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NASDAQ上場への挑戦~NASDAQ上場のプロセスとメリット・デメリット~

2022年10月20日

 

日本のIPOでは、上場の準備に少なくとも3年という期間がかかりますが、NASDAQの場合は最短で半年で上場することが可能です。この「3年」と「半年」の準備期間の違いは、コーポレートガバナンスの整備(内部統制対応)の有無が大きく影響しています。日本の上場審査の基準には、売上高や純資産額といった『形式基準』のほか、上場会社にふさわしい経営基盤の有無を確認する『実質基準』の2つがあります。この実質基準で、コーポレートガバナンスの整備が求められることから、どうしても数年の期間が必要になってしまいます。
NASDAQでも日本と同様に形式基準は存在しますが、一定の要件を満たす新興企業については実質基準の緩和措置(US-SOX内部統制対応の免除)があります。また、資金調達額も日本の3倍から10倍程度の10~40億円程度の調達が見込めることから、NASDAQ上場へ挑戦する日本企業が増えつつあります。
今回は、NASDAQ上場について、上場までの流れやNASDAQ市場の特徴、注意点を紹介いたします。

 

NASDAQ市場の特徴と日本との違い

アメリカには、時価総額で世界第2位のNASDAQのほか、ウォルト・ディズニーやボーイング等が上場する世界第1位のNYSE(ニューヨーク証券取引所)が存在します。全世界の時価総額のうち、この2つの市場で約半分あまりを占めています。NASDAQは、アップルやマイクロソフトといったハイテク企業や、新興企業が多く上場していますが、どのような特徴があるのかを見ていきます。

 

■NASDAQの市場
NASDAQには、グローバルセレクトマーケット、グローバルマーケット、キャピタルマーケットと3つの市場に分かれています。ちょうど東証のプライム、スタンダード、グロースと同じように、上場にあたっての審査基準や上場維持基準等が異なります。グローバルセレクトマーケットが最も厳しく、逆にキャピタルマーケットが最も易しいといった特徴があります。

 

■上場までに必要となる準備期間
日本では、コーポレートガバナンス(内部統制等)の構築や、2年分の進行期の監査が求められますので、準備期間として最低3年は必要になります。一方でNASDAQは半年~1年で上場することが可能です。年間の売上高が1億ドル未満といった要件を満たす企業は内部統制が免除され、さらに2期分の過年度監査となりますので、日本よりも圧倒的に早く上場することができます。

 

■IPO時の資金調達額
2022年上半期における東証グロース市場の資金調達額の中央値は約3億円、前年同時期のマザーズ・ジャスダック市場は約6億円でしたが、NASDAQキャピタルマーケットでは3~10倍(10~40億円)の調達を見込むことができます。

 

■米国の会計基準・監査対応
NASDAQに上場するためには、アメリカの会計基準に従った財務諸表を作成しなければなりません。日本と同じ基準が多いですが、有給休暇の会計処理等大きく異なる部分もありますので、注意が必要です。また、米国の監査法人による監査を受けなければなりません。

このように、日本と比べて上場準備期間は1/3~1/4、資金調達額は3~10倍というメリットがありますが、会計基準や監査対応といったハードルも存在するのです。

 

 

NASDAQ上場までの流れ

 

NASDAQへの上場ですが、日本市場への上場と同じように、証券会社や弁護士、監査法人等の関係者との契約から始まります。上場までのプロセスは、以下の通りです。

 

1.各種書類の電子化・英訳
米国に所在する関係者に展開する必要がありますので、契約書や請求書、領収書といった書類をスキャンし、データ化するだけでなく、翻訳ソフトを使って英語に翻訳する必要があります。
2.デューデリジェンスの対応
米国の弁護士が英訳された事業計画や契約書といった電子書類をチェックし、上場を目指す企業の価値やリスクを調査します。弁護士から送付されてくるリストにしたがって書類を準備します。
3.米国基準に即した財務諸表の作成
米国に上場するには、米国の会計基準に従った財務諸表が必要になりますので、日本基準から米国基準へ変換する必要があります。
4.米国監査法人による監査対応
米国の監査法人が過去2~3期分の財務諸表の監査を行います。監査法人から送付されてくるリストに従い、必要な財務情報、監査証拠(請求書や領収書等)を準備・提出します。
5.目論見書の作成
米国証券取引委員会(SEC)で指定されたフォーム(F-1またはS-1)にしたがい、目論見書を作成します。
6.米国証券取引委員会による審査
提出した目論見書をSECが審査します。最初の提出から約1か月後にSECからコメントが送付され、コメントにしたがって修正を行います。
7.ロードショー(投資家説明会)
機関投資家による株の購入を促進させるため、ロードショーと呼ばれる投資家説明会を行います。

このように、日本の上場と同じようなプロセスもありますが、各種書類の電子化・英訳、米国の会計基準に従った財務諸表の作成や、米国の監査法人の監査対応等、大きく異なる点もあります。特に財務諸表の作成や監査対応は専門知識が必要となり、さらに時間がかかりますので、事前にしっかりと準備する必要があります。

 

 

NASDAQに上場している日本の企業

 

2022年10月現在、NASDAQに上場している日本の企業は全部で4社存在します。2019年に上場したくら寿司、2020年にはメディロム、2022年には吉通貿易とハートコアが上場を果たしました。それぞれどのような企業なのか見ていきましょう。
※資金調達額は上場時の為替レートで換算しています。

 

■くら寿司
説明するまでもありませんが、回転寿司の店舗を経営する会社です。くら寿司は、米国のカリフォルニア州に子会社(Kura Sushi USA, Inc.)を設立し、子会社が2019年8月にNASDAQのグローバルマーケットに上場しました。上場した際の資金調達額は約43億円です。

 

■メディロム
指圧やマッサージを行うRe.Ra.Kuという店舗を経営する会社です。こちらは、新規株式を発行せず、既に発行済みの株式だけで上場する『ダイレクトリスティング』という手法で、2020年12月にキャピタルマーケットへ上場しました。資金調達額は約12億円です。

 

■吉通貿易
東京生活館やTOKYO LIFESTYLEといったドラッグストアを経営する会社です。米国預託株式(ADS)という方法で2022年1月にキャピタルマーケットへ上場しました。資金調達額は28億円です。

 

■ハートコア
CMS・CXM等の開発・運用・保守を手がける情報通信業を営む会社です。米国のデラウェア州に親会社(HeartCore Enterprises, Inc.)を設立し、2022年2月にキャピタルマーケットへ上場しました。資金調達額は約17億円です。

この4社の中で、ハートコアは売上高が約10億円にも関わらず、17億円の資金調達に成功しています。類似する日本の同様の市場では、3~6億円が中央値でしたので、圧倒的な差があることが分かります。

 

 

NASDAQ上場および上場後の注意点

 

NASDAQは資金調達額が多い、準備期間が短い等、非常に魅力的な要素がある一方、ハードルも存在します。では、上場の準備段階と上場後で注意すべき点とその対策を紹介します。

 

■英語力+会計力の高い人材の確保
・上場準備段階から米国の監査法人とのやり取りが頻繁に発生する。
・米国の監査法人は日本の法律や商習慣の知見がないため、英語での説明が求められる。
【対策】 英語力だけでなく、会計知識も合わせ持った人材の確保が必要。

 

■日米2つの基準に対応できる決算体制の確立
・NASDAQ上場後も税務申告や決算公告があるため、日本基準にもとづく決算が必要。
・NASDAQ上場後は、米国基準に即した財務諸表を四半期ごとに作成する必要がある。
【対策】 決算体制の強化だけでなく、ITシステムを使った効率化も求められる。

 

■NASDAQ上場後における内部統制の構築
・年間売上高が1億ドル、公開株式の時価総額が7億ドル以下の企業は内部統制が免除される。
・超過した時点でSOX法第404に基づく体制の整備が必要となる。
【対策】 企業の成長度合に合わせて内部統制のしくみの構築を進める必要がある。

 

このような対策ですが、スキルを持った人材を採用し、全て社内のリソースで対応するということはなかなか難しいのが現状です。現在のリソースで対応できる範囲を見極め、対応が難しい部分は外部にアウトソーシングしたほうが効率的です。

 

日本で上場を目指す企業の中には、準備期間の3年で思うように作業が進まず、毎年一定数の企業が上場を断念しています。NASDAQでは、最大の障壁といっても過言ではない内部統制が免除されますので、その分短い期間で上場を果たすことが可能です。また、資金調達額も圧倒的に多いので、NASDAQへの上場を目指す企業はこれからどんどん増えることが想定されます。NASDAQは上場にあたってのハードルはあるものの、アウトソーシングを活用すれば決して難しい訳でもありませんので、「上場するならNASDAQ」という日も遅かれ早かれやってくるのかもしれません。

 

 

 

まとめ

 

■NASDAQ市場の特徴と日本との違い
・年間の売上高が1億ドル未満といった要件を満たす企業は内部統制が免除されるため、半年~1年で上場することが可能。
・NASDAQキャピタルマーケットでは、日本と比べて3~10倍(10~40億円)の調達を見込むことができる。

 

■NASDAQ上場までの流れ
・NASDAQへの上場には、各種書類の電子化・英訳、米国の会計基準に従った財務諸表の作成や、米国の監査法人の監査対応等、日本と大きく異なる点がある。
・特に財務諸表の作成や監査対応は専門知識が必要となり、時間がかかりるため、事前準備が必要。

 

■NASDAQに上場している日本の企業
・NASDAQに上場した日本企業は、2019年にくら寿司、2020年にメディロム、2022年に吉通貿易とハートコアと4社が上場を果たしている。
・ハートコアは売上高が約10億円にも関わらず、17億円の資金調達に成功している。

 

■NASDAQ上場および上場後の注意点
・NASDAQへの上場には、英語力+会計力のもった人材確保、日米2つの基準に対応できる決算体制、上場後の内部統制対応が求められる。
・社内リソースでの対応が難しい領域は、外部にアウトソーシングしたほうが効率的。

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