AI時代に求められる経理・情報システム部門のスキルセット

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企業活動におけるITの重要性は年々高まっており、業務効率化だけでなく、事業や業務そのものを変革するための手段として活用される場面も増えています。企業のDX推進やAI活用が進む中、情報システム部門に求められる役割は、従来のシステム運用・保守だけではなく、業務改善や変革を企画・推進する領域へと広がっています。一方で、こうした役割を担える人材を外部採用だけで継続的に確保することは容易ではなく、必要なスキルを持つ人材の不足がDX推進の妨げとなるケースもあります。そのため、既存社員が新たな役割に必要な知識やスキルを身につけ、変化する業務や技術に対応できるようにすることが重要です。今回は、DX・AI時代にIT人材へ求められる役割とスキルの変化を整理し、実務につなげるリスキリングの進め方と、企業における具体的な取り組み例について解説します。

DX・AI時代に広がるIT人材の役割

DXの進展や生成AIをはじめとするデジタル技術の普及により、企業におけるITの活用領域は大きく広がっています。これまでITは、既存業務の効率化やシステムの安定稼働を支える基盤として活用されることが中心でした。一方現在では、業務プロセスそのものを見直したり、新たなサービスや働き方を生み出したりするなど、企業変革を実現する手段としての役割が一層高まっています。さらに生成AIの登場により、情報収集や文書作成、分析、問い合わせ対応など、これまで人が中心となって行っていた業務にもデジタル技術の活用が広がっています。

 

こうしたIT環境の変化に伴い、情報システム部門をはじめとするIT人材に求められる役割も変化しています。従来は、システムの運用・保守、障害対応、ユーザーサポートなど、既存IT環境を安定的に維持する業務が主要な役割でした。一方、今後はそれらに加えて、経営や現場の課題を把握し、どの業務にITやAIを活用するのかを検討し、企画から導入、定着、効果検証までを推進することが求められます。例えば、定型業務の自動化や生成AIを活用した社内問い合わせ対応、データ活用による意思決定の高度化など、ITを起点に業務の進め方を変えていく視点が必要です。

 

また、IT施策を個別に導入するだけでなく、全社のシステムやデータ、セキュリティ、投資優先順位などを横断的に捉え、経営層や業務部門と調整しながら全体最適を図ることも重要になります。DX・AI時代のIT人材には、従来の運用・保守を担う役割に加え、経営や業務の課題を捉え、ITを活用した変革を企画・推進する役割が求められています。

 

役割の変化によって求められる新たなスキル

前述のとおり、DXの進展や生成AIの普及によって、IT人材の役割は従来の運用・保守中心から、業務課題を捉え、ITを活用した変革を企画・推進する方向へ広がっています。こうした役割の変化に伴い、IT人材に求められるスキルも変化しています。これからのIT人材には、システムやネットワーク、AIなどに関する技術知識に加え、主に次のようなスキルが必要です。

 

業務課題を捉える力
経営や業務部門が抱える課題を理解し、どの業務を、どのように変えるのかを整理する力です。現場の業務プロセスや課題を把握し、IT活用の対象や優先順位を見極めることが求められます。
IT・AIの活用方法を設計する力
業務課題に対して、どのITやAIを、どのような形で活用するかを具体化する力です。生成AIを活用する場合には、期待する効果だけでなく、誤回答や情報漏えいなどのリスク、利用するデータ、既存システムとの連携、権限管理なども踏まえて、活用方法や運用ルールを設計する必要があります。
IT施策を実行・定着させる力
設計したIT施策を実行に移し、業務部門や経営層と連携しながら導入から定着まで進める力です。関係者との合意形成に加え、導入後の利用状況や効果を確認し、必要に応じて運用やルールを見直すことも重要です。

 

一方で、DXやAI活用を部門ごとに個別に進めると、システムやデータの分断、セキュリティや権限管理の不統一につながる可能性があります。そのため、全社のIT環境を横断的に把握する情報システム部門が、業務部門と連携しながら全体最適の視点で進めることが重要です。

 

これからのIT人材には、技術知識だけでなく、業務課題を捉え、IT・AIの活用方法を設計し、施策を実行・定着させる一連の力が求められます。さらに、技術や業務環境の変化に応じて、必要なスキルを継続的に見直していくことも重要です。

 

実務につなげるリスキリングの進め方

DX・AI時代に求められるIT人材を育成するには、知識を学ぶだけでなく、実務で活用しながらスキルへ高めることが重要です。業務や役割の変化に対応するため、新たな知識やスキルを身につける取り組みを「リスキリング」といいます。実務につなげるには、次の3つのステップで進めるのが有効です。

 

STEP1:今後担う役割と必要なスキルを整理する
まず、IT戦略やDX計画、業務改善テーマをもとに、情報システム部門に今後どのような役割を担ってほしいのかを整理します。例えば、AI活用を企画する担当者であれば、業務課題の整理、活用方法の検討、データ・セキュリティリスクの判断、業務部門との調整など、担う業務を具体化します。その上で、現在のスキルとの差分を確認し、習得すべき内容を明確にします。役割やスキルの整理には、経済産業省・IPAの「デジタルスキル標準(DSS)」も参考になります。

 

STEP2:必要な知識を段階的に学ぶ
STEP1で明確にした内容をもとに、必要な知識を基礎から段階的に学びます。例えば、AI活用を担う人材であれば、AIの基本的な仕組みや活用方法に加え、情報セキュリティ、データ管理、業務分析などを学習します。外部研修やeラーニング、社内勉強会などを組み合わせ、実務に必要な基礎知識を身につけます。

 

STEP3:実務で活用し、スキルを高める
基礎知識を身につけた後は、実際の業務で活用します。例えば、生成AIによる社内問い合わせ対応のPoCや、システム導入における業務ヒアリング、要件整理、テストなどを担当します。上司や経験者のOJTやレビューを受けながら経験を積み、成果や課題を振り返ることで、知識を実務で使えるスキルへ高めます。

 

このように、役割や必要スキルを明確にし、学習と実務を組み合わせることが重要です。研修だけで終わらせず、実務経験や振り返りまで含めることで、実践的な人材育成につなげることができます。

 

事例から見るリスキリングの実践

ここまで、IT人材に求められる役割やスキルと、それらを身につけるためのリスキリングの進め方について整理してきました。ここでは、ある大手製造業の事例をもとに、具体的な人材育成の進め方を見ていきます。

 

必要な役割・スキルの明確化
この企業では、まず全人材を複数のカテゴリー・職種に整理し、それぞれの職種について担う役割を明確にしました。その上で、初級・中級・上級といったレベルごとに必要なスキルを設定しています。さらに、前述の「デジタルスキル標準(DSS)」と自社で定めた職種・スキルを照合し、全職種に共通して必要なスキルと、職種ごとに求められる専門スキルを整理しました。自社の業務や役割を起点にしつつ、外部の標準も活用することで、「誰に、どのスキルを、どのレベルまで身につけてもらうのか」を具体化しました。

 

学習と実務を組み合わせた育成
学習については、必要なスキルに応じて基礎教育を設け、現在の業務と並行して受講できる仕組みを整えました。ソフトウェア人材の場合は、入門教育と基礎教育を受講した後、実際の開発組織へ異動し、先輩社員からOJTを受けながら社内向けツールの開発に取り組みました。座学で知識を得るだけでなく、実際の業務課題を題材に、要件整理や開発、検証などを経験することで、学んだ内容を実践的なスキルへと高めています。

 

事例から見えるポイント
この事例のポイントは、研修を単独で実施するのではなく、「役割と必要スキルの整理→知識の学習→実務での活用」を一連の育成プロセスとして設計したことです。つまり、将来必要となる役割から逆算して、学ぶ内容と実践する機会を具体化することが、リスキリングを実務につなげる上で重要となります。

 

このように、DX・AI時代には、変化する役割に合わせて人材育成を見直し、実務で活躍できるIT人材を育てることが重要です。

 

まとめ

DXの推進やAIの進展により、IT人材に求められる役割やスキルは変化しています。今後は、必要なスキルを明確にし、学習と実務を組み合わせた人材育成が重要です。

 

■DX・AI時代に広がるIT人材の役割
・運用・保守に加え、業務課題を捉え、ITを活用した変革を企画・推進する役割が求められる。
・情報システム部門には、経営・業務部門と連携し、全社的なDX・AI活用を推進する役割が求められる。

 

■役割の変化によって求められる新たなスキル
・技術知識に加え、業務課題の把握、IT・AI活用の設計、施策を実行・定着させる力が必要となる。
・個別最適を避け、全体最適の視点から業務部門と連携して施策を進めることが重要となる。

 

■実務につなげるリスキリングの進め方
・DX戦略や業務改革テーマをもとに、必要な役割・スキルを整理し、現状とのギャップを明確にする。
・必要な知識を学び、実務での活用と振り返りを通じてスキルを高めていく。

 

■事例から見るリスキリングの実践
・職種やレベルごとに必要な役割・スキルを明確にし、学習と実務を組み合わせて育成する。
・研修だけで終わらせず、学んだ知識を実務で活用できる育成の仕組みを整えることが重要となる。

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