれば、そのルールに則って運用するのが海外拠点の特徴と言えます。

 

[②] 社内規定違反時の処遇を定める。
従業員が会社のルールを逸脱した場合の処遇を明確に定める必要があります。
具体的には、前述の統制環境のところで触れた従業員ハンドブックに社内規定違反時の処遇を明確に定め、従業員へサインをさせています。
こういった地道な統制活動は、ルール違反の抑止力になっており、後で大きな効果を発揮しているのです。

 

海外拠点における全社統制(情報と伝達)の構築ポイント

構築の最後は、海外拠点における全社統制(情報と伝達)のポイントのお話しです。
情報と伝達とは、必要な情報が把握され、企業内外に正しく伝えられることを言います。
いくら仕組みを頑張って構築しても正しく伝えられないと、効果が半減します。
海外拠点では異なる文化や宗教そして人種の人々が一緒に働く中で、国内よりも更に注意を払い認識の齟齬や情報共有不足にならないよう、情報を伝達する仕組みを構築していきたいところです。

 

企業の仕組みを正しく伝えるために、工夫すべきポイントは以下です。
[①] 経営者はJ-SOXの重要性を従業員へ伝達する。
経営者はJ-SOXの重要性を認識した上で、日本のJ-SOXの必要性もあわせて従業員へ伝達します。経営者がJ-SOXを理解するだけではなく自ら行動に移すことがポイントです。
海外では国内よりも指示命令系統が明確で、トップダウンで物事が進む傾向にあるので経営者がJ-SOXの重要性をマネージメント会議で伝達し、一般従業員へ落しこみます。
また海外では全従業員の前で経営者がその重要性を定期的に説明することも事例としてよく見かけます。

 

[②] 実効的な内部通報制度を整備する。
不正やJ-SOXの重大な不備を発見した場合に、通常報告経路以外の臨時報告経路として内部通報整備を構築します。
海外では国内よりも不正行為が多い傾向にあり、情報を吸い上げやすい伝達経路を構築することがポイントになります。
例えば海外の工場では至る所に目安箱を設置し、簡単に情報を収集しやすい仕組みを作っていたり、またオフィス内ではITによって内部通報の伝達経路を構築していたりと従業員が使いやすい仕組みになっています。

海外拠点における全社統制の評価ポイント

構築が終われば、ルールがあるか、ルール通りに運用されているかの確認つまり評価を行います。
海外J-SOXでは国内と比較すると構築と同等に評価に苦労することを声に出して言いたく、以下評価ポイントを抑えておくと良いと思います。

 

[①] ルールが規程のどこに記載されているか明確にチェックする。
規程は現地語で書かれていることが多く不明な点もあり曖昧にしがちです。
評価において全社統制のコントロールが規程のどの部分に書かれているか明確にするため現地への確認が必要なのが特徴です。海外では想像以上にこのやりとりにとても工数がかかります。特に規程に英語以外の言語を使用している場合、内容理解のために現地担当者より英語での補足説明をもらうことをお勧めしたいです。
また英語以外の言語の評価を行う場合、J-SOXの有効性をどう担保しているか監査法人から聞かれることもありますので、英語で補足説明をもらい有効性を確認していることを伝えると良いでしょう。
そもそも何が書かれているかわからないと評価のしようがないので、評価をしながら途方に暮れるというケースが最初のうちはよくあります。構築は何とか終わったけどいざ評価をしてみると内容が違う!ということもあり、認識の齟齬もよくあるのが海外の特徴です。海外はより具体的に確認ポイントを明確にする必要があり、日本語表現の曖昧さは通用しないと言い切れます。

 

[②] 運用評価の承認の証跡は、署名およびメールで確認する。
海外では印鑑の文化がほとんどないため、承認の証跡は署名となります。
海外の署名は承認者の判別がつきにくいので、事前に署名リストを作っておくのも一つの方法です。また可能であれば現地資料のフォーマットに承認者の氏名を入れて、そこに署名をしてもらい工夫を凝らすこともお勧めしたいです。
また承認の証跡は署名だけに限らずメールも有効で、メールで証跡を残してもらえれば評価者にとってもわかりやすいです。

 

今回は海外拠点における全社統制の構築および評価のポイントについてお話ししました。
海外拠点における全社統制の構築・評価は、言語の問題も加味され国内ほどスムーズには進みません。今回お話ししたポイントを踏まえて構築・評価を行い、海外の人に納得感を得られるような仕組みを構築してもらいたいです。

 

 

まとめ

全社統制の構築および評価とは
[全社統制の構築]会社全体を包括するルールや仕組み作り
[全社統制の評価]第三者によるルールや仕組みのチェック

 

海外拠点における全社統制(統制環境)の構築ポイント
[①] 倫理観を明確に記載した文書を作成
従業員ハンドブック(Employees Handbook)を作成し、行動規範(Code of Conduct)を含めた会社ルールを整備。

 

[②] 倫理観に対する周知や教育
[周知]新入社員は入社時従業員ハンドブックを理解した証跡(サイン)を残す。
[教育]既存社員は年次で従業員ハンドブックにサインする。e-ラーニングを導入し倫理観の研修を行う。

 

海外拠点における全社統制(統制活動)の構築ポイント
[①] 職務権限規程や業務マニュアルの作成
責任や権限を明確にした全社的ルールを作成。

 

[②] 社内規定違反時の処遇の明確化
従業員ハンドブックに社内規定違反時の処遇を具体的に明確に定め、従業員へサインを求める。(ルール違反の抑止力)

 

海外拠点における全社統制(情報と伝達)の構築ポイント
[①] 経営者によるJ-SOXの重要性の伝達
経営者がJ-SOXを理解した上で従業員に伝達し自ら行動に移すことがポイント。
海外は全従業員の前で経営者がJ-SOXの重要性を定期的に説明することも一般的。

 

[②] 実効的な内部通報制度の整備
海外不正防止のため情報を吸い上げやすい内部通報制度を構築することがポイント。
目安箱の設置やITによる内部通報の伝達経路を構築。

 

海外拠点における全社統制の評価ポイント
[①] ルールが規程で明確化されていることのチェック
現地語の規程はルールがわかりづらいので、記載内容を現地へ確認し、英語の補足説明を入れてもらうことが特徴。

 

[②] 運用評価の承認の証跡は、署名およびメールで確認
承認の証跡として署名が一般的。ただ海外の署名は承認者の判別がつきにくいので、署名リストを作成してもらうことをお勧め。メールも証跡としては有効。

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