内部監査部門が抱える課題と外部リソースの活用

2019年06月20日

 

弊社では定期的に内部監査部門を対象にした社内セミナーを行っていますが、その中で実施しているアンケートでは、内部監査室の抱える課題や、アウトソーシングの活用事例が知りたいといったお声をよくいただきます。
今回はそのようなアンケート等を基に、内部監査室が抱える課題と、外部リソースの活用事例について記載したいと思います。

 


内部監査室が抱える課題

内部監査室が抱える課題には、どのようなものがあるのでしょうか。
最近の弊社セミナーで実施しているアンケートをみると、以下の課題やお悩みを抱えている企業が多いようです。
■セミナーアンケートによる内部監査室の課題・お悩み
異動・退職に伴う評価スタッフの補充
・J-SOX構築・評価の進め方がわからない
海外子会社のJ-SOX構築・評価が必要となり困っている
・IT統制(全般統制)を任せられる人がいない
内部監査室の業務は、少人数で多くの業務を担当するケースが多く、1人当たりの作業負荷が高いといった点と、評価作業等の単純作業の繰り返しに面白みが感じられないといった点から、退職者が多いということを伺います。
また、内部統制や内部監査について学習をしようと書籍を読んだり、セミナーに参加しても、概要やあるべき論しか学ぶことができず、具体的にどう進めてよいか進め方がわからないという声もよく伺いますし、そもそも学べる機会が少ないということもあります。より専門的な知識が求められるIT統制については任せられる人がいない、といったお悩みにも繋がっています。

 

多くの企業で内部監査室スタッフの定着がみられず、知識面や監査スキルが足りないといった課題を抱えているようです。

 

少人数での対応が求められる内部監査室

スタッフの定着がしにくい内部監査室ですが、経営側の視点に立つと、なるべくコストをかけず、最小限の人員でまわしたいという考えを持つ企業が多くあります。
現場の意見としては、「人を増やしてほしい」、「外部を活用したい」といった想いがありながらも、内部監査室は利益を生む部署ではないため、経営側では最低限でのコストでまわしたいという判断になりがちです。
コストをかけられない中で、人材の採用や、外部の活用を検討するきっかけとなるのが、
・「担当者が退職してしまうので内部統制、内部監査を対応する人がいなくなってしまう。」
・「IPOに伴いJ-SOXの構築、評価が義務化される。」
・「子会社の買収や、海外拠点の売上げの増加で対象範囲が大きく増えた。」
・「海外拠点のJ-SOX評価が必要になったが、どのように進めてよいかわからない。」
等の要因です。
「必要性に迫られるまでは、ぎりぎりの少人数体制で内部統制の評価、監査をこなしている。」という現状には、コストをかけずに進めたいという企業の意思が表れています。

 

コストをかけずに運用したいという経営側の考えで進めている内部監査室ですが、いざ、どうしても人材が必要という判断になった時には募集をかけても良い人材が集まらず、お困りになっている企業も少なくありません。
内部統制という専門的なスキルや経験を持った人材は希少ですし、採用にかかる費用も安くはないのではないでしょうか。

 

増加する内部監査室の業務

少人数で内部監査をまわしている現状がある中でも、内部監査室に期待される業務は増えています。
例えば、海外に子会社をお持ちの企業では、中国等海外子会社の売り上げの割合が高まり、J-SOX評価の対象範囲に含めなければならなくなったといった話をよく耳にします。飽和状態にある日本市場での売り上げ比率に対し、海外での売上比率が高くなってくるという現象は、多くの企業でみられます。
海外での対応は、その国の商習慣等も加味して進めなければいけないため、国内のJ-SOX評価、内部監査ができていても、どのように進めてよいかわからないといったお悩みを聞きます。
また、言語の問題もあります。英語はもちろん、現地の言葉でのコミュニケーションを求められ、英語以外の言語で対応する必要が出てくることもあります。
その他にも、買収により評価をすべき子会社が増えた、先に記載したIPOに伴う内部統制の構築や内部監査等、内部監査室に求められる業務は多岐にわたります。
内部監査業務を兼務で対応されているという話も多く、総務業務を行いながら、法務業務を行いながら等、内部監査室業務以外の業務も並行して対応されている現実もあります。

 

コストをかけず、少人数での対応が求められる内部監査室ですが、海外の評価の対応、IPOに伴う内部統制の構築、内部監査、他部署との兼務等、求められる業務の内容は決して少なくはなく、これからも増加していく傾向にあります。

内部監査室の外部リソース活用の現状と活用事例

それでは、業務は増加していくにもかかわらず、なるべくコストをかけず、最小限の人員でまわしたいという考えを持つ企業は、どのような対策を検討・採用しているのでしょうか?
1つの可能性として、外部リソースの活用という手段があります。つまり、内部監査室の作業を外部へ委託するのです。外部委託の類型としては、下記のものが考えられます。
・全部を外部へ委託するケース
まず、最終判断や、スケジュール管理等の機能だけは自社に残し、それ以外の全部を外部へ依頼するというケースがあります。
例えば、ある企業では、内部統制報告制度施行時から現在まで外部リソースを継続して活用しており、全統制における整備状況評価・運用状況評価・ロールフォワード、評価範囲の選定、3点セットの更新等、全ての評価作業を行っている企業があります。その企業では、専門的な知識や、経験を持った人材1人を採用するよりコストがかからなかったといった点も、継続して外部を活用する要因の1つになっているようです。
また、ある企業では評価作業を進めながら、評価項目の見直しやコントロールの削減等、内部統制評価作業の効率化も同時に進めています。評価作業の効率化に関する提案や、監査法人との折衝まで外部のリソースを活用し、効率化を進めることで、よりコストの削減や、本来注力すべき監査業務等に注力ができるようになっています。
・一部を外部へ委託するケース
全部を外部へ依頼するまではいきませんが、部分的に外部リソースを活用したいというお考えも多くあります。
例えば、上記の課題にもあった、専門性の高いIT全般統制に限定して、評価作業を外部リソースに依頼しているという企業や、リスクの高いであろう海外拠点の監査のみ依頼している企業、経理部門のみの業務監査を外部リソースに頼るといったケースがあります。
・期間を限定して委託するケース
継続して外部を利用していく体制をとっているわけではありませんが、例えば、繁忙期だけ外部リソースを活用される企業や、担当者が産休の間だけ外部リソースを活用される企業等、期間を限定して外部リソースを活用するといった対応の仕方をしている企業もあります。

 

上記の通り、作業の全部を外部へ委託するケースや、評価作業の効率化も一緒に進めているケース、「業務負荷の高い部分」、「専門的な部分」のみ等の一部を外部へ委託するケース期間を限定して委託するケース等、企業の事情により活用の仕方は様々です。
内部監査室の人員不足に悩んでいる企業であれば、一度、外部リソースの活用=外部委託を前向きに検討してみるのも良いのではないでしょうか。

 

 

まとめ

■内部監査室が抱える課題
多くの企業で内部監査室スタッフの定着がみられず、知識面や監査スキルが足りないといった課題を抱えている。
■少人数での対応が求められる内部監査室
内部監査室は利益を生む部署ではないため、経営側では最低限でのコストでまわしたいという判断になりがち。
■増加する内部監査室の業務
コストをかけず、少人数での対応が求められる内部監査室ではあるが、海外の評価の対応、IPOに伴う評価作業、内部監査、他部署との兼務等求められる業務の内容は決して少なくはなく、これからも増加していく傾向にある。
■内部監査室の外部リソース活用の現状と活用事例
企業の事情により活用の仕方は様々で、作業の全部を外部へ委託するケース、「業務負荷の高い部分」、「専門的な部分」のみ等の一部を外部へ委託するケース期間を限定して委託するケースがあり、また、評価作業の効率化も一緒に進めている企業もある。

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