生産性を向上させる業務標準化とその活用方法

2023年05月18日

 

少子高齢化による労働人口の減少だけでなく、働き方改革による長時間労働の是正、有給休暇取得の義務化等により、ヒューマンリソースの確保は年々難しくなってきています。限られたヒューマンリソースの有効活用は、多くの企業にとって課題となっています。この課題の解決策の1つとして、業務の効率化や品質向上、生産性の向上が見込まれる『業務標準化』が再び注目されています。
『業務標準化』は、業務の手順や方法を可視化することによって明確にし、誰でも同じように作業ができるようにすることをいいます。業務手順や方法が明確になることで作業ミスが減り、業務を効率化することが可能になります。また、業務手順や方法に加えて『作業時間』を明確にすることで、業務のムリ・ムダ・ムラを排除することが可能になりますので、ヒューマンリソースの最大活用を図ることができるようにもなるのです。
今回は、業務標準化についてメリットや進め方だけでなく、人事やITシステムにおける活用方法もあわせて紹介します。

業務標準化とは

業務標準化は、業務の手順や方法を明確にし、誰でも同じように作業ができるようにすることをいいますが、大きく2種類に分類することができます。一つは『業務フローの標準化』、そしてもう一つは『作業の標準化』です。それぞれ業務を「可視化」すること自体は同じなのですが、目的や用途が異なります。

 

業務フローの標準化
業務フローの標準化は、業務の流れ(フロー)を可視化します。「業務の流れ」を見えるようにすることが目的となりますので、全体を俯瞰した状態で進めることがポイントです。これにより、重複している業務や、成果物を伴わない業務が分かるようになり、これらを排除することで業務全体をスリム化(最適化)することができます。

 

作業の標準化
作業の標準化は業務フローの中にある個々の作業を可視化します。「業務フローの標準化」よりも細かい業務の単位になりますので、より細かい情報を把握し、可視化(マニュアル化)することがポイントです。細かい情報として、個々の従業員がノートやメモ紙に残したものがあるかもしれません。これらを共通マニュアル化することで、誰でも同じ作業を行うことができるようになります。また、作業時間を計り、定量化することもお勧めします。定量化によってムリ・ムダ・ムラを排除することが可能となるのです。

 

「業務フローの標準化」も「作業の標準化」も業務を可視化することに違いはありませんが、その業務の単位が異なります。業務フローの可視化には、業務フロー図を用いることが一般的です。作業の可視化については、マニュアルや手順書を用いますが、最近では動画やアプリを活用することもあります。
「業務フローの標準化」と「作業の標準化」を進めることにより、業務を最適化したり、担当者が急に休んでも業務を止めることなく他の従業員によって対応できる状態(共通化)が実現できるようになるのです。

 

業務標準化のメリット

業務標準化は、業務フロー図やマニュアル、手順書といった形式で業務の手順や方法を明確にすることで、業務の効率化や品質・生産性向上の目的で行われますが、具体的なメリットは以下の通りです。

 

業務の引き継ぎ・教育が効率化される
マニュアルや手順書によって作業方法・手順が明確になることで、属人化されていた作業が共通化され、業務を簡単に理解し実行できるようになります。マニュアル・手順書により習得する社員は学びやすく、教育する社員は漏れなく必要事項を伝えることができます。その結果、教育の属人化も解消され教育スケジュールも柔軟に作成することが可能になります。

 

業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を排除できる
作業時間を計測し、標準化することで「ムリ・ムダ・ムラ」を排除することができるようになります。ムリとは作業負荷が高まっている繁忙期のような状況、ムダとは反対に負荷が低くなり閑散期のような状況、ムラはこの2つが混在している状況です。標準化によって誰でも同じ作業を行うことができるようになれば、担当者を増やしたり減らしたりと柔軟な対応ができるようになりますので、ムリ・ムダ・ムラを排除することが可能となります。

 

成果物の品質を統一することができる
従業員全員が同じマニュアル・手順書で同じ作業を行いますので、常に一定の品質を保つことができるようになります。仮に担当者が変更になったとしても、標準化されたマニュアルにより前任者と同じ方法・手順で作業することができますので、同じ品質の成果物を作り出すことが可能です。また、マニュアル・手順書にノウハウを蓄積することで、業務品質をさらに向上させることもできます。

 

このように、業務標準化には業務の引継ぎ・教育の効率化、業務のムリ・ムダ・ムラの排除、成果物の品質担保といった効果が期待できるのです。

 

業務標準化の進め方

業務標準化には、業務全体の最適化を目的とした『業務フローの標準化』と、作業の共通化やムリ・ムダ・ムラの排除を目的とした『作業の標準化』の2つの種類がありますが、どちらも業務を可視化することから始めます。業務の可視化といっても、作業や業務自体を可視化するのか、業務のプロセス(流れ)を可視化するのかによって進め方が異なります。作業や業務自体を可視化するには業務のたな卸しを行い、業務一覧表を作成します。一方で、業務プロセスを可視化するには業務フロー図を作成します。

 

1.業務のたな卸し(業務一覧表の作成)
該当する業務のたな卸しを行い、業務全体の見える化を行います。たな卸しにあたっては、担当者にたな卸し用の入力フォーマットを展開し、全ての業務を記入してもらい、それらを集めて『業務一覧表』を作成します。この業務一覧表ですが、業務分掌等の規程と照らし合わせ、抜け漏れや責任範囲外の業務がないかといったチェックを行うと良いです。また、一覧化した各業務について『難易度』や『マニュアル・手順書の整備状況』を確認しておくと、標準化を行うべき業務のヒントになります。

 

2.業務プロセスの可視化(業務フロー図の作成)
業務一覧表をもとに業務フォロー図を作成し、業務の流れを見える化します。業務フロー図の作成にあたっては、各業務や作業を実施するにあたって必要な情報やもの(インプット)と、業務や作業を処理することによって生まれる成果物(アウトプット)を意識して描くと適切な業務フロー図を作成することができます。

 

3.業務フローの標準化
作成した業務フロー図をもとに重複している業務や、成果物を伴わない業務を抽出し、排除することができないか検討します。また、業務の順番も適切かどうかをチェックし、インプットやアウトプットの視点でスムーズに流れるように整理を行います。

 

4.作業の標準化
業務一覧表の中で、難易度が低く、マニュアルや手順書が整備されていない業務を抽出し、マニュアルの作成を進めていきます。難易度の高い業務については、そのままマニュアル化することは難しいため、ITツール等を用いて簡素化する業務改善を並行して進めるとスムーズです。

 

このように、業務の標準化は業務の可視化から始まります。「業務フローの標準化」を先に着手することで、排除されるべき業務に対する「作業の標準化」を進めないようにすることができるようになるのです。

 

 

業務標準化の活用方法

業務標準化は、業務全体の最適化(スリム化)や作業の共通化、ムリ・ムダ・ムラを排除する目的で行われることが一般的ですが、その他にも活用方法があります。

 

採用基準の引き下げ
属人化した業務に対して新しい担当者を採用する場合、高いスキルや知識が必要となってしまいます。これは、業務の見えない部分に対して柔軟に対応できるだけのスキルや知識が必要だからです。業務標準化によって業務を共通化したり、マニュアルが整備されれば、求められるスキルや知識がより明確になりますので、採用基準を下げることが可能となります。

 

人員配置の最適化に伴う人件費の削減
属人化した業務は、一般的にベテラン社員や管理職が担当していることが多く、業務に費やされるコストは割高になります。業務標準化によって属人化が解消されれば、経験や役職が低い担当者でも対応できるようになりますので、業務に対するコストを下げることが可能になります。

 

ITシステム化の促進
必ずといって良いほど属人化した業務は、ITシステム化を進めるうえで足かせとなります。そもそもやり方の分からない業務をシステム化することはできません。数年前からDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める企業が増えてきていますが、業務標準化は間違いなくITシステム化の潤滑油になります。

 

このように、業務標準化は最適化や共通化といった目的以外にも、採用基準の引き下げや人員配置の最適化、ITシステム化の促進といった活用方法もあるのです。

 

まとめ

■業務標準化とは
・業務の手順や方法を明確にし、誰でも同じように作業ができるようにする取り組み
・業務フローの標準化は、業務の流れ(フロー)を可視化する取り組み
・作業の標準化は業務フローの中にある個々の作業を可視化する取り組み

 

■業務標準化のメリット
業務の引き継ぎ・教育が効率化される
業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を排除できる
成果物の品質を統一することができる

 

■業務標準化の進め方
・該当する業務のたな卸しを行い、業務全体の見える化を行う
・業務フロー図を作成し、業務の流れを見える化を行う
・重複/成果物を伴わない業務を抽出し、排除可能か検討する
・難易度が低く、マニュアルや手順書が未整備の業務を抽出し、マニュアルの作成を進める

 

■業務標準化の活用方法
採用基準の引き下げー求められるスキルや知識がより明確になるため
人員配置の最適化に伴う人件費の削減
ITシステムの促進ーITシステム化の足かせである属人化業務を共通化するため

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