債権管理システムで失敗しないために~システム検討時の注意点~

2019年03月14日

 

現代の企業は、基幹業務でシステムを活用することは当たり前になっていますが、システム化の範囲は企業によって異なります。給与計算や会計に次いでシステムを検討することが多いのが販売管理、債権管理です。今回は、そのうち債権管理に焦点を当てて、パッケージシステムの基本的な機能やシステム検討の際の留意点を整理していきます。

 


債権管理システムが対象とする業務範囲

債権管理システムは、文字通り債権を管理するためのシステムです。対象となる基本的な業務範囲は、企業が物やサービスを販売し、請求できるようになった時(売掛金を計上した時)から、債権が決済されるまでとなります。しかし、多くの企業では、例外的な債権の管理(主たる事業以外で発生した債権)も多かれ少なかれ発生します。また、売掛金計上前に前受金を受けられるような取引も多くあり、企業によって必要な事務手続きは異なります。また、今日では、多くの企業が海外企業との取引を行っており、外貨建ての債権が発生することもあります。
このように、債権管理業務は、広げようと思えば範囲はどんどん広がるのですが、この記事の中では、“主たる事業における物やサービス”の“国内販売”に伴う債権の管理を対象にします。

 

 

債権管理システムの一般的な機能

債権管理システムには、債権の発生から消滅までの業務を効率化するための機能が搭載されています。ここでは、パッケージシステムに搭載されている一般的な機能を確認していきます。

 

■債権計上
債権が発生した際に、その債権の情報を登録します。具体的には、商品・サービスの内容、得意先、請求金額、入金予定日などの情報を入力します。

 

■請求書印刷
入力した債権情報に基づいて、請求書を印刷します。請求するタイミングには、締め請求(1か月毎など決まった期間分をまとめて請求)と都度請求(債権発生の都度請求)がありますが、請求書印刷機能も別になっていることが多いです。また、取引件数が多い得意先に対しては、請求書印刷に代え請求データを電子ファイルで提示することもあります。

 

■入金予定管理
債権情報の入金予定日に基づいて、入金予定を照会します。資金繰り予定を検討する際の基礎情報として活用します。

 

■入金管理
得意先から入金(銀行振り込み)があった場合に、その入金情報を登録します。具体的には、入金日、得意先、入金額などの情報を入力します。

 

■債権消込
債権情報と入金情報を突合し、消込処理を行います。請求金額と入金額は、一致しないことも多々あります(例:得意先による振込手数料分の控除)ので、差額の原因を確認しながら、処理を行います。

 

※入金・消込~様々な決済手段への対応~
現金振り込み以外にも、手形やファクタリング、でんさい、債権債務の相殺など様々な決済手段がありますので、それぞれに対応した入力が必要です。手形自体を管理したい場合は、手形管理システムが必要になります(債権管理システムに付随している場合もあります)。

 

■滞留債権管理
債権管理に必ず付いてくるのが滞留債権の管理です。決済日を過ぎても入金がない債権をチェックし督促するという業務が必要となります。システム上は、必要最小限で言えば滞留債権の照会機能ということになりますが、業務上は、督促、請求書の再発行、貸倒引当金計算、貸倒損失計上といった作業も必要になり、それを補完するような機能が搭載されている製品もあります。

 

■仕訳データ作成
債権計上から入金、消込の情報に基づいて、会計仕訳のデータを作成します。そのデータを会計システムに取り込むことにより、自動的に仕訳を計上することが可能です。

 

以上の様に、パッケージシステムには、債権の計上から請求、入金、仕訳計上に至るまでの、事務処理を一通りカバーできるような機能があります。ただし、請求書印刷や手形管理等については、パッケージシステムの標準機能だけでは対応が難しいことも多いので、注意が必要です。

 

債権管理における特殊な要件例

ここからは、債権管理システムに求められる特殊な要件の例を挙げていきます。債権管理業務は、相手が商品・サービスを売る先ということもあり、こちらの都合だけで手続きを進めることができないことも多くあります。
よくある例として、請求書を得意先の指定様式で提出する、というものがあります。指定された様式がシステムと異なれば、システムを改修するかシステム外で対応する必要があります。
以下に債権管理ならではの特殊な要件を2つほど例示します。

 

■前受金の管理
前受金を請求してそれを入金するだけの業務であればそれほど特殊ではないのですが、物やサービスの提供後に、前受金分を除いた残額を請求する、というところまで管理したい場合は、通常の債権とは異なる情報(総額や前受金額、残額を発注毎に管理)が必要となります。長期の工事の場合には、複数回にわたって前受金を受けることがありますし、入金のタイミングによって、勘定科目が変わる(未成工事受入金の増加または完成工事未収入金の減少)ことになりますので、その対応も必要です。さらに前受金には、発注毎に受け取る場合だけではなく、複数の発注を前提としてまとめて受け取る場合もあります。予め100万円受け取っておき、9万円分の発注があったら、そこから取り崩して決済する、というケースです。この場合は、残額の管理や、債権発生時の取り崩し処理といった機能が必要となります。

 

■割賦債権の管理
割賦債権も特殊な要件の1つです。単に100万円の債権があり、5回に分割して決済される、というだけでは終わらず、そこに金利計算が関わってきます。そのため、代金決済が予定と変われば、金利の再計算等が発生することになります。例えば、支払が遅延した場合は、その遅延日数分に係る金利が追加になりますし、支払いの前倒しを受け入れる場合にも、その分の金利を減額することになります。このように、割賦債権を取り扱う場合には、債権管理に加えて金利計算の機能も必要になります。

 

債権管理は、お客様へ商品・サービスを提供するに伴い発生するものですので、得意先と合意した契約や販売形態等に応じて様々なパターンが発生します。その全てをパッケージシステムの標準機能だけで対応することは困難ですので、システム導入時には、特殊な要件を人手で対応すべきかまたはシステム開発すべきかを個別に検討する必要があります。

 

 

債権管理システム検討時の留意点

最後に、債権管理システムを検討する際に、留意すべき点を挙げていきます。
債権管理業務は、販売活動(営業部門)と(会計処理)経理部門の間に位置する業務であることが、1つの特徴と言えます。中間に位置するがゆえに注意したほうが良い点をユーザーという面とパッケージシステムという面から見ていきます。

 

■債権管理システムのユーザーは誰か
債権管理システムは企業によってユーザー部門が異なり、大きくは、経理・財務部門と営業部門とに分けられます。仮に営業部門が使う場合には、ユーザー数が多くなることや経理の知識を持たない方が使うことを考慮する必要があります。例えば、ユーザー数に応じたライセンス費用体系となっているシステムの場合は、営業部門の多くの方が使おうとすると費用が膨らみます。また、入力画面が借方・貸方や勘定科目ベースになっているようだと、会計の知識を持たないユーザーから使いづらいと不満の声が上がってくるはずです。

 

■販売システムと会計システムのどちらに附帯した製品か
債権管理システムですが、大別すると販売管理に附帯した製品と会計システムに附帯した製品とがあり、それぞれ機能に特徴があります。
販売管理に附帯した製品の場合は、債権管理を営業活動の付帯業務と考えており、使い勝手は良いですが、細かな機能が不足している傾向にあります。販売管理との連携が強いので、得意先マスタの管理や与信管理に強いというのも特長です。
一方、会計システムに附帯した製品の場合は、正しく会計処理を行うことに重点が置かれており、債権の計上や入金決済にて生じる様々なパターンにおいて細かな制御ができる代わりに、会計の知識が無い方には使い勝手が悪いこともあります。これらは、あくまでも個人的な所感であり、製品によっても違いはあると思いますが、そのパッケージシステムの製品構成やその中における債権管理の位置付けを意識すると、製品検討時の参考になるのではないかと思います。
一言で債権管理と言っても企業によって必要となる機能も異なれば、担当者も異なります。また、パッケージシステムによっても、得意不得意が出やすい領域ですので、自社の業務を理解・整理したうえで、目的に合った製品を選ぶことが大切です。

 

 

まとめ

債権管理システムが対象とする業務範囲
・物やサービスを販売し、請求できるようになった時(売掛金が計上されたとき)から債権が決済されるまで
・この記事の中では“主たる事業における物やサービス”の“国内販売”に伴う債権の管理が対象
債権管理システムの一般的な機能
パッケージシステムの一般的な機能は次の通り
債権計上/請求書印刷/入金予定管理/入金管理/債権消込/滞留債権管理/仕訳データ作成
債権管理における特殊な要件例
得意先と合意した契約や販売形態等に応じて様々なパターンが発生
・前受金の管理
・割賦債権の管理
債権管理システム検討時の留意点
・債権管理システムのユーザーは誰か
・販売システムと会計システムのどちらに附帯した製品か

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