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レガシーシステム脱却の戦略と事例:負の遺産を解消する方法

2026年01月22日

 

多くの企業において、長年使い続けてきた「レガシーシステム」がビジネスの足かせとなるケースが増えています。過去の技術で構築され、度重なるカスタマイズによって複雑化したシステムは、単なるITの老朽化に留まらず、今や経営上の重大なリスクとなっています。
IT予算の約80%が既存システムの維持管理に費やされ、新しい価値を生むための「攻めの投資」が阻害されている現状や、技術の属人化による運用停止リスクは、多くの経営者やIT担当者にとって喫緊の課題です。しかし、いざ刷新を試みようとしても、中身がブラックボックス化しているなどの「負の遺産」が脱却を阻む障壁となります。
今回はレガシーシステムが招く具体的な危機を整理した上で、全体最適を目指す「ITグランドデザイン」に基づいた脱却戦略を解説します。また、実際に困難を乗り越えた企業の成功事例を交え、システム刷新を成功に導く実践的なヒントを提示します。

 

レガシーシステムが招く危機

レガシーシステムとは、過去の技術基盤で構築され、長年のカスタマイズが繰り返された結果、肥大化・複雑化したシステムを指します。これを放置することは単なるIT部門の技術的な課題ではなく、企業の存続を左右する経営上の重大なリスクへと直結します。

 

①保守運用コストの高止まり
一般的に、企業のIT予算の約80%が既存システムの維持管理や保守・運用に費やされていると言われています。この状態ではデジタル時代の競争に勝つために不可欠な、新しいビジネスモデルの創出やサービス向上を目的とした「攻めのIT投資」に予算を振り向けることができません。老朽化したインフラを守るだけで手一杯になり、イノベーションが阻害されるという悪循環に陥ります。

 

②技術的負債と属人化
レガシーシステムでは、COBOLなどの古いプログラミング言語が使われていることが多く、それらを理解できる熟練エンジニアの定年退職が加速しています。また、ベンダーのサポート終了により、万が一トラブルが発生した際に迅速に対応できる人材や手段が不在になるという、深刻な運用リスクを抱えることになります。これは「2025年の崖」とも称される社会問題の一端でもあり、企業の事業継続計画(BCP)における脅威です。

 

③変化への対応力低下
基盤が硬直化しているレガシーシステムは、現代のビジネスに不可欠なAI、クラウド、ビッグデータといった最新技術との柔軟な連携が困難です。市場の変化や顧客ニーズに対して迅速なシステム改修ができなければ、企業としての競争力は著しく低下し、機敏な動きを見せる競合他社に遅れを取ることになります。

 

レガシーシステムはIT予算の硬直化、人材不足による技術的リスク、そして最新技術への追随不能という3つの側面から、企業の経営を圧迫し続けています。これらを放置することは、将来的な競争力の喪失につながります。

 

 

レガシーシステム脱却を阻む要因

多くの企業がレガシーシステムからの脱却を目指して刷新プロジェクトを立ち上げますが、その成功は容易ではありません。プロジェクトが難航する背景には、長年の運用で蓄積された「負の遺産」が障壁として存在しているからです。

 

要因①:システムの不透明化(ブラックボックス化・ドキュメント不在)
長年の部分的な改修や継ぎ足し開発の繰り返しにより、ソースコードと設計図(ドキュメント)の乖離が進んでいます。
開発当時の担当者がすでに不在であるケースも多く、システム全体の仕様を把握している人間が社内にいないという事態が多々あります。
その結果、仕様を解明するためにソースコードを一行ずつ読み解く「リバースエンジニアリング」が必要となり、刷新に向けた調査だけで多大な工数とコストが発生してしまいます。

 

要因②:依存関係の複雑化(スパゲッティ・コード)
場当たり的な改修によってシステム同士が複雑に連携し、スパゲッティのように絡み合っている状態です。
このような環境では、一部の機能を修正しただけで予期せぬ箇所に影響が及ぶリスクが付きまといます。
影響範囲の特定に時間がかかるため、慎重な調査と膨大な範囲のテストが求められ、結果として開発スピードが低下し、プロジェクトの遅延を招く要因となります。

 

要因③:心理的抵抗と組織文化
「現状、大きな不具合なく動いているシステムを変える必要があるのか」という現場の安心感や、新しい操作を習得することへの負担感が反発を生みます。
こうした保守的な姿勢や一時的なトラブルを恐れる文化が、社内の合意形成を妨げ、抜本的な刷新に向けた意思決定を遅らせる足かせとなります。

 

レガシー脱却を阻むのは、仕様の不明確さや構造の複雑さといった技術的要因に加え、変化を嫌う組織文化という人間的な要因の複合です。これら「負の遺産」の正体を正しく認識し、対策を講じることが刷新成功への第一歩となります。

 

 

レガシーシステム脱却の戦略

レガシーシステムという「負の遺産」を根本から解消するには、単なる道具の置き換えではなく、会社全体の最適化を目指す「ITグランドデザイン」に基づいた戦略的アプローチが不可欠です。

 

まず取り組むべきは「全体最適を見据えたITグランドデザインの策定」です。5〜10年先のビジネス目標から逆算し、企業が目指すべきITの全体像を定義します。部分最適に陥らず、将来の成長を支える拡張性の高い基盤を設計することで、真の経営価値を生むシステムへと進化させます。

 

実践において重要なのが「現行資産の棚卸しと可視化」です。全機能の必要性をビジネス視点で選別し、利用頻度の低い機能や不要なプロセスを大胆に「捨てる」判断をします。これにより、移行リスクとコストを大幅に削減できます。

 

また、将来を見据えた刷新手法の選択も欠かせません。独自の業務にシステムを合わせるのではなく、SaaS等の標準機能に業務を合わせる「標準化(Fit to Standard)」を優先し、再レガシー化を防ぎます。手法には、全面刷新の「リプレイス」、環境のみ移す「リホスト」、段階的に新システムへ切り出す「ストラングラー・パターン」などがあり、各システムの特性に応じた最適な組み合わせが求められます。

 

最後に、これらを完遂させるには「経営層主導の体制構築」が不可欠です。システム刷新をIT部門だけの課題とせず、経営最優先の課題として位置づけ、強力なリーダーシップで全社的な合意形成を推進することが成功の鍵を握ります。これにより現場の心理的抵抗や現状維持のバイアスを打破し、会社全体を一歩踏み出させる原動力となります。

 

刷新の成功には未来を描く構想力と不要な機能を捨てる勇気が欠かせません。経営層の主導のもと、標準化を意識した最適な手法を選択することが、持続可能なIT基盤を構築するための近道となります。

 

 

レガシーシステム脱却の事例

「IT基盤の最新化」を通じて、長年の課題を克服し、ビジネスの変革を実現した具体的な事例を紹介します。

 

事例1:製造業におけるブラックボックスの解消と最新化
24時間稼働を求められるエレベーター監視システムがメインフレーム上で稼働していましたが、仕様が不透明になり、システムの硬直化が大きな課題となっていました。刷新にあたり、同社は専用ツールを用いて仕様を徹底的に可視化することから始めました 。戦略として、一度にすべてを入れ替えるリスクを避け、機能を細分化して段階的にクラウドネイティブな環境へ移行する「段階的移行」を選択しました。この結果、長年悩まされていた特定のベンダーへの依存から脱却し、開発スピードの向上と保守コストの削減を達成することができました。

 

事例2:金融業における全体最適を目指したクラウド移行
巨大かつ複雑化した基幹システムが、新しいデジタルサービスの迅速な提供を阻む壁となっていました。同社は「クラウドファースト」を掲げ、基幹系を含めた全体的なプラットフォームの刷新を断行しました。ITグランドデザインに基づき、独自の作り込みを排してクラウド上に共通基盤を構築したことで、API連携が極めて容易になりました 。その結果、外部のフィンテックサービスとのスムーズな連携やモバイルアプリの迅速なアップデートが可能となり、柔軟なサービス提供体制を構築することに成功しました 。

 

これらの事例に共通するのは、自社の抱えるレガシーの危機と不透明さを正しく把握し、ITグランドデザインという明確な戦略を持って、将来を見据えた選択を行っている点です。レガシー脱却は単なる過去の清算ではなく、未来に向けた投資であることがわかります。

 

 

まとめ

レガシーシステムからの脱却は、単なるツールの入れ替えではなく、企業の競争力を再定義する経営変革そのものです。現状のブラックボックスを可視化し、経営層主導で「ITグランドデザイン」を描くことが、負の遺産を未来への投資へと変える鍵となります。

 

■レガシーシステムが招く危機
・保守コストの高止まりにより、新規ビジネスへの「攻めの投資」が阻害される。
・技術の属人化とエンジニアの不足により、事業継続上のリスクが高まる。
・システムの硬直化により、AIやクラウドなどの最新技術の活用が困難になる。

 

■レガシーシステム脱却を阻む要因
・ドキュメントの不在とブラックボックス化により、現行仕様の把握に多大なコストがかかる。
・複雑な依存関係が、改修スピードの低下とテスト工数の増大を招く。
・変化を恐れる組織文化や現場の心理的抵抗が、意思決定とプロジェクト推進を遅らせる。

 

■レガシーシステム脱却の戦略
・5〜10年先を見据えた「ITグランドデザイン」を策定し、全体最適のアプローチを取る。
・現行資産の棚卸しを行い、ビジネスに不要な機能を大胆に切り捨てる。
・経営層が主導し、標準化の徹底と全社的な体制構築を行う。

 

■レガシーシステム脱却の事例
・製造業:可視化ツールと段階的移行により、ベンダー依存からの脱却とスピード向上を実現。
・金融業:ITグランドデザインに基づくクラウド刷新により、API連携と迅速なサービス展開を達成。
・共通点:現状の不透明さを克服し、将来のビジネス目標から逆算した戦略的な選択を行っている。

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