RPA開発・運用を円滑に進めるために~RPA開発者の悩み~

2020年12月10日

 

働き方改革や業務自動化の推進で、多くの企業に導入されているRPAですが、その開発や運用に難航している企業は少なくありません。
一般的な業務システムと違い、RPAの開発や運用は一度構築すれば終わりというものではありません。作成したRPAに対して定期的なメンテナンスが必要になります。これが案外根気のいる作業で、通常の業務と並行してRPAのメンテナンスを行う場合には、その負荷に耐えられず、RPAの運用を諦めてしまう会社も存在します。
RPAの開発・運用には、業務とRPAの知識のどちらもが必要となるため、開発者に求められる役割が大きく、負担になる傾向があります。しかし、RPAの開発や運用がスムーズに進むと、得られる効果は非常に大きくなります。そのため、開発・運用のプロセスはとても重要です。
今回の記事では、RPAの開発・運用を円滑に進めるためのポイントを開発者の目線から解説します。

 


この業務、RPAでできますか?

RPAの開発・運用方法は、大きく分けて2つのパターンがあります。1つは、実務担当者が開発を行う「現場主導型、もう1つは社内にRPA専門のチームを設けて開発を行う「専門チーム主導型です。RPAの開発や運用を行うには、一定の知識やスキルが求められることや、作成したロボットの一元管理が容易なことから、多くの企業は「専門チーム主導型」を選択しています。しかし、「専門チーム主導型」でRPAの開発・運用を進める場合には、注意しなければならないことが1点あります。それは、RPA開発者と実務担当者のRPAに対する認識の違いです。

 

「この業務は、RPAで自動化できますか?」
RPA開発者として、実務担当者と話をしていると、このような質問がよく出てきます。専門のRPA開発・運用チームを設ける場合、ほとんどの会社ではRPAの教育を専門チームだけに行います。そのため、業務自動化を依頼する実務担当者は、RPAのことをよく知りません。その状態で、自動化したい業務を申請するのですから、本当に自動化できるのかわかりません。開発者としては、もちろん可能だと回答してあげたい気持ちになりますが、実はなかなか回答が難しい質問です。

 

務自動化の可否を判断するためには、処理方法や判断基準等の細かい情報が必要となります。この詳細な情報は、RPAの設定に必要となるため、RPA開発者は実務担当者からのヒアリングにとても神経を使います。ところが、RPAに対する知識が実務担当者にないと、この業務に対するヒアリングで必要な情報が収集し辛くなります。RPA開発者と実務担当者の認識のズレが、スムーズなRPAの開発・運用を阻害する一番の要因といっても過言ではありません。

 

 

RRA開発者の悩み

RPAの開発者は実務担当者から業務に対するヒアリングを行い、ロボット作成に必要な情報を収集し、シナリオ(RPAの設計)を組み立てます。そのため、『業務ヒアリング』がロボット作成の肝といっても過言ではありません。しかし、RPA開発者と実務担当者の間でRPAに対する認識が異なっていると、ヒアリングがスムーズに進みません。業務ヒアリングにおいて、RPA開発者を悩ませるポイントは3つあります。

 

①業務手順が整理されていない
実務担当者から業務自動化の依頼を受け、業務に対するヒアリングを開始しますが、この時点で業務手順がはっきりしていないことがあります。ロボットは指示されたことしかできないため、曖昧な手順を空気を読んで実施することはできません。業務ヒアリングの段階で、手順が整理されていない場合には、RPA開発のスタートが大幅に遅れることになります。

②処理する際の判断基準が曖昧である
RPAを開発する際には、処理対象のデータや、判断基準が明確である必要があります。Aの場合はB、Cの場合はDというように判断基準が定まっていれば問題無いのですが、Aの場合Bが多いが、時々Dになることもある、というような場合には注意が必要です。時々Dになるケースをどのように判断しているのか基準が明確でない場合、ロボットを作成することはできません

③1つ1つの処理の意図が不明である
RPAは指示されたことを忠実に行うため、ケアレスミスをしないというメリットがあります。そのため、人が行う業務手順の中に、ケアレスミスのチェック作業が含まれている場合、ロボットに組込む必要はありません。しかし、1つ1つの処理がどのような意図で行われているかを実務担当者が把握していない場合、不要な手順をロボットに組込んでしまう可能性があります

 

これらのポイントが業務ヒアリングの段階で発覚すると、RPA開発に遅延が生じスケジュールが滞ることになります。

 

悩み解決の3つのポイント

「業務手順が整理されていない」、「処理する際の判断基準が曖昧である」、「1つ1つの処理の意図が不明である」といったRPA開発者を悩ませる3つの問題がありますが、実はこれらについて単純な解決方法があります。

 

①実務担当者に向けたRPA基礎教育を行う
RPA開発者を悩ませている問題は、すべて実務担当者がRPAを理解していないことが根本としてあります。何の知識もない状態では、RPAで何ができるのか、RPA開発者がどのような情報を求めているかイメージすることができません。基礎教育を行うことで、共通のイメージを持ち、RPA開発者と実務担当者の認識のズレを減らすことができます

②RPA開発前に業務手順を整備する
RPAの開発を始める前に、実務担当者に業務手順書を作成してもらえると開発がスムーズになります。手順書があると、それをもとに業務に対するヒアリングができるため、ヒアリングの精度が上がり情報の漏れが少なくなるからです。手順書には、その業務内で使う資料やツール、判断基準、その処理の意図がすべて書き出されているとベストです。このように業務手順が明確化されていると、開発者はRPAで設定すべき処理と設定不要な処理が判断が容易になります。

③RPA開発に必要な情報を実務担当者と共有する
RPA開発の際、実務担当者は業務自動化を依頼するのみで、その後のスケジュールや実務担当者が準備しておくべき情報を伝えられていないことがよくあります。RPA開発者は、実務担当者から必要な情報を受け取ることができるよう、あらかじめスケジュールや提供してほしい情報を共有すると、認識の齟齬がなく進めることができます

 

RPA開発者の悩みのほとんどは、実務担当者とRPAに対する認識が違うことで生じています。そのため、実務担当者にRPA知識やRPA開発に必要な情報をインプットし認識を近づけることで、開発をスムーズに進めるだけではなく、手順改定やイレギュラーへの対応等、運用面の負荷も軽減することができます

 

RPA開発・運用を円滑に進めるために

RPA開発者の視点から、RPA開発の悩みと解決のポイントをそれぞれ記載してきましたが、一番大切なのは、RPA開発者と実務担当者のお互いの知識や経験を尊重し、相互理解に努めることです。
専門のRPA開発・運用チームを設けている場合、実務担当者にRPA開発の進捗や状況が伝わらず、業務自動化の申請を出したものの、いつ自動化されるのか、自動化が可能なのかもわからないという話を聞くことがあります。このような状況になってしまうと、実務担当者からはRPAに対する期待値が下がり、協力体制も組みづらくなってしまいます。RPA開発者としても、そのような状況は好ましくありません。

どれだけRPAの知識があっても、実務担当者の協力が無ければ、効果的なロボットを増やすことができません。また、業務自動化のためには、業務知識だけでは限界があります。どちらか一方の知識だけでは、ロボット作成に必要な観点が不足してしまうため、効果的なロボットを作成するためには、RPAの仕様や特性と業務の内容の、両方を理解する必要があるのです。

 

 

RPAの開発は、一度開発したら終わりとはならず、追加開発や定期的なメンテナンスがコンスタントに発生するという特徴があります。そのため、実務担当者とRPA開発者は、開発の時だけでなく、定期的なメンテナンスも兼ねた情報共有ができる運用体制ができていることが望ましいでしょう。円滑なRPA開発・運用によって効果的なロボットを増産するためにも、開発者と実務担当者に対する認識のズレは解消する必要があるのです。

 

まとめ

■この業務、RPAでできますか?
・RPAの導入には、実務担当者がRPA開発を行う「現場主導型」と、専門のチームがRPA開発を担う「専門チーム主導型」の2つのパターンがあり、「専門チーム主導型」を選択する会社が多い。
・「専門チーム主導型」の場合、実務担当者へのRPA教育が積極的に行われないことから、開発者と実務担当者のRPAに対する認識が異なり、RPA開発に支障が生じることがある。

■RRA開発者の悩み
RPA開発の肝となる業務に対するヒアリングで、以下の問題が発生する。
①業務手順が整理されていない
②処理する際の判断基準が曖昧である
③1つ1つの処理の意図が不明である

■悩み解決の3つのポイント
RPA開発者の悩みを解決するためには、以下の対応が必要。
①実務担当者に向けたRPA基礎教育を行う
②RPA開発前に業務手順を整備する
③RPA開発に必要な情報を実務担当者と共有する

■RPA開発・運用を円滑に進めるために
・RPA開発者と実務担当者がお互いの知識や経験を尊重し、理解しあうことが重要である。
・RPA開発者と実務担当者間で、必要な情報を適切に共有できる運用体制が整備できていることが望ましい。

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