内部監査の品質評価~内部評価の概要~

2021年07月08日

 

不正や不祥事が発覚すると、企業の社会的な信用が低下するだけでなく、業績の悪化や対策費用の増加など非常に大きな影響を及ぼします。この不正・不祥事の防止策の一つとして『内部監査』の重要性は年々高まっていますが、内部監査は適切な基準を遵守し、一定水準以上で実施しなければ、有効的な監査ができず、リスクや問題点の早期発覚に至らない可能性があります。
有効的な内部監査を実施・継続するためには、客観的な評価が必要になります。内部監査が有効的に実施されているか評価することを『内部監査の品質評価』といい、『内部評価』と『外部評価』の2種類が存在します。その名の通り、内部評価は組織体内部で行われる評価で、外部評価は外部者によって行われる評価のことを言います。
今回は、内部監査の品質評価とはどのようなものなのか、その概要と内部評価についてご紹介します。

 


内部監査の品質評価の概要

内部監査の品質評価は、品質評価を行うこと自体が目的ではなく、内部監査の品質を維持・向上させることが目的となります。そして、内部監査の品質評価によって、品質が一定の水準に達しているとの結論に至れば、内部監査を利用している関係者は、内部監査の結果に一定の信頼を置くことが可能になります。

 

内部監査の品質評価は、『内部評価』と『外部評価』があり、さらにそれぞれ2つの種類が存在します。

 

■内部評価
①継続的モニタリング
内部監査部門の業務に対するモニタリング機能を組み込み日々継続的に品質評価すること。
②定期的レビュー
監査業務が終わった後、業務参加以外の者が国際基準等への適合性を判断する内部レビューのこと。

 

■外部評価
③フル評価
一連の内部監査の管理体制、業務を適格かを独立した外部評価者が評価すること。
④自己評価と独立した検証
内部監査の自己評価を、組織外の者が自己評価のプロセスを検証すること。

 

内部監査の品質評価を実施するためには、適合性を判断するための基準(判断基準)がないと評価はできません。また、評価を実施する際の行動基準に準拠して実施していない場合には、評価そのものの水準が確保されないこととなります。適合性を判断するための基準や評価を実施する際の行動基準としては「内部監査の専門職的実施の国際基準」や「内部監査品質評価ガイド」を参考に進めることとなります。

 

「内部監査の専門職的実施の国際基準」には「内部評価」の①か②及び「外部評価」の③か④のいずれか1つを実施することが要求されています。

 

内部監査の品質評価導入のメリットとデメリット

内部監査の品質評価は推奨されていますが、実施をしないでも罰則がないということもあり、8割以上の内部監査部門で品質評価は実施していないのが現状です。推奨されているため実施したいと考えている担当者も多くいらっしゃいますが、通常業務で手一杯で、なかなか手が回らないのが現状のようです。しかし、品質評価を導入することによるメリットは多くあります。一方、デメリットもありますのでそれも併せて記載します。

 

■メリット
①内部監査の水準が把握できる
内部監査の品質評価を実施することにより、自社の内部監査業務の水準を把握することができます。水準を把握すると課題が抽出できるようになり、改善すべき項目が明確になります。
②内部監査部門の方向性の検討材料になる
内部監査の品質評価には、指摘だけではなく、改善機会の認識および改善の方向性についてのアドバイスも含まれるため、これからの内部監査の方向性を決めるうえでの検討材料になります。
③品質評価実施の外部へのアピールが可能
品質評価の実施について、有価証券報告書やコーポレートガバナンス報告書等で外部に発信することにより会社が内部監査の品質向上やガバナンスの強化を行っていることをアピールすることができます。

 

■デメリット
①費用が発生する
内部監査の品質評価を初めて実施したり、外部評価を実施する場合は、外部の専門家に依頼することになりますので、費用が発生します。
②品質評価実施に対する工数が発生する
内部評価・外部評価いずれを実施したとしても、サーベイへの回答、ヒアリング、準備や報告書の作成などの作業工数が発生することになります。

 

品質評価は、時間または予算に余裕がないと実施することはできません。内部監査部門は、売上を生まない部署(コストセンター)であるため、コストをかけることが難しいのが現状ですが、客観的に監査の品質を確認し改善することは重要ですので、メリットをアピールし導入する方向に進めたいものです。

 

内部評価における『継続的モニタリング』とは?

内部監査の品質評価を実施する上で、内部評価の手法として『継続的モニタリング』と『定期的レビュー』があります。継続的モニタリングでは、内部監査部門の管理業務にモニタリング機能を体系的に組み込み、継続的に品質評価を行い改善活動を行います。内部監査部門の管理者が行うもので、各会社内での部門管理の手順でモニタリングを行います。

 

継続的モニタリングは「監査業務計画」「監査業務実施」「監査業務の結果伝達」等の各プロセスが内部監査規程やマニュアル等に準拠して実施されているか評価します。

 

・監査計画書のレビュー
・監査準備の監督
・往査監査実施の監督
・内部監査調書のレビュー
・内部監査報告書のレビュー
・検討会・報告会の監督

 

上記は内部監査部門の管理者が通常実施されている業務ですが、品質評価の結果を記録することが必要です。品質評価の一歩目は「継続的モニタリング」でありこの品質評価の積み重ねが、次の品質評価につながりますので、初めての品質評価をする場合は、まずは「継続的モニタリング」の導入をおすすめします。

 

内部評価における『定期的レビュー』とは?

「定期的レビュー」とは監査業務終了後、その監査業務に携わっていない担当者を監査部門長が任命し、評価基準を使用して国際基準等への適合性の評価を判断することをいいます。

 

継続的モニタリングが自社の管理基準への適合性を中心に確認するのに対して、定期的レビューにおいては国際基準等の基準(「内部監査の専門職的実施の国際基準」や「内部監査品質評価ガイド」)に内部監査業務が適合しているか確認する点が異なります。

 

「内部監査の専門職的実施の国際基準」は内部監査協会(The Institute of Internal Auditors)が制定した基準で、内部監査人が内部監査を実施する際の行動規範となります。つまり、この「内部監査の専門職的実施の国際基準」はあるべき姿であり、この行動規範が実施できていなければ、指摘することとなります。

 

一方、「内部監査品質評価ガイド」は社団法人日本内部監査協会が制定したものです。「内部監査品質評価ガイド」は国際基準や内部監査基準をもとに作成された品質評価マニュアルのため、品質評価を実施する際、参考資料となります。

 

「内部監査品質評価ガイド」によると定期的レビューについては、年1回定期的に実施することが推奨されています。

 

内部監査の品質評価における『内部評価』の実施方法

内部評価ですが、基準やガイドを参照しながら全て自社内で推進する方法と、外部の専門家(コンサルタント等)の助言を受けながら推進する方法があります。

 

■自社で推進する方法
内部評価を自社で行う場合、「内部監査の専門職的実施の国際基準」や「内部監査品質評価ガイド」のツール類を参考にしながら実施することになります。自社で推進すると、費用が発生しないというメリットがありますが、「内部監査の専門職的実施の国際基準」や「内部監査品質評価ガイド」を十分理解していない場合、十分な品質評価が行えない可能性がありますので、注意が必要です。

 

■外部コンサルタントに助言を受けながら推進する方法
外部コンサルタントを利用すると、当然ながら費用が発生します。また、依頼する範囲に応じて大きく費用は異なります。「内部監査品質評価ガイド」には品質評価に関する雛型がある程度そろっているため、自社でも進めることは不可能ではありません。しかし、外部のコンサルタントは、品質評価の経験や他社事例を十分に持っていますので、スムーズかつ効果的に進めることが可能になります。

 

このように、自社だけで推進する場合と、外部コンサルタントを利用する場合とで、それぞれメリットとデメリットが存在します。会社によって状況は異なりますので、個別の事情を照らし合わせて検討する必要があります。また、品質評価は一年で終わるものではなく継続的な対応が必要です。最初からフルスペックで実施するのではなく、簡易的な「品質評価」もありますので、スモールスタートで進めるといったことも可能です。
自社の内部監査の目指す姿を想像しながら、数年間のロードマップを作成し、より良い内部監査部門になるように品質評価を導入されてはいかがでしょうか。

 

まとめ

■内部監査の品質内部評価の概要
内部監査の品質評価は、内部評価と外部評価がある。内部評価には①継続的モニタリング、②定期的レビュー、外部評価には③フル評価、④自己評価と独立した検証と、それぞれ2つの種類が存在する。

 

■内部監査の品質評価導入のメリットとデメリット
品質評価導入のメリットは、内部監査の現状把握ができる、今後の内部監査部門の方向性の検討材料になる、外部へのアピールの3つが存在する。一方で、デメリットは、コストが発生する可能性があることと、品質評価の実施に対する作業工数がとられることである。

 

■内部評価における『継続的モニタリング』とは?
内部監査部門の管理者が行うもので、各会社内での部門管理の手順で行うモニタリングのこと。

 

■内部評価における『定期的レビュー』とは?
監査業務終了後、その監査業務に携わっていない担当者を監査部門長が任命した担当者が、評価基準を使用し、国際基準等への適合性の評価をすること。

 

■内部監査の品質評価における『内部評価』の実施方法
自社で実施する方法と外部コンサルタントに助言をうけながら実施する2つの方法がある。

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