バランススコアカードの活用方法 ~ビジネス戦略を次のレベルへ~

2023年11月16日

 

組織をとりまく環境は、日々刻々と変わり続けています。このような状況は、バランススコアカード(BSC)が誕生した1990年代当時から現在にかけて変わりません。そして、普遍的なビジネス原則に基づいたBSCというフレームワークは、現在も多くの組織で導入・運用が続けられています。これを組織内で多層的に活用すれば、目標に取り組むための力強い推進力を生み出すことができます。さらに、組織の一部門やチーム単位での活用も可能であり、特定の部門の方向性や戦略を明確にするために有効です。

 

今回は、最初に部門レベルでのBSC活用方法を解説します。次に、BSC構築に欠かせないSWOT分析とクロス分析の活用方法と、アクションプランの策定方法にスポットライトを当ててお話しします。そして最後は、BSCはどのような狙いを持って活用されるのか、実例を見ていきます。

部門レベルでのバランススコアカード活用

 

バランススコアカード(BSC)の効力を最大限に発揮させるためには、組織全体での導入をお勧めします。しかし、組織が大きければ大きいほど多層的で幅の広い構造となるため、BSC構築と運用が複雑となり、導入に対するコストと時間が膨れ上がります。そのような場合は、シンプルに部門レベルで活用することも可能です。

 

・部門全体レベルのアプローチ
全体レベルのBSCにおいては、部門の最上位層が戦略と目標を設定し、これを次のレベルのグループ・チームや個人に展開する、ウォーターフォール型のアプローチを採用します。この方法を通じて、部門全体の方向性や目的を明確にし、それを組織全体の戦略としっかりと一致させることが可能となります。

 

・グループ/チームレベルのアプローチ
次に、グループやチームのリーダーが中心となり、部門全体の戦略をより具体的なアクションプラン(行動計画)に落とし込みます。この段階では、部門の目的と合致する具体的なタスクやプロジェクトを計画することで、戦略を効果的に実行することが可能となります。

 

・個人レベルのアプローチ
さらに、グループやチームのBSCは、個人レベルまで展開されます。ここでは、各従業員の役割や責任が、グループや部門の目標にどのように結びついているかを明確化します。また、日常の業務やタスクの優先順位を決定し、自身の業績を評価する基準としても使用されます。

 

このウォーターフォール型のアプローチでは、部門全体が一貫した方向性を持ち、各レベルでの活動に戦略的なつながりを持たせることができます。また、各レベルの従業員が、自身の業績とその影響を明確に理解し、戦略的な意思決定にどのように貢献しているかを感じられます。これらの総合的な要素から、部門全体がブレずに目標へ向かって、一直線に突き進むことができるのです。

 

 

SWOT分析とクロス分析の活用

 

バランススコアカード(BSC)では、組織のビジョンやミッションを実現するための戦略を明確にすることが可能であり、その構築過程においてSWOT分析とクロス分析は欠かせない役割を果たします。この段落では、SWOT分析とクロス分析とはどのようなもので、どのような役割を担っているか掘り下げます。

 

・SWOT分析
SWOT分析は、組織の内部要因である「強み」と「弱み」、外部環境に関連する「機会」と「脅威」を明らかにする手法です。「強み」と「弱み」では、財務・製品サービス・内部プロセス・学習と成長の観点から、組織内部の要素を分析します。一方、「機会」と「脅威」においては、顧客・市場・業界のようなミクロ環境と、政治・経済・社会・技術からなるマクロ環境の変化を分析します。
※SWOTとは、強み(Strengths)/弱み(Weakness)/機会(Opportunities)/脅威(Threatens)の頭文字です。

 

・クロス分析
一方でクロス分析は、市場内での自社の立ち位置や、競合との相対的な位置関係を詳しく分析することで、事業戦略をより明確にする手法です。具体的には、次のようにSWOT分析の要素を掛け合わせて戦略を練ります。

 

①SO戦略(Strengths x Opportunities):企業の強みを活かして市場の機会を捉え、新サービスや製品を立ち上げる戦略
②WO戦略(Weaknesses x Opportunities):外部の好機に乗じて内部の弱みを改善する戦略
③ST戦略(Strengths x Threatens):企業の強みで外部の脅威に対抗し、競合との差別化を図る方策を練る戦略
④WT戦略(Weaknesses x Threatens):困難な環境下でのリスク回避や事業の縮小、撤退を検討する防衛的な戦略

 

これらの分析結果は、BSCの戦略テーマや目標に統合されて、それらの関係性をビジュアル化した戦略マップの一部となります。その結果、組織は現実的な市場環境や競合状況に基づいた、より具体的で実行可能な戦略を推進することができるのです。

 

 

アクションプランの策定方法

 

どれだけ時間をかけて深い想いを込めた戦略テーマや目標を設定していても、具体的なアクションプラン(実行計画)がなければ何も始まりません。バランススコアカード(BSC)構築の過程でこのプランをしっかりと策定すれば、目標への道のりを明確にし、必要なリソースや期限を割り当てることができます。

 

まず最初に、アクションプランの策定は次の手順で行います。

 

①現状分析と目標設定:現状を理解し、達成すべき目標を設定します。これにより、今後の方向性を明確にし、どのような成果を目指すかを決定します。
②責任者の指名とリソースの割り当て:各タスクの責任者と必要なリソースを決め、タスクの円滑な進行をサポートします。
③実行スケジュールの作成:各タスクの開始・終了タイミングを設定し、計画全体の進捗を可視化します。
④進捗確認の時期の明確化:各タスクのチェックポイントを設け、進捗のモニタリングを容易にし、調整やフィードバックの機会を設けます。

 

上記の手順でアクションプランを策定すれば、あとは実行に移すだけです。しかし、目標が不明瞭である、リソースが不足してる、組織文化の抵抗があるような状況では、計画の進行が困難となります。そこで、次のような対策が有効です。

 

目標が不明瞭:明確に共有してメンバーのモチベーションを向上させるための、定期的なミーティングを開催してフィードバックを共有します。
リソース不足:追加のリソースを確保するか、優先度の高いタスクにリソースを集中的に割り当てます。
組織文化の抵抗:教育や研修を通じて新しい価値観を導入したり、変革を推進するリーダーを配置することが効果的です。

 

アクションプランは、成功への指針です。策定と実行の際には、上記手順や課題とその対応策を考慮することで、組織が目指す成功へと一歩ずつ近づくことができます。

 

 

バランススコアカードの活用例

 

バランススコアカード(BSC)の活用方法は組織によってさまざまで、導入することのメリットは多岐にわたります。そこで、今まで弊社が導入をお手伝いしたケースから、「戦略と業績の連携」、「従業員のモチベーション向上」、「戦略の柔軟な修正」という3つの目的から考察します。

 

・戦略と業績の連携
一つ目の「戦略と業績の連携」は、組織が掲げる戦略的な目標(KPI)と実際の業績をリンクさせることです。戦略の実行状況やその成果を定量的に測定・評価することで、戦略の具体的な方向性や優先順位を明確化します。また、KPIの定期的なモニタリングを通じて、組織の業績が戦略的な目標にどれだけ近づいているのか、またどの領域で改善が必要かを把握することができます。

 

・従業員のモチベーション向上
二つ目の「従業員のモチベーション向上」は、組織の成功において極めて重要な役割を果たします。明確な目標と評価基準を設定することで、従業員は自身の役割や責任を明確に理解し、その上で自ら業績を最大化するための努力ができます。そして、目標達成の際の報酬やフィードバックも、従業員のモチベーションをさらに向上させるキーとなります。

 

・戦略の柔軟な修正
三つ目の「戦略の柔軟な修正」は、定期的な戦略のモニタリングを行うことで、変わりゆくビジネス環境に適応することができます。状況に応じて戦略を柔軟に修正・調整することで、変化する市場環境や競合の動向、技術の進化等の外部要因に対して迅速に内部環境を適応させ、組織の競争力を維持・強化することができます。

 

以上のように、BSCを導入する組織の主な目的は、戦略と業績の明確な連携、従業員のモチベーションの向上、そして戦略の迅速な調整能力を高めることです。これにより、組織は変化する市場環境に柔軟に対応し、競争力を向上させることが期待されます。

 

 

 

まとめ

 

■部門レベルでのバランススコアカード活用
・全体レベル:主要な戦略や長期目標を明確にし、部門の方向性や焦点を組織全体の戦略と一致させる。
・中間レベル:部門戦略を具体的なタスクやプロジェクトに落とし込み、部門の戦略を実現するための具体的なアクションプランを策定する。
・個人レベル:各従業員の役割や責任が、グループや部門の目標にどのように結びついているかを明確化する。

 

■SWOT分析とクロス分析の活用
・SWOT分析:組織の内部要因である「強み」と「弱み」、外部環境に関連する「機会」と「脅威」を明らかにする手法である。
・クロス分析:市場内での自社の立ち位置や、競合との相対的な位置関係を詳しく分析することで、事業戦略をより明確にする手法である。

 

■アクションプランの策定方法
①現状分析と目標設定:現状を理解し、達成すべき目標を設定します。これにより、今後の方向性を明確にし、どのような成果を目指すかを決定する。
②責任者の指名とリソースの割り当て:タスクごとの責任者と必要なリソースを決め、タスクの円滑な進行をサポートする。
③実行スケジュールの作成:各タスクの開始・終了タイミングを設定し、計画全体の進捗を可視化する。
④進捗確認の時期の明確化:各プロジェクトのチェックポイントを設け、進捗のモニタリングを容易にし、調整やフィードバックの機会を設ける。

 

■バランススコアカードの活用例
・戦略と業績の連携:戦略の実行状況やその成果を定量的に測定・評価することで、戦略の具体的な方向性や優先順位を明確化する。
・従業員のモチベーション向上:明確な目標と評価基準を設定することで、従業員は自身の役割や責任を明確に理解し、その上で自ら業績を最大化するための努力ができる。
・戦略の柔軟な修正:変化する市場環境や競合の動向、技術の進化等の外部要因に対して迅速に内部環境を適応させ、組織の競争力を維持・強化することができる。

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