タスクマイニング~ITツールを活用した業務タスクの可視化~

2022年05月12日

 

リモートワークや週休3日制など働き方の多様化が進んでいますが、それに伴って従業員ごとの勤務実態が見えづらくなっています。そもそも、パソコンに向かって作業する業務は現場作業や対面接客などと比べて、作業内容や成果が見えづらい傾向にあります。昨今における業務DX化の流れも後押しして、見えづらいパソコン業務の割合は企業の中で今後も増えていくことが予想されます。
今回紹介するタスクマイニングは、従業員の個々のパソコンから操作ログデータを収集分析することにより、『業務の見える化』を推進してくれるITツールです。タスクマイニングは業務改善やセキュリティ管理など、さまざまな場面で役立てることが可能です。
本記事では、タスクマイニングとは何か?その機能と導入のメリットを解説します。

 

タスクマイニングとは

タスクマイニングとは、従業員が使用するパソコンの操作ログから業務を可視化・分析するツールになります。

 

操作ログの具体的な例としては、従業員のパソコンの起動時間、アプリケーションの使⽤履歴、Webサイトの閲覧や入力履歴、Eメールの送受信履歴、キー操作情報、ファイルの複製や削除といったものが挙げられます。すなわち、どのアプリケーションやファイルを開いて、どのくらいの時間をかけて、どのような作業しているのかといった情報をタスクマイニングは細かく収集し記録していくということです。このようなデータを、例えば時間帯別・従業員別・部署別などといった形で可視化して比較分析することによって、社内の業務改善などのさまざまなケースで役立てていくことが可能になるのです。

 

業務分析を行う際の実態調査といえば、担当者に対するインタビューを通じて作業内容や作業時間を記録する方法が主でした。しかしインタビュー方式では、情報に回答者の主観が混ざってしまう場合や情報の抜け漏れを起こしてしまう場合があります。そのため精度の高い情報を集めるためには、インタビュアーに高いテクニックが求められるという難点がありました。現業を抱えながらインタビューを実施すること自体が従業員の負荷になってしまうという一面もあるでしょう。その点、タスクマイニングは詳細な操作ログデータを自動的に収集し、正確でより効果的な業務分析を可能にする新しい方法と言えます。

 

タスクマイニングの機能

タスクマイニングにはどのような機能があるのかを具体的に見ていきます。

 

1.インターネット利用状況
Webサイトのアクセス履歴や検索エンジンで使用した検索ワードを記録し、どのようなサイトを業務中に視聴しているのかを確認することができます。
2.Eメール利用状況
宛先・件名・本文・添付ファイルなどの履歴は、社内や取引先に対する不正やハラスメントの調査、機密漏洩のチェックや牽制などに使うことができます。
3.アプリケーション利用状況
ExcelやOutlookなどアプリケーションごとの利用状況を可視化できるので、例えばメールソフトの利用率が非常に高いといった業務の傾向を掴むことができます。
4.ファイル利用状況
どのファイルを頻繁に利用しているのか、ファイルを開いている時間などの情報から、どのような作業にどのようなファイルを使い、時間をかけているのかが明らかになります。
5.キーストローク状況
ショートカット操作も含めたあらゆるキー入力情報を記録します。コピー&ペースト履歴などが作業手順の把握に使えるほか、業務上不適切な単語に対するチェックにも活用できる機能です。
6.作業画面状況
デスクトップ画面のスクリーンショット画像を定期的に保存する機能と作業画面を録画する機能があります。作業内容を詳細に監視する以外にも、ベテラン作業者の操作を動画化して共有すればチーム全体のスキルアップに役立てることができます。
7.勤務状況
パソコンの起動から終了までを記録しておくことが可能です。パソコン操作の多い時間と操作の少ない時間を可視化すれば、従業員ごと・時間帯ごとの作業負荷状況を一覧することもできます。
8.印刷状況
印刷したファイルおよび印刷で使用したプリンター名を記録することができます。どのユーザーが、どのプリンターで、どのファイルを何枚印刷したのかまで把握することが可能となっています。
9.外部媒体への接続状況
ファイル名の変更、移動、複製、さらには外部ディスクへ移管したファイルの状況まで追跡することが可能です。予めUSBの接続を禁止しておく設定もできます。

 

タスクマイニングを使うことで、インターネット利用状況、Eメール利用状況、アプリケーション利用状況、ファイル利用状況、キーストローク状況、勤務状況・印刷状況など、多様な切り口で従業員のパソコン業務を可視化していくことが可能です。

 

タスクマイニング導入のメリット

続いて、タスクマイニング導入のメリットについて見ていきましょう。

 

1.業務改善
タスクマイニングによる詳細な操作ログデータ分析やデスクトップの録画機能などを利用して、業務の作業手順を明らかにすることができます。そのため、担当者にしか進め方が分からなくなってしまいブラックボックス化(属人化)した業務の標準化に有効です。また、パソコン上で繰り返し行っている作業を分析する事で、RPA活用の可能性を新しく発見できるかも知れません。ログデータを参考にRPA導入で削減できる作業時間を計算すれば費用対効果分析にも使えるのではないでしょうか。そのほか、パソコンの稼働率が低い場合は紙ベースのアナログ業務が多いと推測できるので、DX化対象部署の選定にも利用できます。
2.不正防止、セキュリティ管理体制の強化
メール利用状況や重要ファイルに関する利用状況を監視できることから、大量データの持ち出し等、従業員の不正を未然に防止あるいは早期発見につなげることが可能です。誰がどんなデータをいつ持ち出したのかといった情報が記録されているので、例えば顧客情報などのセキュリティ管理にも有用です。加えて、従業員に対して”見られている”という意識を持たせることができるため、不正に対する牽制効果も期待できます。”見られている”という環境を意識的に作り出すことにより、不正を躊躇させることにつながり、不正を未然に防止する対策として非常に効果的です。
3.遠隔チェック(拠点監査モニタリング)
遠隔チェックツールとして使用できるので、リモートワークや遠く離れた拠点に対しても各種チェックをかける事ができます。とくに海外に拠点をもっているような企業であれば、物理的な距離の問題や文化の違いゆえ、国内拠点以上に強力な監視体制を作りたいと考える場合も多いのではないでしょうか。タスクマイニングを活用することにより、現地の業務を本社に居ながらモニタリングすることができるので、国内拠点はもとより、海外拠点の監査へ活用することができます。現地へ訪問しなくても一定の効果が得られるので、往査(現地への訪問)に係る時間と費用を節約できるメリットもあります。

 

このように、タスクマイニングの導入には大きなメリットがあります。業務改善においては、属人化した業務の標準化やRPAの導入検討にも活用できます。不正防止効果なども期待できるでしょう。そしてこれらの機能を、離れた拠点に対しても発揮することができます。

 

従業員視点におけるタスクマイニング導入のメリット

企業にとってタスクマイニングの導入が大きなメリットになることを説明しました。しかし、このようなツールでチェックされる側の従業員にとってはどうでしょうか。上司から監視されている状態をネガティブに感じる方もいるかもしれませんが、少し考え方を変えることでメリットが見えてきます。

 

1.気付きや自己改善の機会
例えば前任者の引継内容に不備がある場合や作業者の誤解・思い込みといった理由から、誤った手順あるいは無駄な作業をしている事に作業者が気付いていないケースがあります。このような場合、操作ログデータやデスクトップの録画機能を活用して作業内容や作業手順を可視化することで、自分と他の作業者の違いを明確にすることができます。作業手順の問題点や非効率な作業を客観的に見直すきっかけになり、自己改善を促すツールとしてタスクマイニングを利用することもできます。
2.学習機会や作業の標準化
ベテラン作業者の操作手順を参考に学習するといった使い方も可能となります。パソコン作業をスナップショットや録画することができるので、ベテラン作業者の効率的な作業を学習する機会を提供することができます。タスクマイニングの機能を活用することで、自身の成長やスキルアップ、さらには作業の標準化(作業品質の均一化)につなげられるのです。従業員が自らスキルアップすることは管理者や企業にとっても非常に喜ばしいことではないでしょうか。組織をより良い方向に進めていくために、何事も前向きな考え方こそ肝要です。

 

タスクマイニングは、収集した操作ログデータに基づいてパソコン業務をあらゆる切り口から詳細に可視化することができるツールです。業務改善や不正防止などで活用することができて、離れた拠点に対しても効果を発揮することができます。また、チェックされる立場の従業員にとっても、自己改善、スキルアップにつなげるための気付きを与えてくれるツールです。
業務可視化は、業務改善の最初の一歩になります。社内の業務改善を進める手段として、導入を検討してみてはいかがでしょうか?

 

 

 

まとめ

■タスクマイニングとは
タスクマイニングとは、従業員が使用するPCの操作ログデータから業務分析を行うツールです。

 

■タスクマイニングの機能
タスクマイニングを使うことでインターネット利用状況・Eメール利用状況・アプリケーション利用状況・ファイル利用状況・キーストローク状況・作業画面状況・勤務状況・印刷状況など、さまざまな切り口から業務を可視化することが可能です。
1.インターネット利用状況   2.Eメール利用状況    3.アプリケーション利用状況
4.ファイル利用状況      5.キーストローク状況  6.作業画面状況
7.勤務状況          8.印刷状況       9.外部媒体への接続状況

 

■タスクマイニング導入のメリット
業務改善として属人化した業務の標準化を支援し、RPAで効率化できる作業やDX化の遅れている部署を発見することができます。
不正においても防止や早期発見に有効です。顧客情報など重要データのセキュリティ管理にも活用できます。
遠隔チェックツールとして、リモートワークや海外など遠く離れた拠点に各種チェックをかけられます。
1.業務改善   2.不正防止、セキュリティ管理体制の強化
 3.遠隔チェック(拠点監査モニタリング)

 

■従業員視点におけるタスクマイニング導入のメリット
チェックされる側の従業員にとっても、タスクマイニング導入のメリットはあります。操作ログデータやデスクトップ録画機能などを利用することで他の従業員と比較分析して、効率の悪い手順や無駄な作業を発見・修正することができます。自己改善やスキルアップの機会として役立てることが可能です。
1.気付きや自己改善の機会     2.学習機会や作業の標準化

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