施行まであと1年~インボイス制度直前対策~

2022年09月15日

 

2023年10月1日より消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が導入されます。インボイス制度は2016年度税制改正で決定されましたが、現行制度から切り替えるための準備期間として2023年9月30日までは「区分記載請求書等保存方式」が採用されております。「区分記載請求書等保存方式」では、税率ごとの区分経理を行うための制度として請求書等の書類や、帳簿への記載方法に影響がありましたが、来年10月からは、「適格請求書等保存方式」としてインボイス制度が導入されます。「適格請求書等保存方式」では、更に適格請求書発行事業者の登録申請書を税務署に提出し、審査を受けて適格請求書発行事業者の登録番号を発行する必要性が求められますので、施行1年前のこのタイミングで改めてインボイス制度についてのおさらいと、準備すべきことをまとめてお伝えします。

 

インボイス制度のおさらい

2023年10月にインボイス制度がいよいよ施行されます。インボイス制度とは、どのような制度かおさらいをしてみましょう。

 

■インボイス制度(適格請求書保存方式)
消費税の仕入税額控除の方式の一つで、課税事業者が発行するインボイス(適格請求書)に記載された税額のみを控除することができる制度のことです。
インボイス制度開始後は、「適格請求書発行事業者」以外からの仕入に関して消費税の仕入税額控除が原則受けられなくなります。
適格請求書発行事業者になるためには「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出して審査を受ける必要があり、税務署での審査後に登録通知書が発行されますが、適格請求書発行事業者として登録が可能なのは消費税の課税事業者に限られています。免税事業者は登録ができません。

 

■インボイス制度の対象者
インボイス制度は、基本的には課税事業者に義務付けられたものです。
免税事業者はインボイス制度開始後でもインボイスの発行義務はありませんが、取引先が課税事業者である場合、その取引先は免税事業者からの仕入について、原則仕入税額控除ができないことになってしまいますので、課税事業者である取引先に影響を及ぼすことになります。この点については、取引への影響に配慮する形で経過措置が設けられており、免税事業者からの仕入についても、制度実施後3年間は消費税相当額の8割、その後の3年間は5割を仕入税額控除が可能とされています。この6年間の間に課税事業者への切り替えを検討してみることをおすすめします。

 

■インボイス制度施行までの主な関連スケジュール
適格請求書のやりとりは電子データで行うことも認められており、電子インボイスとして適格請求書を扱う際には改正電子帳簿保存法も関わってきます。
・2021年10月~2023年3月 適格請求書発行事業者の受付
・2022年1月  電子帳簿保存法改正
・2023年10月 インボイス制度開始

 

インボイス制度は課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除できる仕組みではありますが、課税事業者のみならず、免税事業者であっても対応の検討が必要になるケースがあります。

 

 

電子帳簿保存法の改正とインボイス制度

 

適格請求書発行事業者は適格請求書(インボイス)を電子データで提供することが可能です。適格請求書はこれまでの請求書より取引の内訳を詳細に記載する必要があり、適格請求書の作成から承認、会計処理などの負担増が見込まれます。一連の業務負担を減らすために適格請求書を電子インボイスとして扱い、ITツールなども活用した対応が、管理のしやすさ、作業の効率性といった観点から有効と考えられます。適格請求書を電子データで保管する場合は、2022年1月より改正された改正電子帳簿保存法で定められた方法で保管しなければなりませんので、ここでは改正電子帳簿保存法についてみてみたいと思います。

 

■改正電子帳簿保存法
インボイス制度への円滑な制度移行に向けた取り組みとして2022年1月に施行されていますが、現在2年間の猶予が与えられており2023年12月末までに行われた電子取引については従来どおりプリントアウトして保存しておくことが認められています。猶予期間を経過すると電子取引に関するデータ保存の義務化され、紙で受け取った適格請求書(インボイス)を電子保存する際も改正電子帳簿保存法(改正電帳法)の保存要件に準ずる形で保存しなければなりません。
具体的に、保存時の要件には、「関係書類の備え付け」「見読可能装置の備え付け」「検索機能の確保」「データの真実性」を担保する等の措置がありますので、電子データで保存する際の要件への対応もインボイス制度対応と合わせて検討しておくことが良案と言えるでしょう。

 

インボイス制度の導入にあたり、書類の作成、会計システムへの入力業務などの業務負担が大きくなると予想されるため電子インボイスの活用が有効であり、電子インボイスでの対応の際は電子帳簿保存法の規定に沿ったデジタル化が必須となります。

 

 

インボイス制度の狙い

 

適格請求書はこれまでの請求書より取引の詳細が必要があり、適格請求書の作成から承認、会計処理などの負担増が見込まれるのにインボイス制度なぜ導入されるのでしょうか。
きっかけは2019年10月1日の消費税率の8%から10%への引き上げにあります。食料品などに対し軽減税率が導入され、2つの税率が平行して運用されているなか、複数税率への対応や不正を防止する目的で導入される予定の制度がインボイス制度になります。

 

■「複数税率への対応」
インボイス制度は軽減税率等で影響を受ける消費税額を正確に把握することを目的としています。インボイス制度の下で導入される「適格請求書」は商品毎に消費税率がわかり、どの商品が消費税率10%で、どの商品が消費税率8%かが明確になり、仕入税額控除の額も明確になるので消費税額を正確に把握することができます。
■「不正の防止」
帳簿や請求書に記載の税率が不明確であると、例えば軽減税率8%の仕入を行い、計上は税率10%の仕入として差額2%分を利益にするといった不正が考えられます。インボイス制度では仕入税額控除の計算根拠となるように請求書には消費税率、消費税額の表示が必要になりますのでこれにより仕入税額控除の不正を防ぐことができます。

 

8%、10%と2つの税率が平行して運用されているなか、どの取引や商品にどちらの税率が適用されているかを明確にする必要が出てきました。税を徴収する側からは、適正な課税を確保し、また不正を防ぐための仕組みとしての狙いがあります。

 

 

インボイス制度開始に向けてすべきこと

 

それではインボイス制度の適用にあたってすべきことはどのようなことがあるのでしょうか。インボイス制度対応に必要な対応を、売り手側・買い手側という切り口と、課税事業者・免税事業者という切り口で整理すると以下の様になります。

 

■売り手側
①管轄の税務署に申請を行い、適格請求書発⾏事業者に登録する必要があります。
②既存システムが適格請求書に対応するか確認する必要があります。(インボイスに対応したシステムの導入・見直し・リプレイス)
③一定の事項を記載した帳簿および請求書等の保存(インボイスは7年間保存する義務)をする必要があります。
■買い手側
①一定の事項を記載した帳簿および請求書等の保存(インボイスは7年間保存する義務)をする必要があります。
②適格請求書発行事業者登録の有無を確認する必要があります。
■課税事業者
①適格請求書発行事業者登録が必要で事前に登録申請し登録番号を取得しておく必要があります。
※2023年10月1日から登録を受けるためには、2023年3月31日までに登録申請書を税務署に提出する必要があります。
②適格請求書の書式に合わせ、請求書等のフォーマットを変更する必要があります。
③インボイスに対応したシステムの導入・見直し・リプレイスが必要になります。
■免税事業者
免税事業者はインボイス制度開始後でも適格請求書(インボイス)の発行義務はありません。ただ、課税事業者は免税事業者からの仕入について、原則、仕入税額控除ができないこととなりますので、取引先が課税事業者の場合は取引先が消費税控除が受けられなくなります。取引先からその分の値引きを求められたり、最悪の場合取引を解除されてしまうことも考えられますので、免税事業者は免税事業者のままいるか、課税事業者となるかという点を検討することが求められます。

 

売り手側、買い手側それぞれに適した準備が必要であり、且つ、インボイス制度への対応は免税事業者にも影響を及ぼすことが想定されます。

 

 

まとめ

 

■インボイス制度のおさらい
・インボイス制度は消費税の仕入税額控除の方式の一つで、課税事業者が発行するインボイス(請求書など税率・税額を明記する税額票)に記載された税額のみを控除することができる制度。
・インボイス制度開始後は、「適格請求書発行事業者」以外からの仕入に関して消費税の仕入税額控除が受けられなくなる。
・適格請求書発行事業者になるためには「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出して審査を受ける必要がある。
■電子帳簿保存法とインボイス制度
・適格請求書は電子データで提供することが可能。
・インボイス制度の導入にあたり、業務負担が大きくなると予想されるため電子インボイスの活用が有効。
・電子インボイスでの対応の際は改正電子帳簿保存法の規定に沿ったデジタル化が必須。
■インボイス制度の狙い
・複数税率への対応と不正を防止する目的の2つの目的で導入される。
・インボイス制度が適用されるとインボイス制度の下で導入される「適格請求書」は商品毎に消費税率がわかり、どの商品が消費税率10%で、どの商品が消費税率8%かが明確になり仕入税額控除の額も明確になる。
・インボイス制度では仕入税額控除の計算根拠となるように請求書には消費税率、消費税額の表示が必要になり、仕入税額控除の不正を防ぐことができる。
■インボイス制度開始に向けてすべきこと
・売り手側、買い手側、課税事業者、免税事業者のそれぞれで対応すべきことがある。
・インボイスに対応したシステムの導入・見直し・リプレイスが必要である。
・売り手側、買い手側それぞれに適した準備が必要であり、且つ、インボイス制度への対応は免税事業者にも影響を及ぼすことが想定される。

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