システム選定で失敗しないために~輸入管理・輸出管理システムの勘所~

2019年01月31日

 

商品売買などの取引を管理するにあたり、多くの企業では販売管理や調達管理などのシステムを活用していることと思います。今日では、海外の得意先・仕入先と取引を行っている企業も増えていますが、輸出入取引では、国内の取引とは異なる煩雑な事務処理が必要となりますので、その手続きの簡略化を目指して、システムを検討する企業様も多いようです。今回は、輸出入取引を支援する輸出管理システム、輸入管理システムを取り上げます。

 


輸出管理・輸入管理システムとは

輸出管理システムや輸入管理システムは、同じような名前であっても、搭載されている機能やカバーしている範囲には違いが生じやすい領域です。今回は、輸出における受注から出荷・売上計上まで、輸入における発注から入荷検収・仕入計上までの取引を管理しているシステムを輸出管理システム・輸入管理システムと定義して、話を進めます。また、輸入管理・輸出管理システムには、国内の取引でも必要となるような機能も搭載されていることが多いですが、この記事の中では、そのような機能は必要最小限だけ触れるようにして、輸出管理・輸入管理ならではの機能にスポットを当てていきます。

輸出管理・輸入管理システムの主な機能

まずは、輸出管理・輸入管理システムに搭載されている主要な機能を確認していきます。

 

■輸出管理
・受注管理
海外の得意先からの受注情報を登録し、その内容に基づいて、契約書(Sales Contact)や注文請書(Order Note)などの契約に必要な書類を作成します。

 

・出荷管理
受注情報に基づいて、出荷に必要なInvoice(送り状)、Packing List(梱包明細書)、Shipping Instruction(船積指図書)などの書類を出力します。

 

・輸出諸掛費用および利益管理
輸出取引に要する諸掛費用を入力します。複数の取引に係る諸掛費用については、按分計算を行って、各取引へ配賦する場合もあります。売上に対する商品原価や諸掛費用を明らかにして、取引毎や商品毎、得意先毎の利益を把握します。

 

■輸入管理
・発注管理
海外の仕入先への発注情報を登録し、その内容に基づいて、注文書(Purchase Order)などの書類を作成します。

 

・入荷管理
輸入品の入荷情報を管理します。入荷実績データだけではなく、入荷予定情報(船上在庫も含む)も管理の対象にすることがあります。

 

・輸入諸掛費用および取得価額管理
輸入取引に要する諸掛費用を入力します。輸出諸掛費用と同様に、複数の取引に係る諸掛費用については按分計算を行い、各輸入商品の取得価額を算出します。

 

・L/C管理
輸入代金の支払い方法として、L/C(Letter of Credit:信用状)が用いられることも多く、その管理をシステムで行うことがあります。開設したL/Cの情報をシステムへ入力し、そこへ決済予定の輸入取引を紐づけて登録することにより、L/Cの残高をシステム上で確認できるようにします。

 

■輸出入管理共通
・船腹管理
輸出入を行うにあたって使用する船の情報を管理します。本船名のほか、積み港、揚げ港、仕向地などの情報を管理します。

 

・為替予約管理
輸出入取引は、外貨で決裁することが大半です。その際は、為替リスクをヘッジするために、為替予約を行うことが多くあります。
為替予約の実行状況および各為替予約と各取引の紐づけを管理するために、為替予約の情報を輸出入取引と共にシステムで管理します。

 

輸出入管理をシステム化する背景としては、輸出入取引で必要となる煩雑な事務処理を簡素化する、ということが目的であることが多く、システムの機能でも、書類の発行や輸出入取引と紐づけて管理すべき情報の一元化などが求められることが一般的です。

 

輸出管理・輸入管理における特殊な要件

輸出入管理では、これまでに触れた機能以外の特殊な機能が求められることが少なくありません。それらの全てを取り上げるのは難しいので、ここでは例として、2つの機能を取り上げます。

 

■決済管理
輸出入取引は、相手が海外の企業ということもあり、国内取引よりも決済のリスクが高いです。そのリスクを回避するために様々な方法が取られますが、一つの方法として、一定の金額を前払する(デポジットする)ことがあります。その場合は、前払した金額を記録して置き、取引に応じて取り崩していく、といった管理が必要となります。前払金の管理は手作業では煩雑になるため、システム化が求められることが多い機能の一つです。ですが、前払金は取引先毎に支払うタイミングや金額等が異なることが多く、パッケージシステムの標準的な機能だけでは対応することが難しいケースが少なくありません。特殊な要件として、企業毎に作り込まれることが多い機能です。

 

■輸出時の梱包・積載管理
輸出に関する輸送費用を抑制するためには、輸送用の箱やコンテナに最適な形で商品を格納する必要があります。例えば、50個の商品を受注した場合に、梱包可能数量が40個だとすると、2箱必要になります。それでは空いたスペースが多く非効率になりますので、得意先側の事情が許すのであれば、10個分は出荷を保留し、次回のオーダーと合わせて梱包する方が効率的です。積載に関しても、手配したコンテナに目いっぱい積んで輸送した方が、費用は抑制することができます。こういった梱包や積載を自動的に判断するためには、商品のサイズや出荷条件をシステムで管理する必要がありますが、企業毎に細かな条件設定が必要になることが多く、標準で機能を持っているパッケージシステムはほとんどありません。やはり、企業毎に要件を定義して、開発することとなります。

 

以上、例を挙げましたが、いずれも人手で管理しようとすると煩雑になってしまう業務であり、かつ、企業毎に細かい条件が異なることが多い業務でもあります。こういった業務をシステムで自動化するためには、どうしても独自の開発が必要となります。

 

輸出管理・輸入管理システムの検討に向けて

最後に、輸出管理・輸入管理をシステム化するにあたり留意すべき点を挙げます。

 

①システム化した場合の運用可能性
仮にシステム化した場合に、本当に運用することができるかを考えておく必要があります。例えば、例でも挙げた為替予約ですが、仮にシステムでカバーしようとするのであれば、情報の更新を随時行うことができるか、という点も考慮しなければなりません。為替予約Aに対して取引Bを紐づけていたとして、取引Bが何らかの理由で遅延した場合には取引Cに切り替える、といったことも起こりえます。その際には、システム上の紐づけも更新しなければなりません。取引量が膨大になると、これらのメンテナンスだけでも大変な負担になる恐れがあります。システム管理が理想的だとしても、現実的に管理が難しいようであれば、システム化を再考したほうが良いです。

 

②システム化の方法(機能追加/リプレイス/専用システム追加)
輸出入管理システムを導入するとした場合、大きくは次の3パターンが考えられます。
a)既存の基幹システムに機能を追加
b)輸出入管理機能を備えたパッケージシステムへリプレイス
c)既存の基幹システムとは別に輸出入管理システムを導入してデータ連携
それぞれにメリット・デメリットがあり、かつ、費用も大きく変わります。そのため、システム化の目的やシステム投資方針等を踏まえて検討する必要があります。例えばですが、書類作成業務の効率化が目的の場合において、cの形を採用するのであれば、データ連携頻度が大切です。要件定義をした結果、連携頻度を日次よりも短くするのは難しい、となってしまうと、入力した翌日まで書類を作成できない、といった事態に陥る可能性があります。そうなってしまうと、目的を十分に満たすことができないシステムになってしまう恐れがあります。

 

投資対効果を向上するためには、システムを具体的に検討する前に、輸出管理・輸入管理システム化の目的や要件、更には基幹システム全体のあるべき姿を明確にすることが望ましいです。

 

 

まとめ

輸出管理・輸入管理システムの主な機能
・輸出管理
受注管理/出荷管理/輸出諸掛費用および利益管理 等
・輸入管理
発注管理/入荷管理/輸入諸掛費用および取得価額管理/LC管理 等
・輸出輸入管理共通
船腹管理/為替予約管理 等
※煩雑な輸出入取引事務を簡素化するための機能が多い
輸出管理・輸入管理における特殊な要件(例)
・決済管理(前払やデポジット)
・輸出時の梱包積載管理
輸出管理・輸入管理システムの検討に向けて
以下の様な点に留意すべき
・システム化した場合の運用可能性
・システム化の方法(機能追加/リプレイス/専用システム追加)
※輸出入管理システム化の目的要件、基幹システムのあるべき姿を明確にしたうえで検討すべきである

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