システム選定の基礎~ベンダー提案の評価方法~

2021年01月28日

 

業務上で利用するシステムは、企業を取り巻く環境の変化や新事業の発足等によって新しいものへと変えるタイミングがやってきます。新しいシステムの導入を検討するときには、RFI(情報提供依書)やRFP(提案依頼書)などの手段を用いて、複数のシステムベンダーからシステムに関する情報を集め、受領した提案書やプレゼンテーションを比較して評価します。ベンダー各社の提案内容やシステム自体の良し悪しを判断し、納得感のある評価結果を得るには、どのようにすれば良いのでしょうか。
今回は、ベンダーからの提案について恣意性を排除し、客観的に評価する方法をお伝えします。

 


ベンダー提案評価時の課題と解決

古いシステムのリプレイスや新システムを検討する場合、システムベンダーの選定を行います。そのために複数のベンダーを対象としてRFP(提案依頼書)を渡し、自社の状況を理解してもらったうえでシステム提案を受けることになります。ベンダー側は提供された情報を基にしてシステム提案書を作成し、提案内容のプレゼンテーションとシステムのデモンストレーションを行います。
提案を受ける企業側は提案書・プレゼンテーション・デモンストレーションの結果を評価し、最良なシステムと導入担当のベンダーを選択することになります。
この段階でよくある悩みが、どのように提案を評価をするかという点です。なぜなら、ベンダーからの提案を客観的に(恣意性を排除して)評価し、比較をしやすいようにしたうえで、社内の誰にでも結果を説明できる方法を作り上げなければいけないからです。恣意性を排除した比較を行うには、評価を数値化して結果を定量的に表現する方法を取ることが有効になります。評価の流れは以下のとおりです。

 

■評価視点を決める
ベンダーからの提案、プレゼンテーションやデモンストレーションを評価するための切り口を定める。

 

■評価項目を決める
評価視点の内訳を定める。

 

■評価視点と評価項目の配点を決める
評価を定量化するため、評価視点と評価項目の重みを考慮しながら点数を定める。

 

■評価基準を決める
評価者が提案書やプレゼンテーション・デモンストレーションの可否を表現するため、3段階~5段階の基準を定める。

 

■評価の最終結果を比較する
ベンダー各社の定量化した評価結果を比較し、契約するベンダーを検討する。

 

ベンダーからの提案を定量化して比較をするためには、評価視点や評価項目を細分化し、評価者が点数を付けやすくすることがポイントになります。

 

評価視点と評価項目

定量的な評価を行う準備として評価視点と評価項目を決めます。評価視点をシステムの面だけ見るように設定してしまうと、ベンダーの導入体制が弱くプロジェクトが進まない等のトラブルを招くことになります。ベンダーやシステムが自社にマッチしていることを総合的に判断するため、評価視点にはベンダーの信頼性、提案の妥当性、システム機能の網羅性、導入・運用コストを観点に加えます。評価項目は評価視点を構成する要素です。

 

■評価視点の例
ベンダーの信頼性:ベンダーの会社規模、最近の財務状況、システム導入の実績等から信頼できる企業であるかを評価する。
提案の妥当性:現状の課題や要望を理解し、情報に抜け漏れのない適切な提案であるかを評価する。
システム機能の網羅性:提示した機能要件や非機能要件に対応できるか、将来的な拡張性はあるか等を評価する。
導入・運用コスト:見積り金額は自社の予算感と合っているか、算出根拠は明確であるか等を評価する。

 

■評価項目の例
企業の評価項目:グループ企業も含めたベンダーの財務状況に問題はないか。同業他社への導入実績は充分か。
提案の評価項目:依頼時に指定したフォーマットで回答しているか。依頼した事項には漏れなく回答しているか。プロジェクトリーダーの経験は充分か。導入体制は充分か。導入計画は適切か。将来を見据えた提案があるか。
システム機能の評価項目:機能要件及び非機能要件の網羅性は高いか。非対応の要件への対応案はあるか。操作性は良いか。
コストの評価項目:イニシャルコストと5年間のランニングコスト、個別開発の予想されるバージョンアップ費用など。

 

評価視点と評価項目の内容は画一的なものではなく、選定対象にするシステムによって変化します。そして評価の結果は最終的な選定の根拠として残すことになります。後のトラブルを防ぐために、評価視点と評価項目は目的に合わせて必要十分になるように設定することが大切です。

 

評価項目の配点と評価基準

評価視点と評価項目を決定した後は、各項目を定量的に評価するため配点をしていきますが、導入するシステムやプロジェクトの内容により、自社がベンダーに期待することは変わります。自社が重視する観点を評価に反映させるため、評価視点と評価項目の配点には重みをつけて設定をします。

 

■システム機能の網羅性を重視する場合の例
【評価視点の配点(100点満点)】
ベンダーの信頼性:10点 提案の妥当性:30点 システム機能の網羅性:40点 導入・運用コスト:20点

 

【評価項目の配点(システム機能の網羅性:40点の内訳)】
機能要件への対応:20点 非機能要件への対応:5点 操作性:10点 将来的な拡張性:5点

 

配点を決めた後は評価者が選択する評価基準の設定を行います。評価基準は一般的には3段階~5段階の中で選ばれ、評価項目ごとに設定していきますが、段階を奇数にすると評価者が悩んだ際に中間点(5段階評価では3)が選ばれやすいため、各社の結果に差がつきづらい傾向があります。そのため、4段階等の偶数にしておく方が評価結果が分かれ、比較しやすくなります。

 

■評価基準の設定(例)※4段階評価
【操作性】
1:複雑で難易度が高い。
2:操作教育を受けても慣れに時間を要する。
3:教育を受ければ問題なく操作できる。
4:誰でも教育不要で操作できる。

 

評価項目の配点と評価基準を組み合わせることにより、評価項目の点数が算出されます。例えば操作性で2を選択した場合は、(配点)10点×(評価)2÷4段階=5点となります。他の評価項目も同様に基準から選択していくことで、評価視点の点数が積み上がり、結果としてベンダーの提案は100点中の何点であるかが計算されます。
あらかじめ評価視点や項目の配点を決めている中で、評価者が各項目の評価基準値を選択することにより自動的に点数が決まるため、客観的な評価結果を得ることが可能になります。

 

評価結果の比較

ベンダー提案の比較には、設定した評価視点と評価項目の結果を用います。総合点の高いベンダーが発注対象として有力となりますが、重視する評価視点の点数や、点数の理由等も考慮しながら検討を進めていきます。評価の流れは次のとおりです。

 

①ベンダーから提案書を受領する。
②評価者が提案書に対し評価項目に沿って点数を付ける。
③ベンダーから提案のプレゼンテーションとシステムのデモンストレーションを受ける。
④評価者が評価を更新する。
⑤評価を集計し、内容を協議する。(協議の結果によって点数調整をする)
⑥最終結果を比較し、発注先のベンダーを決定する。

 

ここからはシステム機能の網羅性を重視した比較の例をご紹介します。

 

A社(合計70点)
□ベンダーの信頼性:15点 □提案の妥当性:20点 □システム機能の網羅性:15点 □導入・運用コスト:20点

 

B社(合計70点)
□ベンダーの信頼性:25点 □提案の妥当性:20点 □システム機能の網羅性:10点 □導入・運用コスト:15点

 

C社(合計40点)
□ベンダーの信頼性:5点 □提案の妥当性:5点 □システム機能の網羅性:20点 □導入・運用コスト:10点

 

まず合計が低いC社は落選となります。システム機能の網羅性は3社中で最高得点ですが、他は低評価となっています。企業の信頼性やプロジェクト進行に不安があるC社を選択すると、導入自体がうまくいかない可能性があります。
A社とB社は同点ですが、機能面を重視する場合はシステム機能の網羅性の得点が上回るA社が発注候補である、という結論に至ります。

 

今回ご紹介した方法で評価を点数化して比較を行えば、どのベンダーとシステムがより自分たちに合っているかという点を明確に判断できるようになり、恣意性を除いたロジカルな結果として納得感が得られやすいため、社内にも説明がしやすくなります。

 

 

まとめ

■ベンダー提案評価時の課題と解決
☑ベンダー提案は客観的に評価し、比較できるようにすることが課題になる。
☑課題解決には、評価を数値化して定量的に表現する方法が有効である。
☑評価視点と評価項目の決定、配点、評価基準の決定を行う。
☑評価視点や評価項目を細分化し、評価者が点数を付けやすくすることがポイントになる。

 

■評価視点と評価項目
☑ベンダーやシステムを総合的に判断するため、評価視点にはベンダーの信頼性、提案の妥当性、システム機能の網羅性、導入・運用コストを観点に加える。
☑評価の結果は最終的な選定の根拠として残すことになるため、評価視点と評価項目は目的に合わせて必要十分になるように設定することが大切である。

 

■未実現損益の消去に関する税効果会計
未実現損益は、同じグループ会社間で売買され、かつ期末時点でグループ内に留まっている資産に含まれている損益。企業グループ外部へ資産を売却できるまでは、その損益が実現しているとは言えないので、連結上消去が必要。未実現利益の消去により連結上の利益が減少し、それに対応する税金費用を調整するため、連結上借方で「繰延税金資産」(B/S)、貸方で「法人税等調整額」(P/L)を計上する。

 

■評価項目の配点と評価基準
☑評価視点と評価項目の配点には自社が重視する観点を反映させるため、配点には重みをつけて設定する。
☑評価基準は一般的には3段階~5段階の中で選ばれ、評価項目ごとに設定する。
☑評価視点や評価項目の配点が決まっており、評価基準値を選択することにより自動的に点数が決まるため、客観的な評価結果を得ることが可能になる。

 

■評価結果の比較
☑合計得点が同じ場合は、重要視する『評価視点』で得点の高いベンダーを選定する。
☑評価を点数化して比較を行うことにより、恣意性を除いたロジカルな結果として納得感が得られやすい。

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