予算業務の基礎知識~予算策定のポイントと流れを理解する~

2018年07月05日

 

一般的な企業では第3四半期を過ぎた頃に、次年度の予算検討を始めることが多いと思われますが、全社的な作業となり、苦労をされているというご意見もよく耳にします。
次年度もしっかりと売上・利益を上げ、その利益を投資して会社を成長させるサイクルを描いていくためには、予算を立てることが重要で、目標とする売上や費用の金額を積み上げていかなければなりません。
そのためには、どのような点に留意をして作業を進めていけばよいのでしょうか。

 

今回は、予算管理業務の始まりである策定作業のポイントを挙げた上で、どのような工程で予算が作られていくのかを整理して、お伝えしていきたいと思います。

 


予算策定に向けた2つのポイント

企業は自身の成長に必要な売上と費用を計る指標として、期のはじめに予算を策定します。
売上や費用の実績を上げる現場部門は、会社が決めた予算を達成すべく動かなければなりませんが、適時適切に動くためには、次に挙げる2つのポイントに留意して予算を策定することが効果的です。

 

1.予算策定には予算を管理する者が関わること
企業は部門や課など組織化され、それぞれが与えられた予算管理を行うようになっており、部長は部門の予算と実績を管理し、課長は課の予算と実績を管理しています。また、営業マン個人が売上予算を与えられているのであれば、その予算を達成するべく管理する必要があります。
その予算をなぜ達成しなければいけないのか、ということを理解して行動できるように、企業全体の予算を達成するには、部門はこれだけの予算を達成しなければいけなくて、さらにそのためには課の予算はこれだけ必要でと、個人レベルまで予算を浸透させる必要があります。
それには、予算を管理すべき人が予算策定の段階から密接に関わって、明確な予算を作り上げていく方法を取ることが大切です。

 

2.予算項目は予実管理が可能な粒度にすること
予実管理を行う上で重要なことは、予算に対して実績が芳しくない場合、その原因の説明ができるようにしておくことと、改善策を考えられるようにしておくことです。
部長や課長など予算を管理する人が原因分析を行えるようにしなければいけませんが、そのためには予算を策定する段階で費目を細分化しておくのが効果的です。
売上であれば店舗別や商品別、費用であれば内訳がわかるように細分化された予算であれば、差異が生じた箇所を特定しやすくなります。
但し、細かければよいというわけでもなく、部門や課または個人が管理しやすい粒度で設定することが必要となります。

 

 

予算を作る8つの工程

この章では、実際に予算を策定するときの流れをご紹介していきます。
細かい作業は割愛しますが、大きくは8つの工程に分かれます。

 

1.利益の予算金額を策定する
2.費用を予算化する~人件費~
3.費用を予算化する~減価償却費~
4.費用を予算化する~その他の費用~
5.売上予算を策定する
6.販売管理費を予算化する
7.各部門の予算を集計する
8.利益予算との差異を調整する

 

1.利益の予算金額を策定する
予算策定の第一歩は、企業が目標とする利益の金額を定めるところから始まります。
利益には種類がありますが、予算として用いられるのは営業利益もしくは経常利益とするケースが多くあり、経営層が決定するところになります。
営業利益:売上総利益-販売費及び一般管理費
経常利益:営業利益+営業外収益-営業外費用
資産運用などの財務的活動が多い企業では、経常利益を目標にすることもあります。
どの利益を対象とするかは企業の判断になりますが、金額を決めるときには直前の期の結果を参考にします。そこに次年度の増益予測などを加味して、目標金額を設定します。
利益の予算が決定した後は、各部門がその予算を達成できるように費用や売上の予算を検討していきます。

 

2.費用を予算化する~人件費~
利益予算が決まりましたら、まずは固定費の予算策定を進めますが、主な担当は経理部・人事部・経営企画部門などです。
人件費の場合は最初に、全ての部門の責任者が次年度の部門人員計画を立案して、予算を取り纏めている部門に情報を提出します。
人員計画を受領した担当部門は、各社員の基本給や各種手当などに基づいて次年度に発生する費用を試算し、部門別に人件費予算金額を算出します。
なお、1人当たりの人件費は大きく、予算に影響しやすい傾向がありますので、各部門においては、適正な人員を考える必要があります。
そして部門で増員する予定があれば、類似の社員を基にして人件費を増額します。
経理や人事総務など間接部門の人件費は、企業が定める按分比率などにより、各部門に配賦されるのが通例です。

 

3.費用を予算化する~減価償却費~
減価償却費の予算算出は業種や企業によって差が出る作業ですが、一般的には、経理部から各部門に固定資産のリストなどを渡し、次年度に購入予定の資産を記載して返してもらいます。その後、資産の見積り金額を基に算出します。

 

4.費用を予算化する~その他の費用~
その他の費用として考えられるのは、家賃、通信料、保険料などです。
これらには毎月定額の費目と、月々で変動する費目がありますので、どのような費目があるかを整理する作業が発生します。この作業を通じて次年度も必要な費目であるか、金額は妥当であるかなど、見直しも行っていきます。
これらも人件費と同様に、予算金額は企業が定める按分比率などにより、各部門に配賦します。
部門別の費用予算ができましたら、各部門の責任者に共有します。

 

5.売上予算を策定する
売上計上の発生する部門が費用の予算を受けた後は、次年度の売上予算について検討を始めます。
前期の予算や実績、次年度の見通しを基にしながら、経営層から各部門や課に求められている利益を達成できるように、毎月の目標金額を定めていきます。

 

6.販売管理費を予算化する
費用の一種として販売管理費があり、売上計上部門に策定を任されている場合は、売上予算と同時に対応が必要です。

 

7.各部門の予算を集計する
予算を取り纏めている部門は、各部門が策定した予算の結果を集計して合算し、全社の予算とします。

 

8.利益予算との差異を調整する
経営層が定めた利益予算と、各部門から集計した予算の利益金額に差異があり、目標に届いていない場合には、各部門との調整を行います。
基本的には売上を増やすか、費用を減らすことになりますが、どの部門に再検討をしてもらうかは、部門別の利益などを考慮しながら決めていくことになります。

 

 

 

予算策定を進めるにあたり

上記、予算策定のポイントと予算策定の流れをご紹介してきましたが、そもそも、予算を作ることや管理をする目的は何でしょうか。
冒頭でお伝えしましたように、予算を作ることは売上と利益を上げ、その利益を投資して会社を成長させるサイクルを描くためです。
そのことを予算策定担当の方々にご理解いただき、目的を意識しながら予算を検討できなければ、せっかく策定した予算が意味のないものになってしまいます。
組織の各人が割り当てられた予算の意味を知り、適切な行動を取れるようにするためにも、丁寧にその目的を伝えていくことが大切だと考えます。

 

まとめ

・予算策定に向けた2つのポイント
☑予算を管理すべき人が予算策定の段階から密接に関わって、明確な予算を作ることが大切である。
☑予実管理が可能なように、予算項目を細分化しておく。

 

・予算を作る8つの工程
☑予算策定は利益の目標を定めることから開始する。
☑利益の予算がが決まった後は、人件費や減価償却費などの費用予算を策定する。
☑部門別の費用予算を各部門に共有し、部門側で売上予算を策定する。
☑各部門から予算情報を集計し、全社予算として利益の予算金額と比較する。
☑利益の予算に届かなければ、各部門が売上・費用の予算を調整する。

 

・予算策定を進めるにあたり
☑予算策定の担当者が予算の意味を意識できるように、各人に予算策定と管理の目的を伝えていく。

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