会計システムを補うツール~予算管理システムで管理会計を強化する~

2019年02月14日

 

企業の会計には財務会計の他、会計システムに蓄積されているデータを基にした経営の意思決定や、業績の測定・評価に活用する管理会計があります。
管理会計の方法は企業により様々ですが、中には会計システムのデータや機能だけでは不十分であるとして、予算管理システムのデータ集計機能やデータ出力機能を利用している企業も存在しています。
今回は予算管理システムでどのように管理会計を補えるのかをお伝えしたいと思います。

 


管理会計業務の課題

会計システムには、企業活動の結果として数多くのデータが仕訳として蓄積されており、その内容は営業活動による売上高や利益、営業外の費用や資産の増減など多種多様です。
管理会計ではそれらの情報を元にして、変動損益計算書やキャッシュフロー分析など、経営の指標となる資料を作成するのが一般的です。
しかし、実際に経営者が知りたいと思う情報が、会計システムに全て入っているとは限りません。
例えば、今後の売上見込みが知りたい場合は、受注残の情報が必要になりますが、まだ売上とは認識されないため、会計システムには仕訳として入力されていません。
また、売上の推移が下降していたり横ばい状態のときには、原因を探るために、売上の元になる品目・サービスの単価や社員の稼働率が知りたいとなるかもしれませんが、これらも会計のデータには含まれません。
会計システムにないデータは、販売管理やプロジェクト管理などの別システムが保持していたり、部門が独自にExcel管理をしている場合があります。
管理会計を担当する経理部や経営管理室などでは、それら会計外の情報を集め、報告資料として取りまとめることも業務の一つですが、これには多くの時間を要します。

 

必要なデータはあるのに、一ヶ所で管理できていないために貴重な労力を割くことになるのは、管理会計業務が抱える課題であると言えます。
この課題を解決するため、社内に散在するデータをひとまとめにし、人の手を煩わせずにレポート化ができる手段の一つとして、予算管理システムの利用があります。
その手段をご理解いただくために、予算管理システムの役割や構造・機能についてご紹介をしていきます。

 

予算管理システムの基本的な役割

予算管理システムは社内の予算を把握し、実績と比較することを主な目的にしているシステムです。
大まかには、次のような流れになります。

 

【予算入力】
予算を管理する経営企画部門などがシステム上で予算のフォーマットを作成し、該当する担当者へ配付します。担当者は受け取ったExcelフォーマットまたはシステムの専用画面から予算を入力し、提出します。

 

【予算集計】
担当者からシステム上に提出された予算データを集め、不正な値が登録されていないかチェックを行ったり、予算管理部門が予算の内容を確認しやすいようにレイアウトされた画面に出力をします。

 

【予実分析】
予算が確定した後、その進捗を把握するために、各種の社内システムから実績データを取り込みます。策定した予算に応じて、販売管理システムや調達・在庫管理システム、会計システムなどから必要なデータを連携し、予算データと比較をします。

 

部門の担当者からデータを集め、更に各システムからデータを連携して組み合わせ、予算と実績の対比をレポートするのが予算管理システムです。
この「各種データを取り込み、組み合わせてレポートする」機能を使うことにより、管理会計の業務をスピードアップし、効率化することが可能になります。
では次に、この機能を実現するためにどのような構造になっているのかをお伝えしていきます。

 

予算管理システムの構造

予算管理システムにも色々な製品がありますが、その構造は概ね、【マスタ】・【元帳】・【レポートフォーム】で構成されています。

 

【マスタ】
予算管理で扱うデータの管理単位です。取り込みたいデータの切り口を設定します。
例)部門、得意先、仕入先、販売品目、品目単価、地域、社員、受注額、勘定科目 等
階層構造を持てるようになっていますので、部門単位で集めたデータを事業部単位にまとめて中間計にすることなども可能です。

 

【元帳】
予算管理システムに取り込むデータの管理帳簿です。マスタで設定したデータの切り口を組み合わせ、対象のデータを保存する箱のようなイメージとなります。
例えば、地域毎に営業社員の受注実績を集めておきたい場合には、マスタで設定した地域・社員・受注額を組み合わせて元帳を作成します。

 

【レポートフォーム】
予算システムの元帳に集めたデータを加工し、出力するための帳票を設定します。
複数の元帳を指定して種類の異なるデータを横並びにしたり、会計データから販売管理システムのデータへドリルダウンできるように設定するなど、企業が必要とするアウトプットを作成します。

 

予算管理システムにはこれらの構造を土台にして、様々なデータの出し入れや多様な分析を行う機能が備わっています。
次に予算管理システムの主要な機能をご説明していきます。

 

予算管理システムの機能

予算管理システムが持つ基本的な機能は、入力・集計・出力です。

 

【入力機能】
多くの予算管理システムでは、データを入力するために三つの方法を用意しています。
①専用画面による手入力
システムの画面から直接データを入力します。入力のフォームは予め設定しておき、入力の権限を持つ社員が利用します。

 

②Excel連携
Excelから予算管理システムの元帳へ、データを連携します。
予算管理システムによって、対象となるExcel上で連携先の元帳やマスタを設定するタイプや、Excelのフォームを取り込み、予算管理システム内で連携の設定を行うタイプがあります。
いずれにせよ、予算管理システムへ取り込むためにExcelを加工する必要はないため、現場が管理しやすいExcelファイルを残したまま運用できることが利点です。

 

③データインポート
他システムから出力したCSV形式のファイルを取り込む機能です。
対象となるCSVのデータ順序を予算管理システムに登録しておくことで、取り込みを実行します。
予算管理システムのいくつかは、曜日や時間を指定して自動的に取り込みを行える機能がありますので、他システムから定期的に所定のフォルダにデータを出力するようにしておき、自動取り込みのタイミングを合わせることにより、予算管理システムでは常に最新のデータを扱えるようになります。

 

【集計】
入力されたデータは、システムが自動で集計を行います。
マスタや元帳の設定を調整しておくことで、データを任意の集計単位にをまとめることもできます。

 

【出力】
予算管理システムの構造でご紹介した「レポートフォーム」により作成した帳票の形式で、データを出力します。レポートフォームではExcelで使われるような計算式や関数を設定できるため、レポート上でデータの構成比や差額計算などを行うことが可能です。

 

予算管理システムの管理会計への応用

予算管理システムの主な目的は予実の対比ですが、それに固執する必要はありません。
予算管理システムは上記の構造と機能によって、社内で管理されているあらゆるデータを集め、加工して出力をしますので、企業が求める様々な管理会計に応用することができるようになっています。
例えば、ある小売の企業では、店舗別の売上報告資料に詳細な品目内訳や週単位の来店客数などを付加する作業で使われています。また、別の企業では営業の日報フォームを作成しており、受注の可能性がある案件から見込み額を集計し、売上予算の修正作業に活かしています。

 

予算管理システムは企業内の情報を一元的に集約し、活用できるツールであると言えますので、最初に挙げました、管理会計に必要なデータが分散していて集計に労力を要するというような課題の解決にも役立てることが可能です。
もし、現在の管理会計業務は非効率だと感じられているのであれば、検討に値するシステムであると考えます。

 

まとめ

管理会計業務の課題
☑会計システムには様々なデータが蓄積されているが、経営者が必要とする情報が必ずしも入っているとは限らない。
☑必要なデータはあるのに、一ヶ所で管理できていないために貴重な労力を割いていることが管理会計の課題である。
☑この課題の解決に予算管理システムを利用できる。

 

予算管理システムの基本的な役割
☑予算管理システムの基本的な流れは、予算入力・予算集計・予実分析である。
☑「各種データを取り込み、組み合わせてレポートする」機能が管理会計の効率化に役立つ。

 

予算管理システムの構造
☑一般的な予算管理システムの構造は「マスタ」・「元帳」・「レポートフォーム」で構成されている。

 

予算管理システムの機能
☑予算管理システムが持つ基本的な機能には、入力・集計・出力がある。

 

予算管理システムの管理会計への応用
☑予算管理システムは社内の情報を一元的に集約できる構造と機能を持っている。

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