ERP(統合型基幹システム)を支えるRPA~RPAが本領を発揮しやすい業務~

2018年10月04日

 

現在、多くの企業にERP(統合型基幹システム)が導入され、社内の各業務に対応した機能が日常的に使われています。ERPの利用によって業務は大幅に効率化されていますが、それでも単純な入力や転記の作業など、人の手を必要とする業務が残されています。
昨今ではその「人の手を必要とする作業」を削減し、更なる効率化を図るためにRPAを導入する企業が増えていますが、どのような業務でRPAを使うのが本当に効果的なのか、まだ明確にはなっていないのが現状です。
今回は、ERPとRPAを組み合わせた業務の事例をご紹介しながら、RPAが本領を発揮しやすい作業について整理をしてみたいと思います。

 


ERPによる対応が難しい業務

ERPは様々な企業で導入され、利用されています。例えば、受注情報の登録から売上計上までの流れや購買・在庫を管理する販売業務、人材の採用情報や異動情報を管理する人事業務、決算情報などの経営指標を管理する会計業務などで、それぞれの業務に関わるデータを記録し、社内で幅広く活用されています。
ERPでは、業務の目的を達成するために必要なデータを入力すれば、専用の機能が処理を行いますので、売上から債権を計上して請求書を発行したり、仕訳の情報から決算書を作成したりなど、途中で人を煩わせずに業務を進めることが可能となっています。
ただ、上記のように表面的には人の手をあまり必要としていないERPですが、業務はそれだけでは完結できません。
ERPに処理をさせるためのデータを入力するには、元になる伝票などの情報を加工する作業が発生する場合もありますし、ERPで作成した管理帳票を部門の担当者へメールで送付する作業なども発生します。
これらはERPでは対応が難しく、現在も人による作業が必要とされています。
ERPの機能では実現できず、人がPC上で行っている作業こそがRPAの領域です。

 

 

RPAが効果を発揮しやすい作業

ERPでは処理が出来ずに人が対応している作業は数多くありますが、その中でもRPAを使うことに適しているのは、次のような作業です。

 

・イレギュラーな分岐が少ない。
・感覚的な判断を要しない。
・動作は単純だが作業量が多い。

 

これらをクリアした作業であれば、ERPや人を支えるツールとしてRPAは力を発揮します。
この3つの内、特に効果を得やすいのは「動作は単純だが作業量が多い」ケースです。
例えば、月末締め後になりますと会計システムから出力した管理帳票を社内の各部門へメールで共有する企業も多いと思いますが、ERPから複数の管理帳票をPDFで出力して、部門ごとに作成したメールに添付し送信するという作業は量が多く、時間もかかりがちです。
このような作業には積極的にRPAを適用することで、導入効果を実感しやすくなります。
では、実際の現場ではどのようにRPAが活用されているのか、いくつか事例をご紹介をしていきます。

 

 

ERPとRPAの組み合わせ事例

【顧客からメールで受領した注文情報の入力】
顧客からの注文メールを確認し、その内容をERPの受注管理に入力していましたが、一連の流れをRPAで自動化している企業があります。

 

<RPAによる実現の流れ>
・注文専用のメールアドレスに届いたメールの件名から注文であることを判断する。
・該当のメール、受注処理用のExcel、ERPの受注入力画面を開く。
・メールの本文から得意先名、注文品番、数量をコピーし、受注処理用のExcelの各項目に貼り付ける。(※1)
・受注処理用Excelから得意先コード、注文品番、数量をコピーし、ERPの受注入力画面に登録する。

 

※1.受注処理用Excelの目的は、得意先名から得意先コードを逆引きし、そのコードをERPへ入力すること。

 

【インターネットバンキングから出力した入出金データを会計に入力】
幹事銀行のインターネットバンキングから定期的に入出金明細CSVをダウンロードし、会計システムのインポート機能から取り込む作業で、RPAを利用している企業があります。

 

<RPAによる実現の流れ>
・Webブラウザでインターネットバンキングの画面を開き、ログインする。
・入出金明細のメニューを選択し、CSV形式のダウンロードを行う。
・ERPの会計メニューからデータインポート画面を開き、入出金明細取りこみのパターンを選択する。
・ダウンロードした入出金明細CSVを指定し、インポートを実行する。

 

【Excelで作成した予算ファイルの収集】
ERPの予算管理機能に入力する予算情報を各部門からExcelで収集し、ERPに取り込んでいた作業をRPAに任せている企業があります。

 

<RPAによる実現の流れ>
・(各部門の担当者が予算Excelファイルを特定の共有フォルダに保存する)
・各部門の予算Excelファイルを開き、予算金額が入力されている列をコピーする。(※2)
・ERPへの取込み専用に作られた集計Excelに、部門ごとの予算金額を貼り付ける。(※3)
・ERPの予算入力画面を開き、集計Excelの取込みを実施する。

 

※2.予算Excelファイルの名称には部門コードが振られており、RPAが番号順に開くようにしている。
※3.金額を貼り付ける列は部門コード順に設定されており、RPAには、最初に開いた予算ファイルの金額は集計ExcelのA列に入れ、次のファイルはB列に入れる、という設定をしている。

 

【人事考課結果を社員個人へメール送付】
ERPから出力した人事考課結果を社員個人へメールで送付していましたが、メールを作成し、ファイル添付と送信をかける作業をRPAで実行している企業があります。

 

<RPAによる実現の流れ>
・(人事考課結果のPDFファイルは人がERPから出力し、特定の共有フォルダに保存する)
・共有フォルダに格納されているファイルの名称から、社員名の部分をコピーする。
・コピーした社員名を、社員メールリストExcelに貼り付け、送付先のメールアドレスを特定してコピーする。(※4)
・Outlookで人事考課送付のテンプレートメールを開き、コピーしていたメールアドレスを宛先に貼り付ける。
・その社員に該当する人事考課結果ファイルを添付し、送信する。(全社員分を繰り返し)

 

※4.社員メールリストExcelは、社員名とメールアドレスがリスト化されている。

 

 

RPAが使われやすい業務とは

現在、企業では様々な場面でのRPA活用を模索していますが、実例からは、使われやすい業務の傾向が見えてきます。

 

・電子メールの送受信をする。
・Excel等へデータを集計する。
・Excel等のファイルからデータをERPに入力する。

 

いずれも単純ですが、業務の中では量が多くなりがちで、人が行うとある程度の時間がかかってしまう作業です。
これら以外にもRPAを活用できる業務は存在していますが、RPA導入の効果を早期に得るためには、既に導入している企業が実践している内容を真似ることが近道です。
ERPとRPAを組み合せて利用しようと考えたときには、まず上記の業務の自動化を検討してみるのが良いと思います。

 

 

まとめ

ERPによる対応が難しい業務
・ERPは多くの業務に適用されているが、ERPへ入力するデータの加工やメールの送信など、対応できない範囲もある。
・ERPの機能では実現できず、人がPC上で行っている作業こそがRPAの領域である。

 

RPAが効果を発揮しやすい作業
・ERPや人を支えるツールとして、RPAが力を発揮しやすい作業は次の3つである。
①イレギュラーな分岐が少ない。
②感覚的な判断を要しない。
③動作は単純だが作業量が多い。

 

RPAが使われやすい業務とは
・ERPとRPAの組み合わせ事例から見える傾向は次の3つである。
①電子メールの送受信をする。
②Excel等へデータを集計する。
③Excel等のファイルからデータをERPに入力する。
・RPAの効果を早期に得るためには、導入済みの企業が実践している内容を真似るのが近道である。

 

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