リモート監査の課題とその対策

2021年11月11日

 

働き方改革の促進や新型コロナウイルスの感染防止策として、「在宅勤務」や「リモートワーク」を導入する企業が増えました。一昔前では考えられないワークスタイルですが、この大きな仕事環境の変化は、内部監査業務にも影響を与えています。今までは、監査対象部門まで訪問して監査を行う『現地往査』が主流でしたが、現在はリモート監査が多く行われています。特に海外拠点においては、未だコロナ禍ということもあり渡航しづらい状況ありますので、リモート監査が中心となっています。この『リモート監査』ですが、現地に訪問する必要がないという大きなメリットがある一方、様々な課題も存在します。
本記事では、リモート監査によるメリット、課題や対応策について解説したいと思います。

 

リモート監査の概要

新型コロナウイルスの影響により、テレワークの導入など業態や実務の運用が変わった企業が多くあります。内部監査業務についても、その影響を大きく受けており、内部監査の進め方や実施状況も大きく変わりつつあります。そのため、現地往査の代わりとして、リモート監査などの代替手法を検討する必要性がありました。特に海外拠点の場合は、コロナ禍で現地訪問が難しくなり、リモート監査で実施せざるを得なくなりました。

 

現地往査は、内部監査人が被監査部門や拠点へ訪問し、対面で監査を行います。一方、リモート監査は、遠隔で離れた場所にある二者がテレビ会議システム等のWeb会議システムなど利用し、遠隔で内部監査を行うことを言います。

 

リモート監査はコロナ禍の前からあった監査手法で以下のような状況の際、利用されていました。
・政治不安定の影響を受けて、往査が困難な地域にある拠点など
・重要性が低く、リスクがそれほど高くない拠点への往査など

 

このように、非常に限定的な状況下でしか利用されていなかったリモート監査は、
人の移動ができないコロナ渦において、一気に普及することになったのです。

 

リモート監査のデメリット・課題

内部監査業務において、リモート監査は監査手法の見直しや運用の変更といった点では良い機会になると考えられますが、現地往査と比べて、どのようなデメリットや課題があるかを留意する必要があります。

 

■デメリット
・物理的な情報や現物証憑等は実際に確認できないため、直接の観察に代えることは難しい。
・WEB会議を用いたインタビューでは、相互のコミュニケーションに限界がある。
・従来の紙文書を電子化することにより被監査部門の負荷がかかる。
・テレワークの普及に伴い、業務フローやリスクコントロールの変更により、監査項目の修正が必要となる。
・往査で直接やり取りをしないと、牽制体制が弱まり、不正の機会が広がる。
・不正発生時における調査や対応に限界が生じる。

 

■課題
・現地でのインタビューを実施できない場合の監査手法を検討する必要が生じる。
・リモート監査の実施に伴い、中長期監査計画やリスク評価を再考する必要がある。
・リモート監査で不可欠なITの活用が必要で、ITを使いこなす必要がある。

 

リモート監査を有効的に実施するためには、上記のようなデメリットや課題があるかを事前に把握したうえで、進めて行くことが重要です。

 

リモート監査のメリット

リモート監査では、上述のようなデメリットや課題がありますが、内部監査業務の効率化といった点で以下のようなメリットもあります。本節ではリモート監査を進める中でのメリットについて紹介します。

 

1. 内部監査実施頻度
リスクが高い被監査部門または拠点においては、実施頻度を上げる必要があります。リモート監査の実施により、移動日数の節約や内部監査資源を有効に配置できるため、実施頻度を上げることが可能になります。

 

2. 監査コストの削減(交通費・宿泊費等の経費)
現地往査の場合、被監査部門や拠点への移動交通費や宿泊費が発生することがあります。また、被監査部門が複数あると、その分の経費も加算されてしまいますが、リモート監査であれば交通費や宿泊費などのコストを削減することができます。

 

3. 管理責任者他が内部監査の様子を観察し、モニタリングが可能
現地往査の場合、時間も経費も多くかかるため、内部監査責任者がすべての拠点を巡回することは困難です。リモート監査であれば、監査の実施状況を適時に観察しモニタリングすることで、内部監査業務の品質を向上させることが可能です。

 

4. リモートインタビューなどは大人数で参加可能
リモート監査の場合一度に大勢の関係者が監査に参加でき、モニターもできます。現地往査より大人数で参加できるため、同時により多くの情報収集や情報の伝達が可能となります。

 

リモート監査は現地往査を完全にカバーすることは難しいですが、うまく活用することで、より効果的な内部監査業務を行うことが可能となります。

 

リモート監査の留意点

リモート監査の進め方は、通常の監査と類似しているところが多くありますが、各段階において置くべき重点ポイントや実施方法などが異なるため、本節では、リモート監査実施における留意点を紹介します。

 

■監査計画
固定資産や現金などの現物監査は、リモート監査では実施困難であるため、リスク評価を実施し、必要に応じて現地往査も実施するなどの検討が必要になります。

 

■書面監査
紙ベースの証憑は、PDFファイルや原本の郵送によってチェックすることができますが、すべての証票類の送付が必要か、一部または特定の書類だけでよいかを検討する必要があります。書面監査はリモートでは対応が難しいため、現地のアウトソーシング会社に依頼することの検討も必要です。

 

■リモートインタビュー
リモート監査はWeb会議により実施されることになるため、事前に監査で利用する資料を電子化(PDF化など)しておく必要があります。また、監査日に先立ち、どの手段を使用するかを決定し事前に通信テストを行い、利用するツール以外でのバックアップツールを確認しておくことが望ましいです。

 

■不正調査
不正調査は、現地往査しなくても入手できる情報はありますが、現物の確認やヒアリング時の雰囲気などを確認することが重要なポイントになり、リモート監査では限界があるためできるだけ現地往査が必要です。

 

リモート監査はあくまでも一つの監査手法にすぎないため、有効でかつ効率的な内部監査の目的を達成するには、リモート監査のみではなく、必要に応じて現地往査の実施も考慮する必要があります。

 

リモート監査の今後について

新型コロナウイルスの対応として、全ての内部監査業務を一時的にリモートで行う企業が多くありましたが、メリットも多くあるため、収束後も完全に現地往査のみにならないと予想されます。

 

下記のような企業については、今後もリモート監査を継続的に行うことをお勧めします。
・既にリモートワークを導入している企業または導入を検討している企業
・内部監査機能が本社に集約され、子会社や拠点が国内外に複数ある企業
・現地往査にかかるコストを削減したい企業
・電子化やオンライン化が進んでいる企業

 

リモート監査は、移動時間や経費の削減、監査の効率化などのメリットがありますが、現物監査・不正対応・労働環境や現場雰囲気の把握・コミュニケーションの欠如といった課題も多くあります。そのため、リモート監査の限界やデメリットを把握した上で、リスク評価結果や内部監査項目・内容に合わせて監査対象の重要性などを精査し、ローテーション監査の実施や現地のアウトソーシング会社の活用などの対応が必要になります。

 

まとめ

■リモート監査の概要
・リモート監査とは、遠隔で離れた場所にある二者が通信回線やネットワークなどを通じて監査を行うことを言う。
・現地監査が困難な地域にある拠点や重要性が低い拠点に対してリモート監査を実施することがある。

 

■リモート監査のデメリット・課題
・物理的な情報や現物証憑等は実際に確認できないため、直接の観察に代えることは難しい。
・往査で直接やり取りをしないと、牽制体制が弱まり、不正の機会につながる。
・現地往査でのインタビューを実施できない場合の監査手法を検討する必要が生じる。
・リモート監査の普及に伴い、中長期監査計画やリスク評価を再考する必要がある。

 

■リモート監査のメリット
・リモート監査の実施により、移動日数の節約や内部監査資源の有効に配置でき、効率的に実施できる。
・リモート監査は、移動交通費や宿泊費などの経費におけるコストが削減できる。

 

■リモート監査の留意点
・リスク評価結果を踏まえて、中長期監査計画、年度監査計画、監査手法などの見直しが必要である。
・内部通報や不正対応等は、リモートでは限界があるため、アウトソーシング会社を活用する。

 

■リモート監査の今後について
・今後の内部監査業務において、内部監査計画の見直し、リスクの再評価、テクノロジーの活用が求められる。
・リモート監査の限界やデメリットを把握したうえで、ローテーション監査やアウトソーシング会社の活用などの対応が必要になる。

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