BCPの特徴と期待効果~BCPは単なる防災・被災マニュアルではない!

2017年08月24日

 

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害やテロ攻撃等の緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限に留めつつ、事業の継続または早期復旧を実現するために定めておく計画のことを言います。
BCPは、単なる防災・被災マニュアルではありません。
BCPは、有事が起こった際の事業継続・復旧の計画ないしマニュアルです。

 


危機的事象の特徴

現在の企業は、多くの危機的事象に脅かされています。
地震、火災、テロ攻撃、システム障害、不祥事、水害、疫病、台風、集中豪雨、個人情報流出、紛争、食中毒 等々自然災害として不可抗力なものもあれば、人的災害として未然に防止できるものもあります。
しかし、共通して言えるのが、一度有事が発生したら、企業に損害を及ぼす可能性が高く、有事の内容によっては、企業を危機的な状況に陥れるものがあるということです。
企業は、持続的に成長するためにも、自社を取り巻く環境を分析・把握していわゆる“危機的事象”とは何か?そして“危機的事象の特徴”を知っておかなければなりません。
企業を取り巻く危機的事象について、
災害(地震、台風、テロ等)」「疫病(インフルエンザ等)」「不祥事(情報流出、食中毒等)」
と分けて考えた場合、その危機的事象が与える影響の主な対象や地理的な範囲影響の継続期間被害想定が、それぞれ異なることを知っておく必要があります。
影響の主な対象として考えた場合、災害は建物や設備等に物理的なダメージを与え、疫病は人的リソースに影響を及ぼし、不祥事であれば、ブランドや会社の信用に影響を与えます。
地理的な範囲としては、災害であれば、発生地域と周辺に影響し、疫病であれば、発生地域から世界的に広まり、不祥事は会社全体にダメージを与えます。
影響の継続期間や被害想定としても、災害の場合は、数日から数週間に深刻な影響を及ぼし、ライフラインにも影響を与えて、復旧まで長期化することがあります。
疫病の場合でも、一般的に流行の継続は約8週間(厚生労働省)とも言われており、一度で収まらず、幾度かの波があるとされています。
また、不祥事の場合には、監督官庁より営業停止を強制されるケースもあり、風評被害によって、さらにその影響が長期化する可能性もあります。
このように企業を取り巻く危機的事象は様々あり、その危機的シナリオも影響の主な対象や範囲、影響の継続時間等にそれぞれ特徴があります。

 

BCPの特徴

BCPは、有事の際の事業継続および早期復旧のための計画・行動マニュアルです。
BCPには以下のような特徴があります。
中核事業の特定
会社の経営を維持するため、優先して継続・復旧すべきコア事業や継続・復旧させることに社会的責任が問われる事業を特定できる。
目標復旧時間の設定
中核事業復旧の遅れは、時として致命的な事業機会の損失となる。
事業停止期間の限度を分析し、目標復旧時間を定める。
サービスレベルの特定
顧客との取引を継続し、市場シェアや企業価値を維持するため、提供できるサービスレベルについて、事前に顧客等と協議しておく。
代替調達先の準備
取引先やサプライチェーンの要請に応じるため、生産設備、仕入先等、緊急時の代替調達先を確保しておく。
従業員とのコミュニケーション
従業員と密にコミュニケーションを取ること、定期的にBCPの教育・訓練を実施すること等により、従業員の危機管理意識を高める。

 

BCPは、有事の際の計画ないしマニュアルであり、復旧・継続させる事業、復旧までの時間と内容、そのためのモノやヒトの資源を予め決定し、定期的に訓練することで、有事の際にBCPに従って行動できるように準備しておくことが大事です。

 

 

BCPがない企業が抱える危機的シナリオ

ここで、BCPを策定していない企業とBCPを策定している企業を比較して、大規模地震が起こった場合の“危機的シナリオ”について、検証してみます。
■地震発生当日
BCPがない企業の危機的シナリオとしては、地震により、設備が故障したうえ、負傷者も発生し、突然の出来事に指揮命令系統が麻痺し、顧客や従業員への連絡・指示が行われないといった事態が想定されます。
一方、BCPがある企業の危機的シナリオとしては、施設の被害状況を迅速に確認・把握でき、BCPに基づく指揮命令系統により、従業員は帰宅マップで自発的に帰宅し、顧客にもすぐに連絡を入れられる等の対応が可能です。
■初動期(被災直後で物資や支援が十分ではない時期)
BCPがない企業の危機的シナリオとしては、設備の復旧の目処が立たず、従業員の半数が出社せず、納期の見込みが立たないことから、取引先の発注が打切りになるといった深刻な事態が予想される一方、
BCPがある企業の危機的シナリオとしては、メーカー技術者が設備を迅速に修理し、BCPに基づき、従業員は交代制で作業を行い、復旧の時期(目標復旧時間)を顧客に連絡できたという対応の違いが生じます。
■復旧期
BCPがない企業の危機的シナリオとしては、設備更新のための融資を受けたものの、復旧完了後も取引先からの受注は戻らず、事業縮小を余儀なくされ、従業員が多数退職してしまうといった最悪の状況が想定されますが、BCPがある企業の危機的シナリオとしては、地震保険で設備修理費用を賄うとともに、BCPで決めておいた代理調達・生産で出荷を続け、被災後約1ヶ月で復旧し、受注も元に戻ったという結果に導くことができます。

 

このようにBCPは単なる防災・被災マニュアルではありません。
BCPは、有事が起こった際の事業を継続・復旧させるための計画ないし行動マニュアルなのです。

 

BCPの期待効果

BCPには、以下の期待効果があると言われています。
1.取引先の信頼向上
取引先に対して危機発生時に維持できる取引量を明確に示すことができる。
取引先は危機発生時においても、一定の取引が継続されることを把握でき、安心して取引を行うことができる。
2.従業員の安心感
危機発生時においても事業を維持・継続するための仕組みが存在し、有事の際の行動指針や行動マニュアルが存在することにより、従業員は自分の会社に対して安心感を持ちながら働くことができる。
3.重要な事業の把握
BCPの策定過程において中核事業を検討することにより、企業にとってどの取引先に対する取引が重要であるか、どの商品・サービスが重要な取引であるかを客観的に確認することができる。
4.競争力の向上
危機発生時においていち早く事業を復旧させ、商品・サービスの提供を開始することができれば、同業他社に対して大きな優位性を発揮することができ、危機発生後のシェア拡大へとつなげることができる。
5.企業イメージの向上
取引先、従業員、近隣住民等に対して、災害発生時に復旧をサポートするような取り組みを実施することが可能である。
その結果、自社・ブラントに対するイメージの向上が期待できる。

 

このようにBCPには、企業を存続させるという第一命題のほか、副次効果として、取引先の信頼性→取引量の拡大、従業員の安心感→社員の定着化といった期待効果もあり、企業には、積極的にBCPを推進するインセンティブがあります。

 

 

今日では、多くの企業でBCPが作成されていますが、単なる防災・被災マニュアルの整備で終わってしまっているケースも少なくありません。
また、東日本大震災を契機にBCPを策定したものの、その後、テスト・訓練も実施されなくなり、BCPが“塩漬け”になっている企業も珍しくありません。
BCPは事業を継続・復旧させるための計画・行動マニュアルです。
有事があった際に企業が生き残るための“より所”ないし“バイブル”です。
近時の政情不安や繰り返される自然災害を踏まえて、今一度BCPの意義や位置づけを思い出し、BCPの内容を見直してみてはどうでしょうか?

 

 

まとめ

危機的事象の特徴
地震、自然災害、火災、テロ、システム障害、不祥事、水害、疫病、台風、集中豪雨、個人情報流出、環境問題、紛争、食中毒 等
★危機的事象により、被災の対象(モノ・ヒト)、範囲(地域)、影響の継続時間等が異なる!
BCPの特徴

中核事業の特定 目標復旧時間の設定
サービスレベルの特定 代替調達先の準備
従業員とのコミュニケーション

★有事の際にBCPに従って行動できるように準備しておくことが大事である!
BCPがない企業が抱える危機的シナリオ
■地震発生当日…指揮命令系統の麻痺、連絡・指示が行われない 等
■初動期…従業員の半数が出社しない、納期の見込みが立たない 等
■復旧期…取引先・受注が戻らない、従業員が多数退職してしまう 等
★BCPは、防災・被災マニュアルではなく、事業を継続・復旧させる計画・行動マニュアルである!
BCPの期待効果

1.取引先の信頼向上 4.競争力の向上
2.従業員の安心感 5.企業イメージの向上
3.重要な事業の把握

★企業には、積極的にBCPを推進するインセンティブがある!

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