管理範囲が限定的な小規模予算が抱える課題と解決の方向性

2023年07月20日

 

予算管理はどのような企業や組織であっても成功に向けた道筋を描くうえで重要な要素です。大規模な企業であれば、その重要性の高さから専用のシステムを使われることがあります。しかし、起業して間もないスタートアップや中小企業、社内の特定部門等の小さな組織の場合、管理する予算項目や手法の簡便さ、システム投資できる金額が限られていることから専用システムではなくExcelを使われているのが実情です。
これらの組織では「管理する予算の範囲が狭いからExcelでも充分」、「不便なことはあるけれどシステムを買うほどではない」と思われていることが多いように感じます。しかし、最近の予算管理システムは大企業向けだけではなく、小さな企業や組織でも使えるようなものも増えています。今回は小規模な予算管理に関する特徴や課題を紹介しながら、予算管理システムの機能やトレンドについて解説していきます。

 

小規模予算の特徴と傾向

予算管理は企業や組織において重要な業務の一つです。ここでは管理の対象範囲が限られる小規模な予算の特徴と傾向についてご紹介します。

 

・予算の管理内容がシンプル
大規模な予算管理では複数の予算項目があり、それぞれに細かな管理が必要となりますが、小規模な予算では項目が少ないために複雑な管理にはならない傾向があります。例えば、売上の予算と実績は管理しても原価は対象にしない場合や、経費予算も科目別のみで摘要別には管理しない等があります。そのため、簡易的な表やツールでも事足りることが多いです。

 

・予算の修正や調整が柔軟
小規模な予算では予算の金額規模が小さく、管理項目も少ないので予算の修正や調整が比較的簡単にできます。大規模な予算では多くの予算項目が存在し、策定の業務も1次予算や2次予算のように体系立てられていますが、小規模な予算ではそのような手続きは簡略化されやすい傾向にあります。そのため、必要に応じて予算の修正や調整を行い、柔軟に対応することができます。

 

・Excel等の表計算ソフトを利用した予算管理
小規模な予算管理では予算の項目が少なく、管理手順もシンプルです。そのため、予算管理に特化した機能を豊富に持つシステムに導入や維持の費用をかけて利用する必要性は低いと考えられる傾向があります。小規模な予算を扱うチームではシステム投資をせず、代わりにExcel等の表計算ソフトを使用して予算の集計表を作成し、管理をしていることが一般的です。

 

以上が小規模な予算の特徴です。シンプルな構造をしているためにExcel等の既存ツールで業務を行っているケースが多いのですが、実は様々な課題を抱えながら運用している企業も少なくありません。

 

小規模予算におけるExcel活用の問題点

Excelを活用して管理されることの多い小規模な予算ですが、Excelはあくまでも表計算ソフトであり、予算管理の業務を想定した機能を備えてるわけではないため、いくつかの課題が存在しています。

 

【課題①】予算や実績データの誤入力や入力漏れのチェックが不充分になる。
小規模な予算管理を主に行う組織としてはスタートアップ企業や特定の部門内のチーム等があり、コンパクトな組織体制であるがゆえにメンバーは複数の業務を兼任していることが多いです。そのためExcelの予算管理表に入力された予算や実績データを十分にチェックできず、誤ったデータの入力や漏れが発生するリスクがあります。

 

【課題②】予算や実績の修正内容を把握しにくい。
Excelではデータを上書きすると変更履歴が残らず、いつ誰が何を修正したのかがわかりません。担当者がデータを修正したり調整した際には手動で変更内容や日付を記録する必要があり、それらが行われないと後から修正内容を把握することが難しくなります。

 

【課題③】予算管理ファイルの最新版がわからなくなる。
Excelはファイルをコピーすることができますが、複数の担当者が予算や実績を編集するため個別にファイルを作成すると、最新版が不明確になりデータの整合性が取れなくなることがあります。ファイルのバージョン管理が不十分であると、正しい情報を把握することが難しくなります。

 

【課題④】分析に時間がかかる。
Excelでは主に関数を用いてデータ収集や予実対比等の分析をしていますが、欲しい結果を得るための設定は手作業となり、時間を要します。また、収集する元になるExcelに様式変更等が生じた場合には、それに合わせて集計や分析を行うExcelの設定変更も必要となります。そのため、実際の分析を行えるまでに時間がかかることがあります。

 

以上のようなExcelに関する課題を解決するためには、専用の予算管理ソフトウェアやクラウドベースの予算管理ツールを検討することが選択肢の一つとなります。

 

予算管理システムを用いた効率的な予算管理

Excelを利用する予算管理はコストがかからないという利点がある反面、元々が表計算ソフトであるため、予算管理に必要な機能が不足していることで様々な課題を抱えることになります。それらの課題をクリアするため、専用の予算管理システムには業務に対応した機能が備えられています。

 

①予算や実績データの誤入力や入力漏れに対するチェックとアラート機能
数値の異常に対する閾値の設定や数値が入るべき箇所に文字列が入力された場合の警告やエラー表示を行います。また、警告データがあった場合には関係者に通知する等、システムが自動的に対応します。これにより、誤った入力や入力漏れを早期に検知し、正確なデータ管理を実現します。

 

②修正内容を把握する操作ログと変更履歴管理機能
担当者別の操作ログやデータ入力項目別の変更履歴を残す機能があり、誰がどのような修正や変更を行ったのかを追跡することができます。また、金額修正等の重要な変更には申請承認機能を組み合わせることも可能であり、不用意な変更を防ぐことができます。

 

③最新情報を把握するバージョン管理機能
入力が完了した予算や実績データを修正する場合にデータのバージョンを変えて保存する機能があります。これにより過去のデータと最新のデータを明確に区別することができます。

 

④データ分析を行うための集計機能
データ項目(年度、期間、勘定科目、部門、製品、地域等)を組み合わせて表示したり、データ項目別に指定を切り替えて表示することができます。また、元データに変更があった場合でも即時に反映されるため、集計画面側の設定変更を行う必要がありません。そのため、短時間で柔軟な分析が行えます。

 

小規模な予算管理でも専用の予算管理システムを活用することで課題を解決し、効率的で正確な予算管理を実現することができます。適切なツールを導入することによって組織の成長や変化に合わせて予算管理の品質を向上させることが可能です。

 

予算管理システムのトレンド

予算管理システムはExcelよりも利便性の高い機能を有しています。しかし小規模な予算を管理している企業やチームではあまり導入が進んでいないのが現状です。その理由の一つとして業務はExcelでも対応可能であり、システム導入による費用対効果を見出しにくいということがあります。結果、Excelの不便さを感じながらも予算管理システムの導入を見送っているケースがあります。
しかし、昨今では予算管理の規模や関わる人の数等に応じて、導入しやすい機能群や価格帯で提供されるシステムも増えてきています。

 

・SaaSやクラウドによる安価な提供
従来の予算管理システムは高機能で高価格なものが多く、小規模な予算管理を行う企業やチームにとっては導入のハードルが高いものでした。しかし、最近ではSaaSやクラウド環境を利用して安価に予算管理システムを提供するサービスも増えてきています。

 

・無料版の提供
予算管理システムの中には小規模な予算管理やチームに限定して無料で使用できるものも存在します。これによりシステムの試用や適合性の確認を行い、導入のメリットを検討することができます。無料版を活用することで低コストに予算管理システムを導入し、利便性や効率性を享受することができます。

 

・導入コストの低減
従来の予算管理システム導入の際にはITコンサルタント等の専任担当者が設定やカスタマイズを行うため、大きな費用がかかることもありました。しかし、SaaS版や無料版の予算管理システムには詳細なマニュアルやトレーニングが整備されており、専門のスタッフや外部のコンサルタントを必要とせず、自分たちの手でシステムを導入できるような仕組みが用意されています。

 

このような予算管理システムを導入することで小規模な予算でも効率よく正確な管理を実現することができます。適切な予算管理システムの選択によりExcelでは解決が難しかった課題を克服して、チームや企業の成果の最大化を目指す環境を整えることが可能となります。

 

まとめ

■小規模予算の特徴と傾向
・小規模な予算は管理項目が少なくシンプルである。そのため、簡易的な表やツールでも事足りることが多い。
・予算の金額規模が小さく、管理項目も少ないので予算の修正や調整が比較的簡単である。
・予算管理に特化したシステムを使われることが少なく、Excel等を使用することが一般的である。

 

■小規模予算におけるExcel活用の問題点
・予算や実績データの誤入力や入力漏れのチェックが不充分になる。
・予算や実績の修正内容を把握しにくい。
・予算管理ファイルの最新版がわからなくなる。
・分析に時間がかかる。

 

■予算管理システムを用いた効率的な予算管理
・予算や実績データの誤入力や入力漏れに対するチェックとアラート機能
・修正内容を把握する操作ログと変更履歴管理機能
・最新情報を把握するバージョン管理機能
・データ分析を行うための集計機能

 

■予算管理システムのトレンド
・SaaSやクラウド環境を利用して安価に予算管理システムを提供するサービスが増えている。
・予算管理システムの中には小規模な予算管理やチームに限定して無料で使用できるものがある。
・専門のスタッフや外部のコンサルタントを必要とせず、自分たちの手でシステムを導入できるような仕組みが用意されている。

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