ずさんなマスタ管理が招くムダな業務~適切なマスタ管理による業務効率化~

2019年07月11日

 

業務効率化というと、昨今ではRPAやAIが注目を浴びていますが、新しいものに注目する前に、ぜひ見直していただきたいものがあります。
それはみなさんの利用しているシステムのマスタです。
システムに携わったことのある方であれば、マスタの重要性をよくご存じかと思いますが、そうでない方は、マスタを管理すると言ってもピンと来ないかもしれません。
マスタの登録は難しい作業ではありませんが、ずさんなマスタ管理をするとムダな業務が発生します。
あの時、ああしておいたらよかった・・・と後悔しないためにも、一度マスタを管理するということに注目してみてください。

 


不適切なマスタ管理とは?

適切にマスタを管理するために、まず、「不適切なマスタ管理」がどのようなものか考えてみます。
不適切なマスタ管理とは?というと難しく感じるかもしれませんが、要はシステムの利用者が、データの入力や参照を行う際に困ってしまうような登録、更新をしないようにしましょうということです。
マスタ管理の経験が無い方でも、データの入力時に必要なデータが見つからず困ったことや、同じ名称でコード違いのデータが存在し、どれを利用するべきか迷った経験がある方は多いかと思います。
これらの困りごとは、たいてい「ずさんなマスタ管理」によって、以下のような原因から発生しています。

 

<原因>
①コード、名称の採番・命名ルールが定められていない
②対象データの有効期間が管理されていない
③予備カラムや備考欄に不要なデータが登録されている
④レコードの登録単位が定められていない
⑤登録データの確認・棚卸がされていない

 

ずさんなマスタ管理が招くムダな業務

これから紹介するのは、債権債務管理システムの“取引先マスタ”にまつわる「ずさんな管理」の事例です。
この会社では、債権債務管理システムの入力処理にかかる工数が、取引件数に対し多すぎるため、処理工数を削減したいという課題がありました。
担当者の業務内容を確認してみると、3つのムダな業務が発生していることがわかりました。

 

債権債務管理システムの「取引先マスタ」によって発生した、3つのムダな業務
①あるはずの取引先コードが見つからず、やむを得ず新規で取引先を追加した
②誤った取引先コードを使って計上してしまったため、正しい取引先での再計上が必要になった
③重複した取引先が複数あるため、正しい取引先コードを確認する必要があった

 

Aさんは、債権債務取引をシステムに入力する仕事をしています。取引の件数はそれほど多くありませんが、Aさんは他の業務も担当しているため、派遣社員のBさん、CさんがAさんの代わりに債権債務取引の入力を行うことがあります。

 

ある日、Aさんが取引内容を入力しようとしたところ、既存の取引先である「株式会社AAA」が検索にヒットしません。債権債務取引を入力する際には、入力画面にて「取引先」を選択するのですが、取引先名称が異なる場合や、該当する取引先の登録がない場合には、検索結果に表示されないのです。
①そこでAさんは、やむを得ず、新規で取引先を作成し取引を計上しました。

 

後日、Bさんに確認すると、「株式会社AAA」は「(株)AAA」という取引先名称でマスタに登録されていたことが分かりました。ぱっと見ではわかりづらいですが、会社の法人格の表記と、アルファベットの全角/半角が違って登録されています。
原因が分かったAさんは、②計上した取引を取消し、再度正しいコードで仕訳を計上しました。

 

またある日、今度はCさんが「株式会社AAA」との取引を計上しようとしたところ、取引先が2件検索でヒットしました。マスタ上は会社名称の法人格が違うだけで、どちらも同じように登録されています。
③どちらを使って取引を計上するべきか、Cさんは過去のデータを調べることにしました。

 

 

毎回このようなことしていては、担当者の作業工数が減るはずがありません。
上記のような、重複レコードで困っているというケースはよくあります。小さなことをそのままに、「ずさんな管理」をしていると、大きな問題になってしまうのです。

 

適切なマスタ管理~ルール・登録手順の作成~

上記の事例のようにならないための、適切なマスタ管理のポイントは大きく分けて2つです。

 

✅ポイント1:マスタ設定のルールを決める
マスタを設定する際には、コードの採番や名称の命名規則を定めておきます。システムによってコードや名称には文字数の上限がありますので、レコードを設定する前に、上限を考慮したルールを決めておくことが必要です。文字数上限を忘れていて、例外パターンで登録した、なんてことが無いようにご注意ください。
また、登録時には「登録時の単位」について予め定めておくことも重要です。マスタの構成にもよりますが、取引先の「会社」を最小単位とするのか、その会社の支店や部署まで含めて1取引先とするかによって、登録社数が大きく異なります。メンテナンス性に影響が出ますので、システムベンダーに確認すると良いと思います。

 

ポイント2:マスタ登録・更新時の手順を統一する
マスタ設定のルールがまとめられたら、次はマスタ登録・更新時の手順を統一します。
せっかくルールを定めても、担当者がそれぞれに好き勝手な手順で作業を行うと、人によって作業内容や登録結果が変わってくることがあります。はじめのうちは担当者が把握しているから問題ないと見逃してしまったり、そもそも問題にもされなかったりすることも多いのですが、放置しておくと、後々これが厄介なことになります。
手順を統一することで、ルールに沿った更新が守られ、作業が属人化することを防ぐことができます。

 

 

適切なマスタ管理~マスタの棚卸~

マスタの設定ルール、登録・更新手順の統一ができたら、次は運用面での管理に移ります。
マスタへ登録、更新を行ったデータは、定期的な棚卸が必要です。使わなくなったデータや誤って登録したデータをそのままにしてしまうと、誤って利用してしまうケースがあるからです。
不正利用を防ぐためにも、有効なデータと無効なデータを識別し、利用者にとって使いやすい状況を維持してください。
マスタ棚卸のポイントは、以下の2点です。

 

✅ポイント1:有効なレコードと無効なレコードを区別する
システムや対象のマスタによって、レコードの利用開始日、利用終了日が設定されているケース、有効/無効フラグが設定されているケース、どちらも存在しないケース等があります。マスタの構成に合わせ、有効なレコードと無効になったレコードをきちんと区別し、整理してください。利用開始日、利用終了日が設定できるケースでは、事前に無効化の処理ができることもあります。
フラグも日付も持たない場合には、レコードの物理削除、または名称に【廃止】等と付与して論理削除を行うケースもあります。物理削除することで、トランザクションデータに影響があるような場合には、論理削除での対応を検討してください。

 

✅ポイント2:登録データの整合性を確認する
棚卸を行うタイミングで、あらかじめ決めたルールにそぐわないレコードが無いかチェックを行います。
コードと名称しか持たないようなマスタであれば問題ありませんが、備考欄や予備項目、予備フラグといったカラムがある場合には特に注意が必要です。
ルールに無い更新があった場合、そのカラムがどのように使われているのか確認が必要となります。
利用項目を増やす必要がある場合には、ルール自体を更新するようにしてください。

 

適切なマスタ管理によるメリット

マスタ設定のルールを決め、正しい手順で更新し定期的に棚卸を行えば、マスタは正しい状態が保たれます。必要なデータが整理されたマスタであれば、入力者は迷わず、また誤ったデータを登録し修正することも減っていきます。
また、適切なマスタ管理は、入力時だけでなく、データの参照時にもメリットがあります。コードや名称に規則性があれば、データの抽出や集計時に加工する手間が省け、手作業の発生を抑えることができるのです。

 

また、規則正しいマスタは、業務の自動化、効率化にも役立ちます。
単純なデータ登録や帳票の出力作業は、業務効率化・自動化の対象となることが多いのですが、イレギュラーな処理が多いと、自動化のシナリオが組みづらくなってしまうのです。
RPA等を利用した業務の効率化、自動化を考えているのであれば、マスタ管理の見直しは大きなメリットとなるでしょう。
マスタの登録、更新に関わる機会がありましたら、ぜひ一度マスタ管理について見直しを行うことをお勧めします。

 

 

まとめ

・不適切なマスタ管理とは?
システム利用者が入力、参照時に不都合を感じるような状態にマスタがなっていること。
・ずさんなマスタ管理が招くムダな業務
取引先マスタのずさんな管理が招いたムダな業務には以下のようなものがある。
①あるはずの取引先コードが見つからず、やむを得ず新規で取引先を追加した
②誤った取引先コードを使って計上してしまったため、正しい取引先での再計上が必要になった
③重複した取引先が複数あるため、正しい取引先コードを確認する必要があった
・適切なマスタ管理~ルール・登録手順の作成~
☑ ポイント1:マスタ設定のルールを決める
☑ ポイント2:マスタ登録・更新時の手順を統一する
・適切なマスタ管理~マスタの棚卸~
☑ ポイント1:有効なレコードと無効なレコードを区別する
☑ ポイント2:登録データの整合性を確認する
・適切なマスタ管理によるメリット
適切なマスタ管理を行うことで、データ入力や参照時だけでなく、業務効率化や自動化にもメリットがある。

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