三様監査とは~それぞれの立場の違いと連携の重要性

2019年06月13日


会社組織には「監視という観点から監査する」という役割の存在があります。
具体的には監査役監査、会計監査人監査、内部監査人による内部監査と3つあり、これを三様監査と言います。同じ監査ではありますが、それぞれが求められている役割が異なります。
そして、ガバナンス体制の構築のためにもこの三者の連携が重要となってきます。
企業不祥事が発生した際もこの三者の果たすべき役割が重要視され、ますます責任が重くなってきており昨今の上場審査上でも三者が定期的にミーティングを行うことが求められています。
内部監査部門としては役割をしっかりと知っておく必要がありますので、今回は三者のそれぞれの役割と連携について解説させていただきます。
※今回の記事は監査役会設置会社を想定しております。また、全体像をお伝えしたいため詳細な部分(法令、基準や論点等)については省略しております。ご了承ください。

 


会計監査人の監査

それでははじめに三者の役割の違いについて解説いたします。まずは会計監査人監査です。
◆会計監査人の監査
会計監査人は会社法上の機関となり、監査を実施する主体は公認会計士です。会社は監査法人や会計事務所等にお願いします。
そして、選任と解任については「監査役会」と「株主総会」が行います。
会計監査人は、会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査し事業年度ごとに「監査報告書」を作成して、株主に通知しなければなりません。

 

業務については監査しませんが、特に上場企業においては内部統制監査を行い、業務の確認もしています。
そして会計監査人は会社から監査報酬を受取り監査を行いますが、その監査報酬の中で監査をしますので、すべての会計処理を監査することはできません。
そこで、会計監査人は金額や質的な重要性の高い部分を中心に監査するという方法をとり、有効かつ効率的な監査を実施します。

 

監査役の監査

続いて監査役の監査について確認しましょう。
◆監査役の監査
監査役も会社法上の機関となり、監査役は会社の取締役の職務執行の適法性、妥当性を監査します。
つまり、取締役が判断している決定事項が法律に抵触していないか、また、その判断は妥当かを取締役の職務を見て意見を出します。
監査役になるための資格等はありませんが、取締役の職務を監査するということは知識と経験が必要です。
例えばその会社の元経理部長、他社での経営経験者、弁護士、公認会計士や中小企業診断士等が選任されていることが多いようです。

 

実際の監査は「取締役会」やその他重要な会議体に参加し、取締役の判断の適法性、妥当性を確認することになります。しかし、会議にだけ参加すれば監査の結論が導き出せるわけではなく、従業員に対してヒアリングを行ったり、棚卸しに立ち会ったり、拠点へ出向いて現場を確認したりすることで監査しています。
そして、会社によりますが、常勤が1名と非常勤が2名という構成だと、1名の常勤監査役が重要な会議体に参加したり、現場に出向いて監査をします。そして非常勤監査役に監査の結果を報告し、3名で協議して監査役会として監査の結果を年に一回会計監査人監査と同様に「監査報告書」にまとめ、株主に通知します。

 

そしてもう一つの役割として、上記に記載した通り、会計監査人の選任は株主総会となりますが、株主総会への上程は監査役会の決議によります。その決議をするためには「監査役会として会計監査人を選任するにあたって会計監査人監査が適切に行われているか」を監査する必要があります。これを「監査人監査レビュー」と言います。
これも監査役として重要な職務です。

内部監査部門の監査

最後に改めてとなりますが、内部監査部門の監査を見てみましょう。
◆内部監査部門の監査
内部監査部門は経営者の直下になることが多く、経営者が経営戦略に沿ってミッション(監査内容)を決定します。
そして内部監査の資格としてはCIA(Certified Internal Auditor 公認内部監査人)がありますが、内部監査を行う上で、資格取得は必須ではありません。
しかし、業界のことや業務のあるべき姿を知っておかなくては監査をすることができません。
内部監査部門の監査の範囲は会社の業務すべてとなり、従業員の業務活動に関わる会計監査、業務監査です。
内部監査部門の監査するポイントとしては、会計監査は「月次決算の有用性や迅速性」、業務監査は「効率性・適正性・不正行為の発見」等となります。

 

監査役と会計監査人については法令に定められた機関です。一方内部監査部門については法令による設置義務はありませんので設置は任意です。
しかしながら近年の上場審査上はガバナンス体制の強化の為、設置が必須となっています。

 

また、上場企業では内部統制評価を行うことが法令で定められており、会社組織から独立している内部監査部門が評価を実施することが多くあります。

 

三様監査の連携の重要性

上記に3つの監査の役割を記載しましたが、それぞれ会社にとって必要な監査です。
しかしながら、上記の説明からお分かりだと思いますが、その監査対象について、境界線を明確に引き難い部分があったり、監査対象の一部が重なることがありますので三者の連携が重要になってきます。
それぞれの監査計画や監査結果について定期的な協議の場を設け、意見交換をすることで監査の重複を避けることができ、それぞれの業務を有効的に行う上で重要です。
また、監査役監査では会計監査人監査が適切に実行されているかを確認する必要がありますので、意見の交換だけではなく、実際の監査に立ち会い監査を実際に見ることも必要です。
そして、重複だけでなく、自分の監査していない範囲についても情報共有されることによって自らの監査を実施するヒントになることも多くありますので、定期的な協議の場を設けましょう。
三者の定期的な協議の頻度は、四半期ごとの財務諸表監査が終わった後に実施することが多いのですが、理由としては、特に会計監査人監査の財務諸表監査が終了して監査結果が出てきているタイミングとなるためです。
しかし、必要に応じて何か大きな問題があった場合は、臨時で協議の場を設けることがあります。

 

このように三者が連携することによってそれぞれの監査の効率性、有用性が高まり、会社にとって有益な監査になります。
誰が主体となって動くのか決まりはありませんが、内部監査部門が率先して動くことをお勧めします。

 

 

三様監査上のコミュニケーション

三者の連携の重要性をお伝えしましたが、実際どのようなコミュニケーションを行うか例を挙げてみましょう。
◆監査役と内部監査人
定期的な協議について記載しましたが、社内にいる監査役、内部監査部門は日ごろからコミュニケーションが取れますので、日ごろから積極的に監査の結果等について意見交換をしたり、定期的に監査に同行しましょう。
そして、内部監査は上記の通り、従業員の業務活動に関わる監査ですので、監査業務を行う過程で経営責任者や取締役等に関する問題を発見しても、指摘することは難しい状態ですが、監査役から経営責任者や取締役等に対し指摘していただくということが可能です。逆に監査役は会社内部の事情(組織、人間関係、キーマン等)に詳しい内部監査部門に業務監査の進め方を相談すると有効かつ効率的な監査につながります。
◆内部監査人と会計監査人
社内プロセスや事業に精通した内部監査部門の知見は会計監査において有効的です。
会計監査では主に財務経理部門とのやり取りが多いですが、財務経理部門がすべての業務プロセスを理解しているというわけではないため、社内部門を横断した業務プロセスを内部監査部門からヒアリングして確認する等の連携をすることが多くあります。内部監査部門としては会計監査の状況を確認し会計監査で指摘された問題をさらに深堀するために監査項目として追加する等、内部監査のヒントとなることもあります。

 

このように、三様監査はそれぞれに役割、視点、立ち位置が異なりますが、お互いに情報を交換し、協力し合うことで、同じ個所を監査することを避けたり、お互いの強みを生かしたり、上手に立場を利用し指摘をすることで、改善につなげられます。内部監査部門としてプラスになることですので、この連携を活用することをお勧めいたします。

 

 

 

まとめ

会社組織には監視という観点から監査するという役割の存在があります。
監査役監査、会計監査人監査、内部監査人による内部監査と3つありこれを三様監査と言います、それぞれの役割が異なり、連携することで有効的、かつ効率的な監査ができます。

 

三者の役割の違い
・会計監査人の監査
会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査
・監査役の監査
会社の取締役の職務執行の適法性、妥当性を監査
・内部監査部門の監査
会社従業員の業務活動に関わる会計監査、業務監査

 

三者連携の重要性
三様監査の連携する意味
境界線を明確に引き難い部分があったり、監査対象の一部が重なることがある為、有効かつ効率的な監査を行うため連携が重要です。
三様監査上のコミュニケーションの方法
内部監査部門と監査役は監査計画や監査結果について共有し、時にはお互いの監査に立ち会うことも必要です。
三者で四半期に一度は協議の場を設け、コミュニケーションをとることが有益な監査につながります。

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