システム選定の基礎~RFP提案依頼書に記載すべき事項と作成のポイント~

2020年10月29日

 

新しくシステムを導入する、古くなったシステムのリプレイスをするといった場面で問題になるのが、『どのようにして自社にあったシステムを選ぶか』という点です。やみくもにシステムを選んでしまうと、業務にマッチしなかった、予算がオーバーした、機能が足りなかったといった問題が発生します。このような失敗は、『システム選定を適切に行っていなかった』という原因が大半を占めています。
システム選定の方法として、RFP(Request for Proposal = 提案依頼書)を作成し、システムベンダーからの提案を比較したうえで決定するというプロセスが一般的です。その中でも重要な役割を担っているのが『RFP』です。RFPを適切に作成することで、システム選定の失敗は激減するといっても過言ではありません。今回は、システム選定の基礎となるRFPについて、記載すべき内容と留意点を紹介します。

 


RFPを作成することより得られる効果

RFPは、システム構築の仕様をベンダーに明示するための資料です。ベンダーは、RFPをもとに提案を行い、その提案内容を使って自社に適したシステムを選定します。RFP作成するには時間と労力がかかり、3~6か月の期間が必要になることもありますが、作成することで以下の効果を得ることができます。

 

■要件の抜け漏れを防ぐ
システムに必要とする機能がなければ、業務に支障が出てしまいます。入力画面、帳票、利用環境、処理速度など、製品に求める要件を洗い出し、網羅的にまとめることで、要件の漏れを防ぐことができます。

■定量的にシステムを比較することができる
システムを選ぶ際、自社の要件をどれくらい満たしているのかという点が判断基準の1つとなります。要件をまとめたRFPに対してベンダーから回答をもらうことで、適合度合を測定できますので、定量的なシステム比較が可能となります。

■システム選定時の負荷を軽減できる
ベンダーからの提案条件や提案様式(フォーマット)をRFPに含めることで、各ベンダーからの提案様式を揃えることができ、比較を容易にすることができます。

■正確性の高い見積りが得られる
RFPにシステム要件を漏れなく記載することにより、精度の高い見積りをベンダーから取得することができます。これにより、追加開発で予算が足りないといった失敗を防ぐことが可能になります。

 

このように、RFPを作成することで、システムの選定時だけでなく、導入、運用段階でのリスクを軽減することが可能となります。また、RFPによってシステム選定のルールや過程が明文化されますので、何かトラブルが発生した際、客観的な証拠とすることもできます。

 

 

RFPには何を記載すべきか?

RFPには、一般的に以下の事項を記載します。

 

1. 提案依頼の趣旨
RFPを提示するに至った背景、システム構築の狙い
2. 会社概要等
会社概要、事業内容、グループ会社の概要、グループの事業系統、分類別売上比率
3. システム選定プロジェクトの概要
プロジェクトの目的、システム構築方針、システムの範囲、システムを利用する法人・拠点・組織、システム構築スケジュール
4. 提案の前提条件
提案の前提条件、選定スケジュール、提案の条件等
5. 提案要件
提案要件、システム機能要件、システム利用環境、性能要件、セキュリティ要件、インターフェース要件、運用条件、内部統制対策、BCP対策、導入要件、データ移行要件、研修要件、保守条件、障害対応要件
6. 提案依頼事項
提案依頼事項、提案可能範囲、各種要件への回答、システム導入計画、追加提案事項、見積り
7. 提案依頼要領
ご提案スケジュール概要、質疑応答、ご提案書の提出、提案書プレゼンテーション/システムデモンストレーションで実施してほしい事項

 

RFPでは、『機能要件』が大部分を占めますが、機能要件だけでは適切な選定はできません。システム選定の背景や目的、プロジェクトの概要といった要件以外の情報をベンダーに提供することで、要件の意図をくみ取ることができるようになります。これにより、ベンダーからより良い提案を受けることが可能となるのです。

 

RFPに添付すべき資料

ベンダーからより良い提案を受けるために、自社の状況や要件をまとめたRFPを作成しますが、RFPだけでは十分な情報を提供することができません。ベンダーに対して業務やシステムの現状、目標像を詳しく伝えることにより、提案の範囲は広がります。このような情報を伝えるためには、RFPとは別に資料を作成し、添付します。RFPに添付する一般的な資料は、次の通りです。

 

■現状を説明するための資料
現状システム全体図:現状システムの全体構成図。周辺システムとの連携も記載。
現状業務フロー:現状業務の流れをフロー図で解説。
現状帳票:現在使用している帳票の様式集。
現状インターフェース一覧:現在使用しているインターフェースの内容、データ形式、連携頻度等を一覧化。

■システム構築後の目標像を表す資料
目標システム全体図:目標とするシステムの全体構成図。周辺システムとの連携も記載。
目標業務フロー:目標システム構築後に想定している業務フロー。
目標インターフェース一覧:目標システム構築後に想定しているインターフェースの一覧。

■回答における指定フォーム
システム要件一覧(機能):システムの機能要件を一覧化。回答用のフォームとして使用。
システム要件一覧(その他):利用環境、性能等の機能以外の要件を一覧化。回答用のフォームとして使用。
見積回答シート:見積り回答用の様式として提示。
質問表:質問受付用の問い合わせフォームとして提示。

 

ベンダーに対して現状と目標を伝えることで、自社の状況、要求を正しく理解してもらうことができ、より具体的な提案内容になります。表面上の提案よりも、一歩踏み込んだ内容になりますので、各種要件に対する対応方法も現実的なものになります。

なお、最後の「回答における指定フォーム」については、各ベンダーからの提案の比較作業を容易にすることができますので、必ず添付することをお勧めします。

 

 

RFP作成の留意点

システム選定において、RFPはベンダーに対して自社の要件や情報を正しく理解してもらうための重要な資料です。ベンダーに『正確に理解してもらう』ためのRPFを作るには、3つの重要なポイントがあります。

 

①首尾一貫した内容にする
例えば、システム構築の目標として「パッケージの標準機能を最大限活用する」と掲げておきながら、要求事項に「現行システムにある機能を全て実装する」と記載しますと、ベンダーはどちらを優先すべきか判断ができなくなります。システム構築の基本方針を定め、これに一致しない要件は記載しない(記載させない)というルール決めることで、一貫性を持たせたRFPを作成することが可能となります。

②必要な要件を漏れなく洗い出す
RFPの作成において、現場や経営層からは様々な要望がでてきますが、全てを解決できるシステムは存在しません。出てきた要望を全て機能要件としてまとめてしまうと、本当に必要な要件が埋もれてしまうことがあります。重要なのは、『全ての要件を漏れなく洗い出す』ことではなく、『本当に必要な要件を漏れなく洗い出す』事です。何をとって、何をあきらめるのか、この線引きを決めることも大切です。

③曖昧さを極力残さない
要件の記述が曖昧であると、ベンダーによって解釈が異なってしまい、システムの比較を適切に実施することはできなくなります。例えば、「見積書を作成できること」と書いた場合、ポジティブなベンダーは何らかの見積書発行機能があれば"○(できる)と答えます。一方で、ネガティブなベンダーは、一般的に見積書は企業毎に固有の条件(顧客に応じた様式の作成等が)多い領域ですので、これだけでは分からないと判断し△(条件による)と答えます。このような状況では判断ができません。「顧客ごとに異なる様式の見積書を作成できること」といった具合に、極力曖昧さを残さない表現にする必要があります。

 

自社の状況や要件をベンダーに正しく理解してもらうためには、上記3つのポイントを踏まえてRFPを作成する必要があります。ベンダーに提出する前に第三者に確認してもらい、正確に伝わっているかを確認するとよいでしょう。

 

まとめ

■RFPを作成することより得られる効果
RFPは作成に多くの労力を要するが、「要件の抜け漏れを防ぐ」、「定量的にシステムを比較することができる」、「システム選定時の負荷を軽減できる」、「正確性の高い見積りが得られる」といった効果がある。

■RFPには何を記載すべきか?
一般的には、「提案依頼の趣旨」、「会社概要等」、「システム選定プロジェクトの概要」、「提案の前提条件」、「提案要件」、「提案依頼事項」、「提案依頼要領」といった内容を記載する。

■RFPに添付すべき資料
RFPの本文だけでなく、現状と目標のシステム全体図、業務フロー、インターフェース一覧といった資料を添付することで、自社の状況・要件をベンダーに正確に伝えることが可能となる。

■RFP作成の留意点
自社の状況や要件を正確にベンダーに理解してもらうためには、曖昧さのない、首尾一貫した内容のRFPを作成する必要がある。また、全ての要望を満たすシステムはないため、本当に必要な要件を取捨選択することも必要。

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