予実管理の重要性

2022年01月27日

 

日本国内でコロナウイルスの感染が初めて確認されてから、およそ2年が経過しました。政府による経済政策や市場ニーズの度重なる変化により、業績管理に苦労している企業が存在する一方で、変化し続ける業績をリアルタイムで把握・分析し、新たな施策の検討、実行に成功している企業もあります。しかし実際の経営管理部門等の予算担当部門の現場では、業績予想や見込予算の修正頻度が増えたことで、これまでは感じたことがなかった予算の策定や予実管理業務に対する非効率性や課題を認識した企業も多いようです。今回は、改めて予実管理の重要性を整理したうえで、よくある予実管理業務の課題や予実管理をシステム化した場合に得られる効果をお伝えしていきます。

 

予実管理とは

まず、「予実管理」がどのような業務かを改めて整理していきます。予実管理は「予算実績管理」とも言われていますが、「予実」は「予算」と「実績」をそれぞれ指しています。しかし、日常生活で使う「予算」とビジネスの場における「予算」では、大きく意味が異なります。日常生活で使う予算は、「使っても良いお金」というような資金として捉えている場合が多いです。一方、ビジネスの場における予算は、売上予算や投資予算等の企業が将来の経営計画に基づいて設定する、具体的な数値目標を表現したものになります。

 

予実管理は、予算管理プロセスの中の一部分で、目標に対して実績がどのような状態かをチェックすることを指します。要するに『業績管理』の1つと考えて問題ありません。企業が行う予実管理とは何かを整理すると、大きく3つにわけることができます。

 

①実績の集計と予算と実績の比較
・各部門やシステムから実績値を収集し、集計する。
・経営計画等をもとに策定された予算に対して、現状の実績がどの程度予算に到達しているか比較する。

 

②課題抽出と原因分析
・予算と実績の比較によって、どの項目が、どのくらい予算に到達しているのか、どのくらい足りていないのか課題を抽出する。
・課題を定量的に分析し、原因を明確にする。

 

③課題解決方法の検討と実行
・明確になった原因を取り除くための施策を検討する。
・経営層は施策の実行可否や、今後の経営方針を決定する。

 

予実管理とは、経営計画、目標(予算)に対して、現状(実績)がどうなっているかを把握する手法のことですが、経営層にとっては意思決定を行うための重要な判断材料の1つとも言えます。

 

予実管理の重要性

予実管理を行う目的の1つに、経営状態の「見える化」があります。この「見える化」は、「社内に対する見える化」と「社外に対する見える化」の2つに分けることができます。

 

■社内に対する「見える化」
予実管理によって自社が抱えている課題を明確にすることができます。例えば、ある店舗で赤字が発生したとします。当然、赤字解消のため策を講じる必要がありますが、赤字の原因が単純に売上が足りないだけのか、売上は足りているが経費がかかりすぎているのか、いくつか考えられます。予実管理を行っていれば、赤字の原因がどこにあるのかが明確になり、原因解決のための有効な施策を検討、実行することが可能になります。

 

■社外に対する「見える化」
株式上場という面においても、予実管理は重要な役割を担っています。まず、上場審査の場面では、「事業計画の合理性」が求められます。この要件のチェックポイントとなるのが予実管理のプロセスになります。また、上場後では、投資家や債権者、取引先などの利害関係者に対して業績予想とともに四半期ごとに財政状態、経営成績を開示する必要があります。業績予想のベースになる予算と、実績(決算数値)が大きく乖離すると、投資家の判断をミスリードすることに繋がるため、予実管理の重要性は高いと言えます。

 

このように予実管理は、見えていなかった社内の課題を浮き彫りにし、解決に導くための手法の1つでもあり、社外に対しては事業計画の合理性、信憑性を示すための重要な役割があります。

 

予算管理プロセスにおける予実管理

予実管理は、似たような言葉の「予算管理」の中の1つのプロセスになります。予算の策定から予実管理までの流れを簡単に整理してみます。

 

①予算の策定
経営計画から逆算し、数値目標として予算を策定していきます。上場企業になると中期経営計画をもとに年度予算を作り、それをもとに半期、四半期、月次等の期間単位で細分化していきます。また期間だけではなく、部門等の組織単位や事業等のセグメント単位の予算も必要に応じて策定します。

 

②実績集計、予実比較
月次決算になることが多いですが、必要な頻度で実績データを各部門や各システムから収集し、集計します。可能な限り予算と同じ科目や項目、セグメント単位で集計し、予算と比較します。数量や金額の単純な数値だけではなく、必要に応じて予算達成率や前年比の算出を行います。当然、会社単位での比較だけではなく、組織や事業、商品ごとの様々な軸で比較を行います。

 

③課題抽出、原因分析
予算と実績との間で乖離が発生していた場合は、何かしらの課題があることになります。例えば売上という科目に大きな乖離があれば、商品ごとや店舗ごとの数値を分析していきます。

 

④改善策の検討と実行
分析の結果、特定の商品のみ著しく乖離があるようであれば、マーケティングや営業手法を改善する必要があるかもしれません。一方で、経費や人件費等のコスト面で予算を実績が超えている場合があれば、経費削減のため、業務のペーパーレス化や外注業務の内製化やといったようにコスト改善策の検討を行う必要が出てきます。

 

予算管理のプロセスの中で、予実管理は②実績集計・予実比較~③課題抽出・原因分析を指すことが多いです。予算管理プロセスをPDCAに置き換えると、C(Check)が予実管理に該当します。この結果を基に経営判断等が行われますので、スピーディーにかつ正確に実施することが求められるのです。

 

予実管理のよくある課題

予算管理をシステムで対応している企業は全体の30%ほどと言われており、会計システムや勤怠システムと比べるとその割合は低いのが現状です。予実管理は数値の集計や比較といった業務が中心になり、使い慣れたExcelを使って運用している企業が多くあります。このような企業は、Excelを用いることによる共通の課題を抱えています。

 

■実績値の集計に手間がかかる
予算と実績を比較するためには、実績値を予算に合わせて集計しなければなりません。例えば、組織変更によって部門が新しく追加された場合、予算上ではその部門は存在しませんので、他の部門に集計する等の対応が必要になります。他にも製品グループなどといったセグメント別の予算を作成している場合、製品の追加、廃止に応じて集計作業は煩雑になります。

 

■比較分析の柔軟性に欠ける
経営判断に必要な情報は、状況に応じて変わります。例えば、傾向を見るために前年度や前々年度との情報比較、競合他社の数値との比較を求めらたりすることもあります。毎回同じ比較だけで済むのであれば、関数やマクロを設定したExcelツールを準備すれば対応ができますが、比較対象が変わった場合、既存のExcelファイルでは対応ができず、報告するまでに何日もかかってしまうことがあります。

 

■Excelツールのメンテナンスができない
Excelを使った集計や分析を効率よく進めるためには、マクロや関数を設定する必要があります。この関数やマクロですが、複雑になればなるほど作成した人にしか分からず、メンテナンスができないという問題が発生します。Excelツールにトラブルが発生した場合、修正しようとしても、作成者が離職してメンテナンスできる人がおらず、手が付けられないといったケースもあります。

 

多くの企業が利用しているExcelは、コストが安い、操作に慣れている、カスタマイズがしやすいといった利点があります。しかし、上記課題のようにExcelを使った運用には限界があるというのも事実です。

 

予実管理のシステム化と期待効果

一例としてお話した予実管理における企業の課題ですが、システムを取り入れることで解決を図ることが可能となります。システム化することでどのような効果が得られるのでしょうか。

 

■集計作業の効率化
会計システムなど必要なシステムと連携することが可能です。そのため自動集計が可能となります。また部門の増減やセグメント追加等が発生している場合も、マスタを変更するだけで対応ができ、手間なく集計が可能となります。Excel管理の時に発生していたように、存在するファイル全てに対して修正が不要となります。

 

■比較分析の柔軟性の向上、情報提供の迅速化
予実管理が可能なシステムは、分析軸、集計軸の増減に柔軟に対応できるシステムが多いです。Excelでは経営判断に必要な分析軸や集計軸の追加が発生すると、多くの時間をかけてマクロや関数の修正をしていたことが、システムでは操作1つで完了となる可能性があります。経営層が必要な情報を短時間で提供することが可能となります。

 

■Excelツールのメンテナンスからの開放
予算管理システムを使用することで、集計や分析で使用する複雑なマクロや関数が設定されたExcelツールから脱却することが可能になります。多くの予算管理システムには、集計・分析だけでなく、分析結果をレポートとして出力する機能もありますので、レポート作成作業の効率化も見込めます。

 

予実管理は企業の経営活動には重要で欠かせないものです。繊細な部分も多いですが、多くの労力を要し、必要以上に大きなコストがかかっている場合があります。予実管理の効率化のために、システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。


まとめ

■予実管理とは
・予算管理プロセスの中の一部分で、目標に対して実績がどのような状態かをチェックすること。
・経営層が意思決定を行うための判断材料の1つでもある。

 

■予実管理の重要性
・自社が抱えている経営課題が明確にすることができる。
・社外に対して事業計画の合理性、信憑性を示すことができる。

 

■予算管理プロセスにおける予実管理
・予算管理プロセスの中では、実績集計・予実比較~課題抽出・原因分析が予実管理に該当する。
・予算管理をPDCAで例える場合、予実管理はCに該当するためスピードと正確性が求められる。

 

■予実管理のよくある課題
・組織変更等が発生すると、集計作業が煩雑になり時間がかかる。
・比較分析軸の変更が発生すると、Excelファイルの改修が必要となり経営層への情報提供が遅れる。
・Excelファイル内のマクロや関数の設定が属人化して、メンテナンスできる人材が限られている。

 

■予実管理のシステム化と期待効果
・他システムとの連携により集計作業の効率化に繋がる。
・比較分析軸の変更が発生しても、Excelに比べ素早く柔軟な対応が可能となる。
・Excelマクロや関数等の複雑な設定に対するメンテナンスが不要となる。

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