ありがちな予算管理業務の課題~予算入力部門と予算管理部門の観点~

2021年01月14日

 

日本では3月決算の企業が7割近くを占めていますので、前年の秋頃から予算策定業務が始まり、遅くとも翌年の2月中にはほとんどの企業で予算が確定します。予算は、全体を統括・管理する「管理部門」と、予算を作り入力する「入力部門」で作りあげていきます。予算策定開始から確定するまでに最も苦労しているのが予算管理部門ですが、どのような工程で予算を固め、どのように予実差異を分析しているのでしょうか?また、予算管理業務の中で、予算管理部門とは異なる立場の入力部門は、どのような課題と向き合いながら作業をしているのでしょうか?

今回は、予算の業務内容に加えて、予算管理部門と予算入力部門が抱える代表的な課題を幾つか取り上げ、その解決策を紹介していきます。

 


『予算管理』の業務とは?

予算管理業務は、予算を作成する『予算策定業務』と、予算の達成状況を管理する『予実管理業務』に分類されます。

 

■予算策定
予算策定とは、予算対象期間における企業の目標を設定し、目標を達成するための売上や経費を定める業務となります。まずは、予算策定方針を定め、そのうえで損益予算や財務予算、総合予算を固めていく流れとなります。
①予算策定方針の決定
経営層が各部門に対して目標の売上や利益などの予算方針を示します。その予算方針の原案は、一般的には経営企画部や経理部など予算管理部門が作成し、予算会議に承認されてから決定されます。
②損益予算・財務(資金)予算の策定
予算方針が決まれば、予算管理部門は予算入力部門に方針を通知します。予算入力部門はその通知を基にして、損益予算の作成に必要な売上予算や経費予算を予算管理部門に提出します。そのタイミングで、売掛金や支払手形などを合算した財務予算も作成していきます。
③総合予算の編成
損益予算と財務予算が集計できたら、予算管理部門は総合予算を作成します。その際、予算管理部門は予算入力部門に数値の正当性や設定理由などを確認する必要があり、もし正当性が取れない場合は作り直すケースもあります。

 

■予実管理
予実管理とは、経営目標を実現するために予算と実績を比較・分析する業務となります。企業の予算に対する実績を比較分析することによって、予算の達成度や今後の課題を明らかにすることができるのです。
①予算と実績の差異分析と課題把握
営業活動の結果、予算と実績には差異が生じます。そのため、必ず予実差異を把握し、迅速な改善を図ることが求められるのです。各部門の結果を集計して達成要因もしくは未達成要因や課題を分析していきます。
②解決策の検討と意思決定
成果を上げるための対策や課題を解決するための方法を洗い出していきます。迅速に経営層が意思決定をするための材料や新たな施策を投下するための時間の確保を行います。

 

このように、予算管理業務は、実際に予算を作り上げていく段階の「予算策定業務」と、作り上げた予算と実績を比較・分析する「予実管理業務」の2つから成り立っているのです。

 

予算策定における予算入力部門と予算管理部門の課題

予算策定業務で発生する代表的な課題を取り上げます。

 

■予算入力部門の課題
①前年同月の実績金額を予算策定する際の参考にしたいが、前年の実績データについては別の資料で管理をしているため、数値を確認するのに手間と時間がかかってしまう。
②財務数値以外の情報(新規顧客数・既存顧客数・部門の人員推移など)を参照したいが、管理資料が一元化されていないため、各担当部門に問い合わせをしなければいけない。
③予算入力ファイルをExcelで運用しているため、策定した予算数値に対して、修正や差し戻しが発生した場合、予算入力ファイルを再作成しなければいけないため、物理的にファイルの数が増えてしまい、最新版のファイルが分からなくなってしまう。
④Excelの予算入力ファイルを保存するときに、Excelが原因でデータの内容が破損してしまい、作成した内容が消えてしまう。

 

■予算管理部門の課題
①予算入力部門にExcelの予算入力ファイルを配布した後、予算策定状況を把握するための正確な進捗状況がわからない。
②予算を入力する部署や支店などの数が多いため、複数のファイルが混在し、予算入力ファイルの管理が煩雑になってしまう。
③予算入力部門から予算ファイルを回収した際、現場がExcelの行や列、計算式を勝手に追加・変更していることがあるため、変更箇所を修正しなければいけいない。
④予算管理部門の前任者が作成したExcelを当年度用に作り直す場合、Excelに組まれている計算式やマクロが煩雑で、思うようにカスタマイズすることができない。

 

予算策定時においては、「参考となる資料やデータの参照がしにくい」、「ファイルのやり取りが多く予算ファイルの最新版がわからなくなる」、「進捗管理が困難」といった課題が多くの企業で見られます。

 

予実管理における予算入力部門と予算管理部門の課題

予実管理においての課題はどのような内容があるのか、見ていきます。

 

■予算入力部門の課題
①予算に対する実績が明らかになった後に万が一、予算が未達だった場合は今後の改善計画や施策の検討に移りたいが、情報が共有されるまでに時間がかかり、スピーディーに対策が打てない。
②予算と実績の数値を詳細に比較して、差分や内訳などを把握したいが、予算管理部門からフィードバックを受けるのに時間がかる。
③各現場の担当者が個人で実績データを管理している場合があるため、正確な数値を埋め込んで予算と実績の比較資料を作成することができない。
④様々な切り口から予実差異を分析するため、チャートやグラフなどを使用した分かりやすいレポートを確認したいが、数値だけの無機質なレポートを提出される。

 

■予算管理部門の課題
①毎月の月次処理の後、予算と実績の差分を経営層や予算入力部門へ迅速にフィードバックをしたいが、実績データを販売管理システムや会計システムからエクスポートするのに時間がかかってしまう。
②予算と実績を比較したうえで、経営層へのレポートをExcelで作成したいが、実績データ量が膨大に存在するため、Excelで対応するには限界を感じてしまう。
③予算や実績を部門別や商品別、プロジェクト別などの細かい切り口で集計したいが、その分のデータ量が増えてしまい、処理の時間が大きくかかってしまう。
④Excelには様々なチャートやグラフの機能があるが、グラフィカルなレポートを作成するためには、加工作業が必要となり、この作業に多大な労力と苦痛を伴ってしまう。

 

予実管理では、「予実分析結果のフィードバックに時間がかかる」、「情報が多すぎてしまい、報告用レポートをExcelで作成できない」といった悩みを抱える企業が散見されます。

 

予算管理業務の課題解決策

予算策定と予実管理において、予算入力部門と予算管理部門に共通する課題を整理すると以下の様になります。

 

①予算策定の参考資料やデータを参照しにくい
②予算ファイルの最新版がわからなくなる
③予算策定の進捗管理ができない
④予実分析結果のフィードバックに時間がかかる
⑤報告用レポートをExcelで作成できない

 

上記の課題に対して、どのような解決策があるのでしょうか?
①予算策定の参考資料やデータを参照しにくい
日々の実績データを溜めこみ、次年度予算の項目と並べて比較できるようなシステムを導入することが理想的である。
②予算ファイルの最新版がわからなくなる
予算入力部門向けに予算策定の流れをまとめたマニュアルを作成し、予算ファイルの命名ルールを定めておく。
③予算策定の進捗管理ができない
予算入力部門の動きを把握できるように進捗管理表を作成し、週に1~2回、予算管理部門へ状況報告するルールを設ける。
④予実分析結果のフィードバックに時間がかかる
実績データを集計し、迅速に分析結果を関係者に共有できるようなシステムを導入することが理想的である。
⑤報告用レポートをExcelで作成できない
Excelの機能や能力の限界に根差した課題のため、Excel以外のツールを利用する必要がある。

 

 

最近ではコロナ禍で働き方が一変し、自宅でのリモートワークを定着させたり、非効率な業務を見直し、改善を推進している企業が増えています。このような状況下で予算管理業務においては、どのように改善すべきなのでしょうか?例えば、「情報を一元化して迅速なフィードバックをするために予算管理業務の専用システムを導入する」、「Excelの計算式やマクロが煩雑でブラックボックス化しているため、Excelの運用方法を改善する」、「属人化によるリスクを解消するために、誰でもわかるマニュアルを設ける」など、その解決策は多岐にわたります。いずれにしても企業の現状や課題、方針に合わせた対応策や改善策を講じることをお勧めします。

 

まとめ

『予算管理』の業務とは?
☑予算策定とは、予算策定期間における企業の目標を設定し、目標達成をするための売上や経費を定める業務である。
☑予実管理とは、予実差異を管理し、経営目標を実現するために行うための業務である。
予算策定における予算入力部門と管理部門の課題
☑予算入力部門では、予算入力ファイルをExcelで運用しているため、修正や差し戻しが発生した場合、最新版が分からなくなる。
☑予算管理部門では、予算入力部門にExcelの予算入力ファイルを配布した後、予算策定状況を正確に把握ができない。
予実管理における予算入力部門と管理部門の課題
☑予算管理部門から予算と実績の差異情報の共有が遅いため、タイムリーに改善策を打つことができない。
☑予算入力部門へ迅速に予実差異情報を共有したいが、実績データをシステムから取り入れるのに時間がかかってしまう。
予算管理業務の課題解決策
☑予算管理業務の専用システムの導入や、Excelの運用を見直すことで改善が期待できる。
☑企業の現状や課題、方針に合わせた対応策や改善策を講じる必要がある。

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