IT運用保守業務が直面している課題やリスクとその対策

2021年04月22日

 

1960年代にメインフレーム、90年代にERPが日本企業で使い始められ、今やあらゆる企業・業務になくてはならない存在となった『情報システム』。一昔前までは、システムの導入といえば、サーバーを構築し、アプリケーションのセットアップ、テストなどといったプロセスを経てようやく使い始めることができるようになり、導入を決めてから利用開始まで短く見積もっても数か月はかかりました。しかし、最近ではSaaSなど、申し込みをすればすぐに利用できるシステムが増えてきています。すぐに利用を始められ、すぐに利用を止められるという特長は、ユーザー部門にとって非常にありがたいことですが、システムの安定稼働やセキュリティといった側面(IT運用・保守の立場)から見ると非常に厄介です。
今回は、業務に必要不可欠な情報システム(IT)の運用保守業務について、課題やリスクとその対応方法をご紹介します。

 


IT運用保守業務の概要

私たちが日々使っているPCなどのIT端末や、販売システム、営業システム、会計システムなどといったソフトウェア・アプリケーションは、仕事を実施するうえでなくてなならない存在です。現在のようにITがそこまで発達していなかった時代は、当然ながらここまで重要性は高くありませんでしたが、今やITなしでは仕事ができないといっても過言ではないほど、ITに依存しています。
このITにトラブルや問題が発生し、使用できない状態になると、仕事自体が止まってしまいますので、そのような事態にならないように維持、管理する仕事が『IT運用保守』となります。では、IT運用保守の仕事はどのようなものがあるのでしょうか?業務の括り方は色々な考えがありますが、主に以下の業務が挙げられます。

 

【ヘルプデスク】
ITに関する問い合わせ窓口がヘルプデスクです。パスワードを忘れてしまった、PCが動かなくなってしまった、システムの使い方が分からないなどといったトラブルの連絡を受け、解消する業務です。

 

【アカウント管理】
各システムにログインするためのユーザーIDやパスワードの管理を行います。社員の入退社、異動があった場合に、IDの登録や削除、IDに付与する権限の変更などを行います。

 

【ソフトウェア管理】
バージョンアップ対応、バッチやインターフェースの監視・修正・復旧、障害や復旧対応といった業務で使うソフトウェアやアプリケーションの管理を行います。

 

【ハードウェア管理】
皆さんが業務で使うPC端末のほか、ネットワーク管理(構成・障害・性能・機密等)や、サーバーの管理を行います。

 

このように、IT運用保守の業務は、いわば「縁の下の力持ち」で、私たちの仕事を支える必要不可欠なものばかりなのです。

 

IT運用保守業務が直面している課題とリスク

企業を取り巻く環境の変化は、昔と比べて今の方が早いといった傾向が見られますが、ことITに関しては急速な技術革新によって日々目まぐるしく変わっています。IT運用保守の業務に関係する主な環境変化としては、『SaaSの普及によるソフトウェアの提供形態の変化』や『新型コロナウィルス感染症対策を発端としたワークスタイルの多様化』の2つが挙げられます。

 

■SaaSの普及によるソフトウェアの提供形態の変化
一昔前までは、新しいソフトウェアやアプリケーションを使うとなると、サーバー等の環境整備が必要でした。情報システム部門と業務部門共同で要件定義やテストを進める必要があり、検討から導入、利用開始までの長期間に及ぶことが通例でした。しかし、最近はSaaSタイプのソフトやアプリが増え、新しいアプリやソフト導入・廃止の敷居が昔と比べると圧倒的に下がりました。
業務部門にとっては非常に喜ばしいのですが、IT運用保守の立場からすると、アプリやソフトが増えるたびにその知識や習熟が必要になりますので、入替えの度に業務負荷が高まります。

 

■新型コロナウィルス感染症対策を発端としたワークスタイルの多様化
新型コロナウィルス感染症が広がり、リモートワークの推進が一気に広まりました。リモートワークを実現するためには、ペーパーレス化を進める必要があります。このような状況の変化にともない、新しいシステムやネットワークの構築、さらに情報セキュリティ対策も求められるようになりましたので、これらの対応に多くの工数が必要になります。

 

このように、IT運用保守の業務は環境変化に応じて増えていることが分かります。さらに、IT運用保守業務を担う情報システム部に対しては、DXを始めとするIT戦略や企画といった対応も求められます。人材を補強して進めたいところですが、IT人材の不足が深刻化していますので、体制強化は困難な状況が続いているのです。

 

IT人材不足にどう対応するか?

経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」では、2025年に約36万人、2030年には約45万人のIT人材が不足すると予想されています。この慢性的な人材不足を引き起こしている主な要因は、以下の通りです。

 

・IT市場・Web業界の急成長による人材需要の増加
・IT技術者の高齢化による定年退職者の増加
・急速なIT技術変化に伴うスキルの早期陳腐化

 

今後ますます深刻化するIT人材不足の課題ですが、対応策として以下のものが挙げられます。

 

■IT人材を社内で育成する
IT人材の育成ですが、短期間で達成できるものではありません。最低でも2~3年はかかりますし、ベテランと言われるまでには5~10年は見ておく必要があります。しかし、せっかく育てたとしても、その人材が企業内に留まるとは限りませんので、常に一定数の育成人材を確保し、推進する必要があります。

 

■IT人材を早期に確保する
国内での人材確保が難しい状況にありますので、海外に目を向けて人材を確保するという方法もあります。海外であれば、国内よりも安価で人材を確保することができますが、海外人材雇用のためのしくみを作ったり、言語の問題をクリアしなければならなかったりと、様々な障壁が存在します。

 

■IT業務をアウトソーシングする
IT人材の確保が困難であれば、業務そのものを企業の外に出してしまうといった方法もあります。専門の業者に委託することで、人材不足は解消されますが、業務委託料(外部コスト)が発生するといったデメリットも存在します。

 

IT人材不足に対して、社内で育てる、海外で採用するという手段がありますが、どちらもハードルは高く、実現には相応の時間がかかります。アウトソーシングは、短期間で対応ができますが、業務委託料がかかりますので、どちらが良いかは緊急度に応じて変わってきます。

 

BPO・ITOサービスの活用事例

IT人材不足の課題に対して、①社内育成、②海外雇用、③アウトソーシングといったの3つの対策が考えられます。①、②は対応に時間のかかりますが、主に内部コストで賄うことができるため、社内の理解を得やすいというメリットがあります。③のアウトソーシングは、短期間で効果が出る一方、外部コストとなりますので、社内の理解が得づらいといったデメリットがあります。
しかし、IT運用保守のうち、アウトソーシングの方が圧倒的にコストメリットが発生する業務があります。その業務とは、『常に新しい知識やスキルが求められる業務』です。例えば、新しいソフトやアプリの利用が決まった場合、ヘルプデスクでは、そのソフトやアプリの質問に対して回答ができるようにキャッチアップを行わなければなりません。アカウント管理も同様です。社内の人材で対応する場合、新しいソフトやアプリの知識・スキルを習得するために相応の時間をかけなければなりません。
アウトソーシングの場合は、一般的なソフトやアプリに関する知見は既に持っていますので、キャッチアップの時間は必要なく、その分のコストが安くなります。SaaSなど、他の企業でも使われているソフトやアプリに関するIT運用保守業務は、アウトソーシングで対応したほうが割安になることが多いということが言えます。

 

ITの人材は、今後慢性的に不足する傾向にある一方、SaaSの普及などにより、情報システム部が管理しなければならないソフト・アプリは増え、それに比例して運用保守業務も負荷が高まっているのが現状です。この問題の打開策として、IT人材の育成といった手段もありますが、育成には相応の時間がかかりますので、BPO・ITOの活用したIT運用保守体制の再編が最も有効といっても過言ではありません。

 

 

まとめ

■IT運用保守業務の概要
・IT運用保守は、ITにトラブルが生じると業務が止まってしまうため、トラブルが発生しないように管理する仕事。
・IT運用保守には、ヘルプデスク、アカウント管理、ソフトウェア管理、ハードウェア管理といった業務がある。

 

■IT運用保守業務が直面している課題とリスク
・SaaSの普及によりアプリ・ソフトの入れ替えが多くなることで、その知識や習熟が必要になり入替えの度に業務負荷が高まる。
・リモートワークの普及により新しいシステムやネットワークの構築、さらに情報セキュリティ対策も求められるようになった。

 

■IT人材不足にどう対応するか?
・IT市場成長による人材需要の増加、IT技術者の高齢化による退職者の増加などにより、2030年には約45万人のIT人材が不足する。
・IT人材不足の課題に対して、①社内育成、②海外雇用、③アウトソーシングといったの3つの対策が考えられる。

 

■BPO・ITOサービスの活用事例
・『常に新しい知識やスキルが求められる業務』は、アウトソーシングの方がコストメリットがある。
・他の企業でも使われているソフトやアプリに関するIT運用保守業務は、アウトソーシングで対応したほうが割安になる。

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