
近年、業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、「AI」と「RPA」という言葉を耳にする機会が増えています。どちらも「業務を自動化する技術」という共通点がありますが、その本質や役割は大きく異なります。
AIは、学習や判断といった知的作業をコンピュータ上で行う技術で、決まった形式を持たないデータの解析や意思決定支援に強みがあります。RPAは、定型的かつ反復的な作業を忠実に実行する技術で、正確性や再現性が求められるルーチン業務に適しており、「判断」はAI、「実行」はRPAが担うといった役割分担が基本です。
本記事では、AIとRPAの特徴や活用領域、導入のポイントを整理し、両者を組み合わせた高度な業務自動化の可能性についても解説します。
AI(人工知能)とは:「自ら判断する」技術
AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間が行う学習・推論・判断・認識といった知的活動を、コンピュータ上で再現・拡張する技術の総称です。近年は機械学習やディープラーニングの進歩により、大量のデータから特徴やパターンを自動で抽出し、未知の状況に対しても予測や意思決定が可能になりました。従来のルールベースとは異なり、AIはデータから学習することで自律的に判断できる点が大きな特徴です。
具体例としては、文章生成AIのChatGPT、Googleの画像認識技術、Amazonのレコメンドエンジンなどがあり、文章・音声・画像などの非構造化データを解析して最適な出力を提示します。AIの出力は常に同一の結果や完全な正解が保証されるわけではありませんが、この「ゆらぎ」が柔軟性や創造性を生み、人間に近い応答や意思決定を可能にしています。
さらに、AIはRPAやIoT、ビッグデータ解析などと組み合わせることで、業務自動化や意思決定支援の高度化にも寄与します。例えば、AIが需要予測を行い、その結果をもとにRPAが発注処理を自動実行する仕組みや、IoTセンサーから収集した設備データをAIが分析し、故障の予兆を検知する取り組みなどが挙げられます。
この様にAIは単なるツールにとどまらず、人間の知的活動を補完・拡張し、社会やビジネスの効率化を支える技術として、その活用範囲は今後さらに広がることが期待されています。

RPAとは:「正確に実行する」技術
RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコン上で行われる反復的・定型的な業務を、ソフトウエアロボットで自動化する技術です。人が日常的に操作しているアプリケーションやシステムの動きをあらかじめ設定し、その手順をそのまま再現させることで、業務の効率化やミスの削減を実現します。RPAは自ら考えたり学習したりする仕組みではなく、「決められた手順を忠実に実行する」ことを目的としている点が大きな特徴です。人間が行う作業を正確に模倣できる一方で、柔軟な判断や臨機応変な対応は得意ではありません。
具体例としては、複数のシステム間でのデータ転記、メールに添付されたファイルの自動保存、定型フォーマットでのレポート作成、請求書情報の入力作業などが挙げられます。これまで人手で行っていた単純作業を高速かつ安定的に処理できるため、業務時間の短縮やコスト削減に直結します。RPAは業務プロセスを忠実に再現するため、ヒューマンエラーの削減や作業品質の安定化にも大きく貢献します。
RPAは既存のシステムやアプリケーションを変更することなく導入できる点も強みです。新たなシステム開発が不要で、比較的短期間で自動化の効果を実感できるため、多くの企業で業務効率化の第一歩として採用されています。一方で、想定外のケースや例外処理が発生すると停止してしまうことがあるため、複雑な判断や変動の多い業務には単独では対応が難しく、AIとの組み合わせによる「判断と実行の分担」が求められる場面も増えています。
RPAはルール化・標準化された業務を正確かつ効率的に処理する強力なツールであり、業務自動化の土台として大きな役割を果たします。AIと組み合わせることで、単純作業の自動化にとどまらず、より高度で柔軟な業務プロセスの自動化を実現できる点が、現代のデジタル化戦略における大きな魅力となっています。

対立ではなく「補完関係」にある両者
AIとRPAは対立する技術ではなく、それぞれの強みを組み合わせることで大きな相乗効果を発揮します。こうした統合的な自動化は「インテリジェントオートメーション(IA)」と呼ばれ、企業の業務改革を支える重要なアプローチとして注目されています。「判断」はAIが担い、「実行」はRPAが担うことで、より柔軟で高度な自動化を実現できます。
例えば、請求書処理の自動化では、AIが請求書の画像データを読み取り、取引先名や金額、日付などの情報を正確に抽出・分類します。手書きや形式の異なる請求書にも対応可能であるため、従来は人手で行っていた確認作業を大幅に削減できます。その後、RPAがAIによって整理されたデータを基幹システムに自動で入力し、承認フローや関連部門への通知まで一連の処理を完了させます。これにより、作業の精度とスピードが格段に向上します。
また、請求書処理以外でも応用範囲は広く、問い合わせ対応や人事業務などさまざまな領域での業務自動化が可能です。AIが判断や分類を行い、RPAが実行や登録を担うことで、業務の属人化やヒューマンエラーを抑制し、標準化された高品質なプロセスを実現できます。
このように「判断はAI、実行はRPA」と役割を明確にすることで、単なる作業効率化にとどまらず、業務の最初から最後までを一貫して自動化することが可能になります。結果として、生産性向上と業務品質の安定化を同時に達成でき、従業員をより付加価値の高い業務へシフトさせることができるのです。さらには、生成AIや高度な分析技術の進展により、今後はより複雑で高度な業務の自動化も期待されており、インテリジェントオートメーションは企業のDX化を支える中核的な手法としてますます重要性を増しています。

導入を成功させるための3つのポイント
業務自動化を円滑に推進するためには、まず業務プロセスの可視化が不可欠です。現行業務を棚卸しし、どの工程が「定型作業」で、どこに「人間の判断」や例外対応が発生しているのかを明確に整理します。特定の担当者に偏っている作業や、マニュアル化されていない経験や勘に頼っている判断基準も洗い出すことで、自動化の適用範囲が明確になります。重要なのは、自動化そのものを目的化しないことです。費用削減、時間の短縮、品質向上など、達成したいゴールを定義した上で取り組むことが成果を左右します。
次に、スモールスタートと継続的な検証が鍵となります。いきなり全社規模で展開するのではなく、影響範囲が限定的で効果測定しやすい業務からPoC(概念実証)を実施します。そこで得られた成果や課題を分析し、改善を繰り返しつつ、段階的に拡大していきます。成功事例を可視化して情報を共有することで、社内の理解や協力が促進され、変革への心理的ハードルも下げることができます。
さらに重要なのが、人間との協働モデルの設計です。「AIやRPAに仕事を奪われる」という対立構造ではなく、「定型作業はRPA、分析や予測支援はAI、最終判断や創造的業務は人間」といった役割分担を明確にします。例えば営業部門では、RPAが日報データを自動集計し、AIが過去の商談履歴から受注確度を予測します。その結果をもとに、営業担当者が提案内容や交渉戦略を最終判断します。また人事部門では、AIが応募書類をスクリーニングし、RPAが面接日程の自動設定を行いますが、最終的な採用判断は人が行います。この様に、人はより高付加価値な業務に集中できる環境を整えることで、組織全体の生産性と競争力を持続的に高めることが可能になります。
AIは「学習と判断」を、RPAは「正確な処理」を担います。自社の課題が「判断の自動化」なのか「作業の自動化」なのかを切り分け、両者を最適に組み合わせることが、DX時代における業務改革の鍵となるでしょう。
まとめ
■AI(人工知能)とは:「自ら判断する」技術
・AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間が行う学習・推論・判断・認識といった知的活動を、コンピュータ上で再現・拡張する技術の総称。
・従来のルールベースとは異なり、AIはデータから学習することで自律的に判断できる点が大きな特徴。
■RPAとは:「正確に実行する」技術
・RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコン上で行われる定型的かつ反復的な業務を、ソフトウエアロボットによって自動化する技術。
・RPAはルール化・標準化された業務を正確かつ効率的に処理する強力なツールであり、業務自動化の基盤として非常に有効。
■対立ではなく「補完関係」にある両者
・「判断はAI、実行はRPA」と役割を明確にすることで、単なる作業効率化にとどまらず、業務の最初から最後までを一貫して自動化することが可能になる。
・生産性向上と業務品質の安定化を同時に達成でき、従業員をより付加価値の高い業務へシフトさせることができる。
■導入を成功させるための3つのポイント
・業務自動化を成功に導くためには、まず業務プロセスの可視化が不可欠。
・次に、スモールスタートと継続的な検証が鍵。
・さらに重要なのが、人間との協働モデルの設計。
自社の課題が「判断の自動化」なのか「作業の自動化」なのかを切り分け、両者を最適に組み合わせることが、DX時代における業務改革の鍵となる。