ITツールを使った業務改善の進め方~やってはいけない業務の棚卸し~

2020年04月23日

 

現在、多くの企業が業務改善(または業務改革)を進めていますが、業務改善を成功させるにはITツールの活用が必要不可欠といっても過言ではありません。しかし、一世を風靡したRPAなど、業務改善のソリューションとして、利用する『ITツール』が既に決定している場合、「なかなかうまく進まない」、「思ったほど効果がでない」など、意外と苦戦している企業が多く見受けられます。
業務改善は、一般的に業務の棚卸しからスタートしますが、特定のITツールの活用を前提とした場合、通常の進め方では時間がかかり過ぎてしまうというデメリットがあります。今回は、業務改善のソリューションとして『ITツール』の利用が決定している場面で、一般的な業務改善の進め方の問題点と効率的・効果的な進め方をご紹介します。

 


一般的な業務改善の進め方

まず初めに、一般的な業務改善の進め方について説明します。業務改善は、業務の可視化から始め、7つのステップで実施します。

 

ステップ1:業務の可視化
アンケートやヒアリングなどにより、業務の棚卸しを行います。棚卸しの結果は一覧表にまとめ、対象とする業務の全体像を把握します。
※各業務の粒度が均一になるように調整します。
ステップ2:問題を抱えている業務の明確化
ステップ1で一覧化した業務に対して、作業時間や実施頻度、実施時期等の追加情報を入手します。入手した情報を基に「問題を抱えている業務」(例えば作業時間が長い業務)を明確にします。
ステップ3:問題の要因分析
ステップ2で抽出した「問題を抱えている業務」を分析し、問題の要因を追求します。例えば、作業時間が長い業務であっても、処理する伝票が単純に多く時間がかかる場合と、提出される伝票の間違いを訂正するのに時間がかかる場合とで、取るべき対策が異なりますので、真の要因を明確にする必要があります。
ステップ4:対策の検討・選定
問題の要因に対する対策案(ソリューション)を洗い出し、費用対効果の高い対策を選定します。対策には、RPAやAI-OCR、チャットボットなどといったITツール活用のほか、マニュアルを作成したり、担当者に対する教育など、コストがあまりかからないものもあります。
ステップ5:改善計画の策定
改善策を完遂するため、誰がいつ何をするのか計画を立てます。特に並行して改善を進める場合や、規模の大きい改善策を実行する場合は、綿密な計画を立てないといつまで経っても終わりません。
ステップ6:改善策の実行
改善計画に従い、改善策を実行していきます。定例会議などを設け、定期的に進捗を確認すると比較的スムーズに進みます。
ステップ7:運用の定着化
改善後の業務を定期的に確認し、定着化を図ります。改善後のフォローを怠ると、改善前の業務に戻ってしまうこともあります。

 

抱えている問題の要因は、業務によって異なりますので、ステップ2~3で明確にし、その要因に適したソリューションをステップ4で選択します。このステップ1~4までが業務改善の肝となります。なぜなら、問題の所在や原因が明確でないと、適切な(効果的な)対策を決定することができないからです。反対に、ステップ1~4を杜撰に進めてしまうと、効果は全く出ませんので、注意が必要です。

 

ITツールをソリューションとして限定した場合の問題点

RPAやAI-OCR、チャットボットなどといった『ITツール』を業務改善のソリューションとして決定している場合、通常の業務改善の進め方では多くのムダが発生してしまいます。先ほどご紹介した業務改善の進め方で、肝となるステップ1から4をもう一度振り返ってみます。

 

ステップ1:業務の可視化
ステップ2:問題を抱えている業務の明確化
ステップ3:問題の要因分析
ステップ4:対策の検討・選定

 

通常の業務改善の進め方であれば、ソリューション(対策)はステップ4で決まります。しかし、RPAの導入などでは、ソリューションだけが先に決まってしまっています。このように前提条件が異なっているにも関わらず、ステップ1の「業務の可視化」(=業務の棚卸し)から始めてしまう企業が多いのが現状です。

 

ソリューションが既に決まっている場合、通常の業務改善のように「業務の可視化」を実施してもあまり意味がありません。なぜなら、ソリューションに適合しない業務も一緒に可視化され、一覧表に含まれてしまうからです。そうなると、どれがソリューションに適した業務なのか、業務を選定するプロセス(ステップ2~3)を追加しなければなりません。これでは、膨大な時間がかかってしまいます。

 

それでは反対に、特定のITツールに適した業務だけを棚卸ししたらどうなるでしょうか?ステップ2~4は不要になりますので、圧倒的に効率的に進めることが可能になります。このように、特定のITツールがソリューションとして決定しているのであれば、「業務の棚卸し」は実施してはならないのです。

 

ITツールを使った業務改善の進め方

RPAやAI-OCRなど、特定のITツールがソリューションとして決定している場合、そのソリューションに適合した業務や作業だけを抽出できれば、業務改善を効率的に進めることができます。ITツールに適合した業務を見つけるには、『ITツールの特性』を理解する必要があります。では、RPAを例に特性と適合する業務の例を見てみましょう。

 

◆RPAの特性
PC作業(キーボードやマウスの作業)を自動化することができる。
様々なソフトウェア・アプリケーションを横断して実行することができる。
◆RPAの適合業務例
・Excelファイルからシステムへのデータ登録
・システムで検索し、該当するデータを抽出
・報告書などのExcelファイル作成(データ集計・加工を含む)
・システムからシステムへのデータ連携
・複数システム間のデータチェック
・メールの送受信

 

このように、RPAの特性や業務適合例を見てみますと、棚卸しすべき対象は、『業務』ではなく、『PC作業』であることが分かります。次に、AI-OCRを例に見てみます。

 

◆AI-OCRの特性
画像データの文章部分を文字データに変換することができる。
・AI技術により、手書き文字を認識することができる。
識字率(読取りの正確性)は90~99%である。
◆AI-OCRの適合業務例
・紙媒体の注文書を文字データに変換し、システムに取り込む。
・PDFの請求書を文字データに変換し、システムに取り込む。

 

上記のように、AI-OCRは『画像データ』を『文字データ』に変換せるツールです。したがって、AI-OCRをソリューションとするのであれば、棚卸しすべき対象は『紙媒体・PDFの情報をシステムに入力する作業』となります。また、識字率が100%でないということは、必ず人のチェックが必要になります。

 

このように、ITツールの特性(メリット・デメリット)や適合業務例を把握することにより、棚卸しすべき対象を明確にすることが、成功の秘訣となるのです。

 

 

〈設例〉RPAをソリューションとした場合の業務改善の進め方

業務改善のソリューションとしてRPAが決定している場合の進め方をご紹介します。RPAは、業務そのものを自動化するのではなく、あくまでも『PC作業』を自動化するツールです。したがって、『業務の棚卸し』を実施するのではなく、『PC作業』の棚卸しを行わなければなりません。こちらのポイントを踏まえ、業務改善の進め方を見ていきましょう。

 

ステップ1:PC作業の可視化
業務ではなく、より細かい単位の『作業』を可視化します。全ての作業の可視化を進めては時間がかかり過ぎてしまいますので、対象を『PC作業』に限定します。更に絞込みを行う場合は、「業務や組織の視点」と「PC作業の視点」を組み合わせると効果的です。
 

 

ステップ2:費用対効果を踏まえた対象作業の選定
ステップ1で既にRPAに適した業務(=PC業務)が抽出されていますので、あとは費用対効果を考えて自動化する作業を選ぶだけです。基本的には、作業時間が長いものを抽出すると良いです。

 

ステップ2の後は、計画の策定、RPAの構築、運用と進めていくだけですので、プロセスが圧倒的に少なくて済むことが分かると思います。このように、ITツールを活用した業務改善を進める場合は、「業務の棚卸し」をするのではなく、ツールにあった作業の棚卸しをしないと、効率的に進めることはできないのです。

 

 

まとめ

■一般的な業務改善の進め方
一般的な業務改善は、①業務の棚卸しを実施し、②問題を抱える業務の抽出、③問題の要因分析、④対策の検討・選定、⑤改善計画の策定、⑥改善策の実行、⑦運用の定着化の7つのステップで進める。
■ITツールをソリューションとして限定した場合の問題点
特定のITツールが業務改善のソリューションとして決定している場合、通常の業務改善のように業務の棚卸しを行うと、ソリューションに適さない業務も可視化され、業務の選定など無駄なプロセスが増えてしまう。
■ITツールを使った業務改善の進め方
ITツールのメリットやデメリットといった特性、適合業務例を把握することにより、ツールに適した作業が定かになるだけでなく、棚卸しすべき対象も明確になる。
■〈設例〉RPAをソリューションとした場合の業務改善の進め方
RPAは「業務」ではなく「PC作業」を自動化するツールであるため、『PC作業の棚卸し』を実施する。また、比較的作業時間の長い作業を選定することで、高い効果を享受することができる。

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