食品卸売業向け販売管理システムとは~選定のポイント~

2022年07月21日

 

販売管理システムは受注から納品までの業務プロセスを一元管理して支援するシステムです。ほとんどの企業において、パッケージシステムや自社開発システム等、形は違えど何らかの販売管理システムが稼働しています。
販売管理システムの特徴としては、企業や業種によって必要な機能が大きく異なる点が挙げられます。例えば、会計システムや給与システムは法令の要求に従った機能が求められるため、利用する企業による違いは現れづらいのですが、販売業務のエリアには業種毎の商慣習や企業毎の特殊なプロセスが存在することもあるので、それらに対応した機能がシステムには求められます。
食品卸売業にも独特な商慣習や管理があり、販売管理システムを導入する際には、それらを充分に考慮をしてシステムを選ぶ必要があります。今回は食品卸売業にフォーカスして、販売管理システムの機能やシステム選定のプロセスについて解説をしていきます。

 

食品卸売業の業務とは

食品卸売業には他の卸売業と同様に、メーカーと小売業等をつなぐ役割があり、業界特有の商習慣も存在しています。
食品卸売業の主な業務は6つあります。

 

①商品仕入
食品メーカーが製造する加工品や生産者の商品を買い付けます。
②商品販売
消費者へ商品を届ける小売業や飲食サービス業からの注文に応じた販売を行います。
③商品の搬送/納品
自社の倉庫や物流機能を用いて、食品メーカーと小売業や飲食サービス業の間をつなぐ商品流通を行います。
④得意先への新商品提案
小売業や飲食サービス業のバイヤーに向けて、食品メーカーが開発した新商品や新しい生産者からの商品を紹介します。
⑤食品メーカーへの情報伝達
小売業や飲食サービス業のバイヤーから寄せられる商品への要望を食品メーカーに伝達し、要望に合う商品を探したり、メーカーへ製造を依頼します。
⑥商品企画
食品メーカーとの協業による新商品開発や商品のキャンペーン企画等を行います。

 

食品卸売業とその他の業種との大きな違いには、「3分の1ルール」と「日付順納品」と呼ばれる商習慣があります。
■「3分の1ルール」
商品を製造してから小売店に納品するまでの期限(納品期限)が業界の慣習として決まっており、例えば、賞味期間が6ヶ月の商品は製造日から2ヶ月(最初の1/3)を過ぎると出荷できなくなるというルールが存在しています。
■「日付順納品」
納品先によって、同一商品で前回納品したものより古いものは納品できないというルールがあります。荷受をする小売業や飲食サービス業側は管理をしやすくなりますが、出荷側である食品卸売業は在庫商品を出荷できない場合も生じます。

 

食品卸売業の業務はメーカーからの仕入と得意先への販売がメインですが、その他にも物流や商品企画等が存在しています。更に独特な商慣習もあり、商品の賞味期限や出荷順序にルールがあるところが他の卸売とは異なる特徴です。

 

食品卸売業に必要な販売管理システム機能

食品卸売業の業務の1つとして「商品販売(小売業や飲食サービス業への卸売)」がありますが、商品販売には食品業界特有の「3分の1ルール」や「日付順納品」等の商習慣への対応が必要です。そのため、食品卸売業向けに作られた販売管理システムを利用することが欠かせません。
食品卸売業向けの販売管理システムには次のような特有の機能が存在しています。

 

■賞味期限管理
賞味期限が製造日から3分の1の期間を超える商品は納品できません。誤った出荷を防ぐため、食品メーカーから自社に仕入れた商品毎に賞味期限の情報を付与して、自社倉庫から出荷できる商品を絞り込む機能です。
■ロット管理
得意先には前回出荷時よりも古い製造日の商品は納品できません。出荷する商品の逆転を防ぐため、自社に入荷した商品毎に製造ロット番号を付与する機能です。
■荷姿管理
商品にはケース/箱/バラ等の単位があり、荷姿と呼ばれています。メーカーから自社への入荷時と自社から小売業等への出荷時においては単位が異なる場合があるため、商品の入出荷時に単位を選択できる機能です。
■単価管理
メーカーが実施する商品キャンペーンや、得意先によって商品の単価が変わる場合があります。それらに対応するため、商品毎に複数の単価情報を保持できる機能です。

 

食品卸売業向けの販売管理システムを選定するにあたっては、自社の業務にフィットするように、各種の機能がどのように実装されているかを確認する必要があります。特に上記で示した4つの機能は食品卸売業では必須となります。

 

販売管理システムの選定プロセス

販売管理システムを選定する時に行うプロセスは6つあります。自社の業務にマッチしたシステムを選定する一般的なプロセスの流れと概要は次のとおりです。

 

①現状把握
システム化対象の業務について関係者にヒアリングして、業務フロー図や業務一覧表を作成し、業務の全体像を把握します。同時に業務上の課題もヒアリングして、ボトルネックになっている事象や非効率的な作業を洗い出します。
②要件整理
現状整理で把握した業務の流れや課題から、システムで実現したい機能(機能要件)をまとめます。
③ベンダーへの提案依頼
システムを取り扱うベンダーに対して、システム選定に至る背景、対象業務の現状、対象業務の将来像、システムに求める要件、契約や導入作業に関する諸条件を明示して、提案を求めます。
④ベンダーからの提案比較
ベンダーから受領した提案を提案企業の状況、導入手法、機能要件回答、見積り等に分類し、横並びで比較をします。
⑤ベンダーとの見積り交渉
選考に残ったベンダーと作業の役割分担や見積り範囲等を協議しながら、イニシャルコスト(導入時に必要な費用)とランニングコスト(システムの運用維持に必要な費用)を妥当な金額にするための交渉を行います。
⑥ベンダーとの契約締結
選考に残ったベンダーと契約内容について協議し、契約書を取り交わします。

 

食品卸売業の販売管理システム選定で最も重要なことは、自社の業務の流れに合っていることや、業種特有の業務(商習慣)に対応しているかを確認することです。
自社にマッチしたシステムを選定するためには、ベンダー各社に業務や商習慣を理解してもらい、提案システムで対応できる範囲を示してもらう必要があります。この際、ベンダーの理解があやふやでは正確な情報を得られませんので、現状把握で業務と課題を整理し、要件整理で機能をまとめて提示することが必要になります。

 

販売管理システム選定プロセスのポイント

一般的なシステム選定プロセスは6つに分類されますが、食品卸売業向けの販売管理システムを選定するため特に重要なプロセスは、「現状把握」と「要件整理」です。
他の卸売業とは異なる商習慣や自社の業務に対応したシステムを選定しなければなりませんので、「現状把握」で自社の業務プロセスを可視化し、「要件整理」で業務に必要な機能を表現するようにします。食品卸売業に関する特有の業務毎にポイントを整理すると次のようになります。

 

自社では業界の商習慣へどのように対応しているか、商品や単価の管理にはどのような手法を用いているか等を整理して、販売管理システムへの機能要件としてまとめ、システムベンダーからより良い提案を受けることにつなげていきます。

 

まとめ

◆食品卸売業の業務とは
・食品卸売業の主な業務は6つある。
①商品仕入
②商品販売
③商品の搬送/納品
④得意先への新商品提案
⑤食品メーカーへの情報伝達
⑥商品企画

 

・食品卸売業には「3分の1ルール」と「日付順納品」の商習慣がある。
■「3分の1ルール」
商品を製造してから小売店に納品するまでの期限(納品期限)が業界の慣習として決まっており、例えば、賞味期間が6ヶ月の商品は製造日から2ヶ月(最初の1/3)を過ぎると出荷できなくなるというルールが存在している。
■「日付順納品」
納品先によって、同一商品で前回納品したものより古いものは納品できないというルールがある。

 

◆食品卸売業に必要な販売管理システム機能
・食品卸売業向けの販売管理システムには特有機能がある。
■賞味期限管理
■ロット管理
■荷姿管理
■単価管理
・これらの機能は食品卸売業では必須である。

◆販売管理システムの選定プロセス
・システム選定の一般的な流れは次の通りである。
①現状把握
②要件整理
③ベンダーへの提案依頼
④ベンダーからの提案比較
⑤ベンダーとの見積り交渉
⑥ベンダーとの契約締結
・食品卸売業の販売管理システム選定で最も重要なことは、自社の業務の流れに合っていることや、業種特有の業務(商習慣)に対応しているかを確認することである。

 

◆販売管理システムの選定プロセスのポイント
・食品卸売業向けの販売管理システムを選定するため特に重要なプロセスは、「現状把握」と「要件整理」である。
・「現状把握」で自社の業務プロセスを可視化し、「要件整理」で業務に必要な機能を表現する。
・自社では業界の商習慣へどのように対応しているか、商品や単価の管理にはどのような手法を用いているか等を整理して、販売管理システムへの機能要件としてまとめ、システムベンダーからより良い提案を受けることにつなげていく。

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