月次決算早期化を目指して!~業務改善に取り組む前に~

2023年03月16日

 

経営者は早く結果を知りたいもので、それはいつの時代も変わりません。しかし、その想いを自分の会社で実現できているとは限りません。先日は、50年以上続く非上場会社で売上が数百億円もありながら、毎月初に開催される役員会の業績報告に、前々月の数字を使っているケースを目にしました。言い換えると、4月の業績報告を6月に受けるということです。本来は、4月の報告を翌5月に受けて、改善策や経営方針に活かさなければ、健全な経営体質とは言い難いです。もしこのような緩い管理状況を金融機関に知られれば、信頼を失うことにもつながりかねません。
このような事態を避けるために、月次決算早期化についてその目的、メリット、阻害要因、そしてポイントの4つに分けて解説します。これらを従業員が理解して業務改善に取り組めば、より効率的で効果的にプロジェクトを進められます。

月次決算早期化の目的

まずは月次決算早期化の目的について、「予算の達成状況を速やかに確認するため」、「正確な現状把握からタイムリーな経営判断をするため」、「金融機関からのイメージアップのため」という3つのポイントから見ていきます。

 

1.予算の達成状況を速やかに確認するため
会社が計画した予算に対して、どのような実績が出ているかを比較・考察します。もし予算と実績がかけ離れていたら、直ぐにその原因を調査します。予算に対してネガティブな数字が出ていれば、どのようにその差分を埋めるか検討します。反対に、ポジティブな数字が出ていても、浮かれてはいけません。単なる売上の前倒しや、為替レートの影響かもしれないので、冷静な分析が必要です。

 

2.正確な現状把握からタイムリー経営判断をするため
月初の経営会議で、前月の最新業績報告を受けられます。そこには、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表のみならず、会社の収益性・安全性・成長性・生産性を示す財務指標や、資金繰り表も含まれます。これらの情報をもとにした正確な現状把握と将来予測から、実現性の高い経営判断が可能となります。

 

3.金融機関からのイメージアップのため
金融機関は、融資先に定期的な業績報告を依頼して、お金がきちんと返済される見込みがあるかチェックします。その要求に対して、情報をパッと差し出して、質問に対してクリアな回答をきれば、経営の透明性が高いとみられ、金融機関からのイメージがグっと上がります。反対に、準備に時間がかかったり、説明のできない数字があると、管理状況を疑われてしまうので、絶対に避けなければなりません。

 

以上のように、「予算達成状況による過去分析」をして、「正確な現状分析に裏打ちされた将来予測を立てる」ことで、実現性の高い経営方針を打ち出せます。また、その情報を金融機関と共有すれば、ポジティブなイメージを与えられます。

 

 

月次決算早期化のメリット

 

もし月次決算早期化へ向けて業務改善に取り組むのであれば、その動機を明確にしなければなりません。前項で挙げた目的の先にメリットを感じれば、さらにモチベーションが高まり継続力もアップします。

 

1.状況変化へ柔軟に対応できる
タイムリーに予算と実績の差異を分析することで、傷口の浅いうちに問題を見つけて処置することができます。例えば、年々高くなる原材料に対して販売価格を据え置いていると、利益を圧迫します。このような状況を見たら、仕入先と価格交渉する、原材料を切り替える、業務改善で原価を削減する等の原価対策が必要です。このように、早期に問題を発見して改善策を講じることで、状況変化に対して柔軟な対応ができます。

 

2.マーケットの先行者利益を受けられる
最新の業績報告から将来の余裕資金を把握することで、設備投資や海外への拠点進出等具体的な投資計画を立てることができます。そうすれば、製造キャパシティを増やしたり、販売網を拡大する等、競合に先んじて次の一手を打つことができ、マーケットの先行者利益を受けられる可能性が高まります。

 

3.金融機関からの融資が増える
金融機関へ月次の業績報告を続ければ、経営管理がシッカリしている印象を与えられます。例えば、同じような財務状況の会社でも、スピーディーな月次決算報告と、今後の改善策の有無によって、金融機関からのイメージがガラリと変わります。自主的に毎月報告を続けてアピールを繰り返した結果、融資額が倍増したという話もありますので、試してみる価値は十分にあります。

 

このように、月次決算早期化には「状況変化への柔軟な対応」、「マーケットの先行者利益」、「金融機関からの融資増額」というメリットがあり、どれも経営者にとって魅力的なものです。

 

 

月次決算早期化の阻害要因

 

今まで多くの会社を見てきましたが、月次決算早期化の阻害要因上位には、「勘定科目の残高確定が遅れる」、「手入力や紙の伝票起票に時間がかかる」、「業務の属人化がボトルネックになっている」等が挙げられます。

 

1.勘定科目の残高確定が遅れる
売上や原価等の勘定科目確定に時間がかかることがあります。その一番の理由は、納品書や請求書といった売上や仕入の金額を確定させる書類が、期日までに集まらないことです。仮に会社に届いても、次は担当者を起点とした社内承認フローが待っているので、経理にたどり着くまでは更に時差があります。もしその承認フローが、書類をプリントアウトしたりメール展開するようなローテクな手順だと、書類が埋もれて途中で行方不明になることもあります。そうすると、必然的に残高確定が後ろ倒しになります。

 

2.手入力や紙の伝票起票に時間がかかる
もし手作業で何百枚もの請求書をシステムへ打ち込んでいれば、入力漏れやミスをダブルチェックする時間が必要です。また、古くからの慣習で、紙の振替伝票を起票している会社もあります。システムへ直接入力してしまえばそれで終わりなのですが、伝統的な作業を切り替えるのは簡単ではありません。

 

3.業務の属人化がボトルネックになっている
特定の知識を持った従業員しかできない、属人化された業務がボトルネックとなり、月次決算が遅れている可能性があります。その原因として、純粋な人員不足も挙げられますが、ベテラン従業員が地位キープのために抱え込んだり、自分は知識が浅いので難しそうと遠慮してしまうケースもあります。製造原価や給与計算等は専門性が高く、その傾向が強いです

 

以上のように、「業務が最適化されていない」、「古い慣習に縛られている」、「業務が属人化している」、という理由から月次決算が遅れてしまうのです。

 

 

月次決算早期化のポイント

 

それでは最後に、月次決算早期化に向けて業務改善に取り組むうえのポイントを、前項の阻害要因をどのように解消するか対比する形で見ていきましょう。

 

1.速やかに勘定科目の残高を確定させる
月次決算をスムーズに実施するには、それぞれの部門が売上や原価等の情報をタイムリーに入手して、スムーズに経理へ届けなければなりません。もしその途中の承認フローで手間取るなら、ワークフローシステムの導入で効率化を図れます。オンライン上で「申請・回覧・承認」の手順を踏めるので、どこかに書類が紛れ込んでしまう心配もなく、承認作業の時間を大幅にカットできます。

 

2.手入力を減らし、業務を自動化する
紙の請求書や領収書の処理に困っている方々も、諦めてはいけません。識字率の高い「AI-OCR」と、システム入力業務を自動化する「RPA」を組み合わせたツールには、書類を読み込むだけで仕訳まで完了するシステムもあります。電子帳簿保存法に対応していれば、その流れでファイル保存まで完了することが可能です。

 

3.いつ・誰でも業務をできるようにする
属人化がボトルネックで困っていたら、業務の標準化に取り組みましょう。まずは業務がどのようなフローで、どのくらいの量があるか、アンケートやインタビューを通して棚卸しを実施します。そこで属人化している業務を見つけたら、ナレッジ共有をスムーズに行うために、マニュアルを作成して情報共有します。そうすれば、特定の従業員に依存しないチームを作ることができます。

 

以上のように、ITツールの運用に加えて、業務を標準化してナレッジ共有すれば、スムーズに月次決算を早期化できます。

 

月次決算早期化の業務改善に取り組むには、まずは目的を明確にし、それを達成したときのメリットを共有してください。そのうえで阻害要因を理解して、ポイントを一つずつ解消します。最新のデータを最短のタイミングで分析し、ビジネスをアップデートし続けることが、会社を守り、成長・発展させることにつながります。

 

 

 

まとめ

 

■月次決算早期化の目的
予算の達成状況を速やかに確認するため
正確な現状把握からタイムリー経営判断をするため
金融機関からのイメージアップのため

 

■月次決算早期化のメリット
・早期に問題を発見すれば状況変化へ柔軟に対応できる
・競合に先んじて次の一手を打てばマーケットの先行者利益を受けられる
・毎月の業績報告を続ければ金融機関からの融資が増える

 

■月次決算早期化の阻害要因
・書類が期日までに集まらず勘定科目の残高確定が遅れる
・伝統的に行われている手入力や紙の伝票起票に時間がかかる
・特定の従業員による業務の属人化がボトルネックになっている

 

■月次決算早期化のポイント
・ワークフローシステムによる承認手順最適化で速やかに勘定科目の残高を確定させる
・AIOCRとRPAにより手入力を減らし、業務を自動化する
・業務標準化とナレッジ共有でいつ・誰でも業務をできるようにする

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